《スキルゲ》滝川晴人

僕の名前は王越賢志おうごしけんじ。名前は々しいが、どこにでもいる平凡な高校生だ。

そんな僕の新しい1日は、最悪の気分で始まったのだった。

朝、自室で目を覚ますと酷い気だるさに襲われた。昨夜見た悪夢が原因なのは言うまでもない。

中が汗まみれになっていて気持ちがわるい。

目覚まし時計を確認すると普段よりも1時間ほど早く起きてしまった。気持ちわるい汗を流すためにを起こして、浴室に向かう。向かう途中、ダイニングキッチンに目をやる。 まだ、母は夜勤で朝は帰ってきてないみたいだ。簡単な料理だけ用意されている。

父も、泊まり込みの仕事で帰ってないようだ。昨日の夕飯が殘っている。また仕事に沒頭して、家に連絡もしてなかったのだろう。

案外、ハードボイルドな家庭じゃないか。そう思うと笑ってしまった。

ついでに用意されていた朝食を見ると、パンとサラダに味噌の謎の組み合わせだ。我が家では「喫茶店だってカレーに味噌つけるからいいじゃない」と言う母の謎理論で妙な組み合わせの食事がデフォルトになりつつある。

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浴室にるとシャワーで汗を流す。熱めの溫度に設定されたお湯を浴び、寢ぼけた頭を目覚めさせる。

たしか、熱めのシャワーを首の後ろに浴びると背がびると本で読んだことがある。

効き目があるのかは半信半疑、でも男子は長に憧れるものだ。ついつい、シャワーを浴びるたびに試している。

そう言えば、何かに逃げる夢って夢占いのテンプレート的なものじゃないかなぁ。調べてみると面白いかもしれないなぁ。

浴室から出て、用意していた高校の制服に袖を通し、片手でスマホを作する。

『逃げる夢』

『ストレスなど実生活で逃げたいことがありませんか?神的に追い詰められて逃げたいという気持ちが夢に反映されています』

あぁ、逃げる夢だから逃げたいと思ってると。我ながら単純だな。

『もしも、その夢が追いつかれた夢なら、その不安と向かい合う事を意味しています』

立ち向かう?怪相手に立ち向かうってことか? 意外と面白いことを暗示してる夢だったのかもしれない。

『もし、何度も逃げる夢を続けてみる場合は、調に問題があるのかもしれません。病院に行ってみてください』

・・・。 病気は嫌だなぁ。

まぁ、見た夢を要約すると『スライムに殺されかけて、鎌を手にした黒炎の年に助けられる』って容だからなぁ。なんというか、気恥ずかしい夢だ。忘れよう。

そうして僕はドライヤーで髪を乾かし、學校へ行く準備を始めた。

「おはよう、ケンジン」

「おはよう、ゆう」

何事もなく、教室に著くと悪友の赤坂あかさか 由ゆうが聲をかけてきた。ちなみにケンジンとは、由だけが使ってる僕のあだ名らしい。

「なんか、転校生がくるらしいぜ。らしいけど可い子だったらどうするよ?ぐふふ」

ゆうの事を簡単に紹介すると、ご覧の通りのゲス気味な格をしている。その一方、小柄で可らしい容姿で異に人気が高い。格と容姿のギャップが人気のだとクラスメイト達の評らしい。

「お前報だとしたらガセだな」

周りのクラスメイトもかに頷いていた。

ゆうは學校の報屋を自稱していて、校に獨自のネットワークを築いている。本人がおっちょこちょいのあわて者さんなので誤報率が驚異の8割だったりする。

「ほう、いいぜ。本當に転校生が來るのか賭けるか?」ゆうは自信ありげの表を浮かべる。

「応!構わないよ」僕は自信ありげに答える。

ちなみに、僕の対ゆう戦の賭け事は勝率8割だったりする。

「じゃ、勝った方が學食の食券な」

ほう、隨分と賭け率を上げてきたもんだ。よほど自信があるのだろうか?否。

「構わない。賭け率を上げさせてもらうよ。ジュースもだ」

周りがざわめき始める。 ゆうも顔をしかめているが、やがて聲をあげた。

「ベット!」

それに僕も親指を立てて返す。

「グット!」

からギャラリーから聲援が飛ぶ。

その中で僕とゆうは視殺戦を展開させる。龍虎相討つってやつだ。

やがて聲援も収まり、戦いの合図を告げるチャイムが鳴る。

ホームルームの時間が始まる。靜まり返った教室に向かってくる足音が廊下に響く。

ドアが開き、擔任である大塚俊彥先生がってくる。 普段、騒がしいクラスが靜まり返ってるのが予想外だったのだろう。一瞬、驚きの表を見せるが経験則から狀況を判斷したのか、何事もないようにしゃべりだした。

「え~ まず今日から君たちの仲間になる転校生を紹介します」

『『『うおおおおおおおおおおおおおおお!』』』

靜まり返った教室から発したような歓聲があがる。

ゆうを見ると、立ち上がり両手でガッツポーズをあげている。

それを祝福して拍手で稱えるクラスメイト達。

そんな中、僕の「ちくしょおおおおおおおおおおお!」のびが轟く。

「はいはい、靜かに。王越の大敗が楽しいのはわかるが、転校生がりにくい」

しばらく、僕とゆうの熱戦の余韻にひたってたクラスも先生の聲で靜けさを取り戻した。

「じゃ、滝川晴人たきがわはるとくん。ってきなさい」

教室では「男じゃねぇか」と笑い聲が起き、ゆうの「賭けは転校生の有無だからな」と釈明の聲を上げるが、転校生を見た瞬間、教室中が絶句した。

転校生は、人の目を引くほど整った顔をしているが、それ以上に赤い髪が目立っていた。

この田舎では金髪でも目立つほどなのに、赤髪で學校に通う生徒なんて前代未聞の出來事だろう。

しかし、僕はクラスメイト達とは違う理由で絶句していた。

転校生 滝川晴人は、夢で見た赤髪の男と同じ顔をしていたからだ。

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