《天才年、異世界へ》第9話
ゴブリンの巣を潰してから、一ヶ月が経った。
街の宿屋の一室にが差し込む。
「ぅ、うう…」
が眩しかったのか、うめき聲が聞こえる。
そして、部屋の中にいる人が再び睡眠を貪ろうとしたその時、外から聲が聞こえた。
「弘一郎君、朝だよ」
そう言って聲をかけられ、部屋にいた人、木村弘一郎が目を覚ました。
「おはよう、乃」
そうして彼が挨拶をしたのが、なじみである、石原乃だ。
「おはよう。下でシャルが待ってるよ」
そう言って2人は宿屋の階段を下りていく。
すると、
「おはようございます‼︎」
とても元気な聲が聞こえた。その聲の主は、先ほど言っていた獣人の、シャルである。
「おはよう」
「おはよう、シャル」
そう言って挨拶を返す。
さて、どうして蔑まれている獣人のはずのシャルが普通にしていられるかというと、初めてシャルを連れ帰った時にバカな男がシャルを蔑んだため、そのことにキレた弘一郎が男を毆り飛ばし、皆が恐れたから、という理由と、シャルの人柄が宿屋の人達にもよくわかったからである。
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「さて、今日はどうしようか」
「はいはーい!今日もまた適當に依頼をける、でいいんじゃない?」
ちなみに、弘一郎はこの一ヶ月でAランクまで上がっている。
「ふむ、まあ、それでいいか。シャルもいいか?」
「はい!」
「じゃあ、決定だね!」
そうして3人は朝食を終えると、ギルドへ向かった。
クエストボードを見ていると、後ろから聲をかけられた。
「おい、ガキ!いい連れてんじゃないか。俺によこせよ」
それを聞き、後ろを振り向くと見たことのない男がいた。
「あぁ⁉︎何言ってんだおっさん。ブチ殺すぞ!」
弘一郎は自分勝手なことを言う奴が大嫌いなので、この時にはすでに嫌悪の視線を向けていた。
「あーあ、終わったな。あのおっさん」
「まったくだぜ。コーイチローの仲間に手を出そうとするなんてな」
そう言いながら、ギルドの冒険者は笑っていた。
彼らも一度弘一郎に喧嘩を売ってボコボコにされた経験があるのだ。
「なんだと、ガキが!下手に出てりゃ調子に乗りやがって‼︎」
(どこがだよ‼︎)
これが現在の弘一郎の気持ちだった。もうその視線は嫌悪ではなく、可哀想なものを見る目に変わっている。
そこで、弘一郎が黙っていたのを怯えていると思ったのか、男はニヤニヤと近寄っていく。
「クク、今ならと金を出せば、許してやらんこともない。さあ、差し出グボェッ!」
そこまで言ったら男は倒れていた。弘一郎が毆ったのだ。
 そして弘一郎はしの殺気を乗せて言う。
「おい、おっさん。し黙れ」
「ヒッ、ヒィッ!」
怯えた男は全力でギルドから走り去っていった。
するとそこへ、1人のが近寄ってきた。
「ねぇ、あなた。私は魔學園『フィーリア』の學園長のカナというものよ。あなた、強いのね。もし良かったらウチの學園に來ない?」
この言葉を聞いて、弘一郎は最初驚いていたが、それは一瞬のことで、すぐさま行くことへのメリットとデメリットを探し始めた。
(學園に行くことのメリットとしては、知り合いが増えることだな。そうすると自ずと報も増える。デメリットは、……特にないか)
「わかりました。行かせてもらいます。ですが、こちらの2人も一緒で構わないですか?」
「ええ、構わないわ」
「なら行かせてもらいます」
そう言うと、カナは驚くことを言った。
「そう♪試験は明日よ」
「⁉︎勉強してないのに出來ませんよ!」
それを聞いた乃が言い返す。
「大丈夫よ。試験はあくまで実力をはかるだけだから。勉強は學してからよ」
そう言ってカナはスキップして去っていった。
なんとなくその日は依頼をける気が無くなり、3人は宿屋に戻ってダラダラと過ごした。
翌朝、試験のための準備運をしようと早く起きた弘一郎は素振りを始めた。その太刀筋は一ミリの狂いもなく、また、目にも映らない••••ほどのスピードだった。そして、素振りを終えた弘一郎は水で濡れたタオルでを拭いた。ヒンヤリとした覚が気持ちいい。そう思いつつ、今日のことについて考えた。
(今日は試験をした後、武屋に行かないと。そろそろアレもできてるだろうしね。)
考えに沒頭していると、聲が聞こえた。どうやら、他の客が起き始めたようだ。
「そろそろ、2人も起きてくる頃か」
弘一郎はそう呟いて、宿屋の中に戻った。
食堂にいると、乃とシャルが下りてきた。
「おはよう、弘一郎君」
「おはようございます〜」
「おはよう、2人とも」
そう言って朝食を食べ、3人は準備をして、學園にに向かった。
「「「ッ!」」」
學園の方へ歩いていると、違和をじた。
「結界か……」
「人払いの結界だね」
「ですが、どうしてこんなものを?」
シャルが當然の疑問を口に出す。
それに答えたのは弘一郎だ。
「この結界はそれほど強くない。だが、弱い奴では気づけない程度の強さはある。つまり、ある程度の強さがなければ、たどりつくことすらできないということだ」
「なるほど……」
今現在3人は足下に気をつけて歩いていたため、下を向いている。そして、顔を上げた3人は、絶句する。
「でかいな」
「でかいね」
「でかいですね」
そのような想しか出ないほど、その建は大きかった。
「とりあえず、試験會場に行こうか」
「うん」
「はい」
そう言って3人は建へ足を進めた。
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