《負け組だった男のチートなスキル》第四話 初めての魔
「うわぁぁ」
ただ今、異世界転移初日目の高月助こと、タカツキコウスケは初めての外に出た瞬間に初めて魔に出會いけない聲を発しながら逃げ回っている。
「なんでこんなに、初めてが重なってるんだよ! 何も嬉しくねえわ!」
逃げながらコウスケはびどこかのだれかに訴えた。
その魔の姿はイノシシのような見た目で、とにかく牙が長く恐ろしいことになっている。
「はぁはぁ、無理」
見た目がイノシシなのでもちろん素早くコウスケはギリギリのところで橫に跳んだりして避けていた。
しかしそれを続けるにはコウスケのステータスではあまりにも低すぎた。
「はぁはぁはぁ」
コウスケはすっかり息を切らして後ろから迫ってくるイノシシに向き合い覚悟を決め拳を後ろに引く。
無茶なのはコウスケも承知の上だ。だがこのまま後ろから殺されるくらいなら、せめて男らしく戦って死んでやる。そうコウスケは覚悟を決めたのだ。
目の前までイノシシが猛スピードで突進してくる。それを見てしまったら、さっきまでの覚悟があっさりと砕け散った。
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思わず目を閉じを丸め、最後に死を覚悟した――が、いつまでたってもイノシシが當たった時に起こるであろう衝撃は來ない。
もしかして即死した? なんて騒な事を考えながらもゆっくりと眼を開けて様子をうかがう。
目の前にはイノシシの顔が。
「うわぁぁ」
コウスケはけない聲を出して餅をつく。
そんなコウスケへ聲がかかった。
「ははは、お前度があんのかないのかどっちなんだよ」
その聲の方を見るとコウスケには良く分からないが、なにやら赤茶の髪でおしゃれな髪形をした青年がこちらを見ていた。
その隣には金髪のが無表でこちらを見ている。その顔は整っていて十分といえる顔なのだが、表が皆無すぎて人形のように見え、逆に怖くじる。
「それで? お前は何で何も持たずに外にいるんだ? ん? その髪のは……もしかして異世界人か?」
あっさりと異世界人という事がばれ目を見開いて驚くコウスケ。
異世界人がそこまで認知度があったのかと改めて驚いた。
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ならばここで噓をついては信用を得られない。
「はい、そうです」
「でも、今頃は王との謁見の最中なんじゃねえのか?」
「い、いやー、それがですねー」
隠していてもしょうがないので、先ほどあったことを包み隠さず恥らいながら話した。
もちろんスキルの事は伏せておきながら。
「はっはっは、本當かよ? 異世界人の中で一人だけの落ちこぼれとは、なんかすげえなお前」
青年は大聲で笑い、金髪のは無表のまま見ている。
先ほどより視線が冷たくなっているようにじるのは気のせいだと思いたい。
「笑い事じゃないんですけどね」
「確かにそうだよなぁ、ま、ここで會ったのは何かの縁ってやつだな、俺の名前はゲンジュってんだ、そしてこいつの名前はキィンクだ」
「ゲンジュさんとキィンクちゃんですね、自分の名前はコウスケです、よろしくお願いします」
「おう、こいつは無口だから何考えてるのか分かんねえけど、きっと歓迎してるぜ」
キィンクは相変わらず無表でコウスケを見ていた。どこからどう見ても歓迎の雰囲気を出しているようには思えない。
「それでお前はこれからどうすんだ?」
「ええと、お金が無いので稼ごうと思って外に出たんですけど……」
「そうだったのか、でもなさすがに丸腰で出るなんて命知らずだぜ」
笑いながらゲンジュはコウスケに忠告した。
「ちょっとステータス見てみろよ」
「え? どうしてですか」
「安心しろ、俺は鑑定スキルなんて持ってねえからステータスは覗けねえよ、いいからいいから」
「分かりました……」
コウスケは言われるままにステータスを開いた。
次に何をするのか、ゲンジュに視線を送ると下の方を押せと、ジェスチャーしていたので真似して押してみる。
するとステータスの項目が増えてこのように変わった。
名前 高月助
種族 異世界人
レベル 1
力 自信なし
魔力 心もとない
攻撃力 ありません
防力 我慢は得意
敏捷力 皆無
スキル 隠蔽
所持金 10000M
「あれ? 項目が増えてる」
「やっぱ知らなかったか、初めは誰かに覗かれても大丈夫なようにお金の項目は表示されてないんだよ、つまりそのステータスに書かれている項目がお前の所持金だ」
コウスケは絶句した。
もちろん金があったことは嬉しい。
それに円と同じ相場であることもラッキーである。
だが一つだけ許せないことがあった。どういうわけか神がそのことを教えなかったということだ。
あの神の事だ、丸腰で外に出て魔に襲われることも予想通りだったのだろう。そしてその様子を見て楽しむという魂膽なのだ。と、勝手に妄想を膨らまし恨みを込める。
「はぁ、なんであんなのが神なんだ」
小さくカズトは呟いた。もちろん二人には聞こえないようにだ。
「それで? どのくらいあったんだ?」
ゲンジュは作った意地悪そうな笑みを作って聞いてくる。
別に悪い人じゃなさそうなので、正直に答えることにする。
「10000ぐらいですね」
「10000!? 見た目によらずなかなか持ってんなぁ」
「あの、Mって何の略ですか?」
「そんなことも知らねえのか? そりゃあもちろん……」
きっとMONEYの略だとコウスケは、予想、確信していた。
「MOONの略だろ」
「え? MOONって月の意味じゃないんですか?」
「そうだが? まぁ異世界から來たんだから分からないでも當然かもな、この世界は主に魔力が重要視されているのは知ってるよな? その魔力はの中に備わっているものだが、もちろん使うと減っていく、その減った分の魔力を補充する時に、大気中に漂っている魔力を取り込んで回復するんだ、そしてその大気中の魔力を補充するのが月ってわけだ、だから月がこの世界では重要ななんだよ」
よくわかったような分からないような話をゲンジュが述べ、混しながらもコウスケ頷いた。
まさかMONEYじゃなく、MOONだとは予想外だったが。
「よし10000Mもあるんだったら、裝備一式くらい買えるぜ?」
「本當ですか? なら買いたいです」
「なら、今から俺の行きつけの店に行くか」
「お願いします」
ゲンジュはコウスケとキィンクを連れて、人ごみの中を突き進んでいく。
きっとコウスケ一人ではし遂げられなかった試練だろう。ここでゲンジュに出會わせてくれた神にしだけ謝した。
「ここだ、おいケンジン! いねえのか?」
「いちいち大きな聲を出さんでも聞こえとるわ、で何の用じゃ?」
「こいつの裝備を買いに來た」
ケンジンと呼ばれた老人がコウスケをじっと見つめこう言った。
「ほう黒髪か、異世界人じゃな?」
「そうなんだよ、なんでも勇者落ちしたらしいぞ」
「それは本當か? それは殘念じゃったのう」
「い、いえ、自分が不甲斐ないせいです」
ゲンジュとケンジンと會話してまずじたことは、落ちこぼれだということを聞いても、笑いはするがバカにしては來ない。
そう言う面で、コウスケは學校の奴らよりも話しやすく親しみやすくじた。
「では、自由に選んでくれ」
「あの、どんなものがいいかも分からないんですが」
「そうだな、ならゲンジュに聞いてみるといい」
「え、俺かよ」
「お主が連れてきたんじゃろうが、最後まで面倒は見んか」
「はいはい、じゃあこれなんかどうだ?」
ゲンジュが差し出したのは奇妙な形をした剣だった。刃の部分がねじれており、突くのに特化した武のようだ。
「あのーケンジンさん、ゲンジュさんからセンスがじられないんですが」
「なんだとコウスケ、言うじゃねえか、キィンク俺にセンスが無いと思うか?」
「うん……」
「な!」
ゲンジュはキィンクにまでそう言われて、すっかり落ち込んでしまった。
「あ、でも、その髪型はセンス抜群ですよ」
「いまさら遅いわ」
ゲンジュは落ち込んだまま店の奧にり座り込んだ。
「まぁ、ゲンジュはし変わった価値観を持っておるのは否定できん、仕方がない、ワシが選んでやるか」
「ケンジンまでそう言うのかよ」
ゲンジュが奧から聲を発する。
それを聞いた、コウスケケンジンは苦笑いを浮かべる。ちなみにキィンクは武をいろいろ眺めていた。
「そうじゃのう、どの武がいいかのう」
「これ」
キィンクが突然コウスケの裾を引っ張って、武を差し出してきた。
その武は刀である。綺麗な刀になめらかな曲線を描いている。
コウスケは刀には詳しくないが、日本男児なら一度は憧れるものではないだろうか。
「これにします!」
「刀か? これは扱いが難しいと思うが」
「大丈夫です」
「なら別に止めはしないよ、あとは防とかかの」
そのあと制服の上から羽織れ、魔法耐のあるローブを買った。
鎧とかも売っていたのだが、殘念ながら重すぎるのに加え、型うんぬんで著こなせなかったので軽いローブ程度しかに付けられなかったのだ。
「ありがとうございました」
「いやいや、ワシの方がそれを言う立場じゃよ」
「終わったか? なら宿を取りに行くぞ」
「そこまでしてもらっていいんですか?」
「そりゃあ、この世界を何も知らないお前を見捨てるわけにはいかねえだろ」
「ありがとうございます」
そしてそのまま宿をいくつか周り、開いている宿を見つけて、そこに泊まることが決まった。
もちろんキィンクとは別の部屋である。
「無事に終わってよかったぁ」
「お前も大変だったな、呼び出されて即用無し通告とはよ」
「気にしているんですから言わないでくださいよ」
「はっはっは、すまんな、まぁ上の人はそうかも知れんが、俺らみたいな庶民はそんなひどいことはしねえと思うから安心しな」
「いろいろとありがとうございます」
なんというか、久々に人のいいところをじた気がするコウスケ。
「し素振りしてから寢ます」
「おお熱心だな」
とりあえず買ったばかりの刀を手に馴染ませるために振っておきたかった。
ちなみにコウスケは一度集中すると周りが見えなくなるくらい熱中する格である。その後、夜遅くまでコウスケは刀を振るい続けた。
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