《負け組だった男のチートなスキル》第八話 信頼
コウスケは宿へと戻り、自室へと向かう最中、食堂で酔いつぶれているゲンジュを発見した。
ゲンジュでも酒を飲むのかという意外をじながらも、コウスケは酔いつぶれているゲンジュに向かう。
さすがに無視するのはひどいと思ったからだ。
「ゲンジュさん」
「んぁ?」
肩を揺すってゲンジュを起こすコウスケ。
ゲンジュは直ぐに目を覚ましたが、しの間呆けていた。
「こんなところで寢てたら、風邪引きますよ」
寢ぼけているゲンジュへそう聲をかける。
そのコウスケの言葉がゲンジュに聞こえたのか、コウスケへと視線を向ける。
「おぉ、コウスケじゃねえか、今日は遅かったな」
「ええ、しばかり戦いに夢中になってしまって」
「戦い……?」
ゲンジュは頭が働かないのか、そう呟いてコウスケを見た。
何のことか分かっていないようだ。
「魔とのですよ、が軽いんで張り切っちゃいました」
「あぁなるほどな……って、こんな時間までか!?」
「まあそうなりますけど」
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ゲンジュは一気に酔いが醒めたのか、目を大きく開き聲を発した。
そしてコウスケの答えを聞くと呆れた表を浮かべる。
「いくら元気だからって、魔相手に一日を費やすなんて、とんだ変態だな」
「だれが変態ですか!?」
「お前だよ!」
変態呼ばわりされたコウスケは聲を張り上げて反論する。
し運を張り切りすぎただけで、変態呼ばわりされるのは納得がいかないからだ。
何より変態と呼ばれることに賛する人などいるのか。
「いいじゃないですか、しくらい頑張りすぎても」
「そのしがとんでもないんだよ」
相変わらず呆れた表のゲンジュがそう呟く。
そして大きくびをしながら立ち上がった。
「今日はもう寢ますか?」
「ああ、し飲みすぎちまった」
「ゲンジュさんってお酒飲むんですね」
「あぁ、まあな」
ゲンジュはし小さめの聲でそう答えた後、ヨロヨロと自室へと向かっていった。
ひとまずコウスケは夜食をいただき、食べ終わってから部屋へと向かう。そこにはすっかり睡していたゲンジュの姿があった。
いびきがうるさい。そんなことを思いながら眠りについた。
次の日の朝、ゲンジュの荒々しい起こし方をされることなくコウスケは目を覚ました。
ゲンジュの姿は部屋にはない。
何処か急ぎの用でもあったのだろうか。
コウスケは多気になりながらもとりあえず食堂へ向かう。そして食堂には一人で食事をしているキィンクがいた。
てっきりゲンジュと一緒に出かけていると思ったのだが、違ったらしい。
「おはよう」
コウスケはキィンクへと挨拶をわす。
「おはよう」
キィンクの方も相変わらず小さい聲だが、しっかりと挨拶を返してくれた。
「ゲンジュと一緒じゃないんだね、部屋にいなかったからてっきり一緒にいると思ったんだけど」
「え?」
コウスケの言葉にキィンクは首を傾げて反応する。
キィンクもゲンジュの行方は知らないようだった。
「あれ? ゲンジュのことだからキィンクには知らせてると思ったんだけど」
「知らない」
「んー、どこに言ったんだろう」
コウスケは腕を組んで呟く。
キィンクも視線を固定させて考えているようだ。
するとキィンクは何か思い當たる節があったらしく、突然立ち上がった。
「コウスケ、今日付き合って」
「え、ちょっと」
コウスケの答えを聞く前に、キィンクは腕を引っ張って食堂からコウスケを連れ出す。
ちなみにまだコウスケは食事を済ませていない。
「ちょっと、どこに行くの?」
無言でコウスケの腕を引っ張り続けるキィンクに質問を投げかける。
キィンクは無表のまま一言呟いた。
「革命団」
と、なんとも騒な名前を。
「え、ストップ、ウェイト、プリーズ」
コウスケは必死に停止の言葉を投げかけるが、キィンクに止まる気配はじられなかった。
このまま革命団という、いかにも武裝組織の場所へ連れて行かれるのだろうか。
コウスケの心中は不安でいっぱいだった。
しばらく歩いた後、ある建の前でキィンクは立ち止まった。
その建はコウスケの想像にあった薄汚れたいかにもというような建ではなく、どこにでもありそうな酒場だ。
とはいえキィンクが先ほど発した言葉を聞いたコウスケはいつも以上に張していた。
そんなコウスケの気持ちなど意に介する様子もないキィンクは、その建の扉をあっさりと開いた。
當然コウスケの腕を摑んだまま。
「おい、そっちのコウスケとかいう勇者はどうなんだ?」
「ん、そうだな、今のところは何も怪しい様子はないよ」
「だからといって油斷するんじゃねえぞ、王族の連中の罠かもしれないからな」
「分かってるって、あいつは今頃魔の相手でもしてるだろうさ」
建の中にると、薄暗い空間が広がっていた。
そして奧から二人の男が會話をしていた。片方はどこか聞いたことのある聲だ。
「やっぱり」
隣でキィンクがポツリと呟く。
何が何なのか分からないコウスケはただただ呆然としているだけだ。
「魔? 何でだ?」
「何でも、の調子が良いからだと」
「……そう言う建前で、実際は王城に報告に行ってる可能もある」
「あー、確かにそうかもな」
未だコウスケたちがって來たことに気づいていないらしく、奧でまだ會話をしていた。
そんなことはお構いなしとばかりにキィンクがズカズカと奧へと進んでいく。
もちろんまだコウスケの腕を摑んだままである。
「警戒を怠るなよ、ゲンジュ」
「ああ……って、キィンク!? コウスケまで」
奧へと進んでいくと、今まで會話をしていた男たちの顔がうかがえた。
會話の容で大のことは察していたコウスケだったが、やはりゲンジュだったようだ。
「おい! そいつを連れてくるとはどういう用件だ?」
ゲンジュと會話をしていた男がキィンクへと怒鳴る。
それでもキィンクは表一つ変えずにさらにはゲンジュへと睨み返す。
ゲンジュは慌てた様子で、視線をキョロキョロとせわしなく移させていた。
「ちょっと待ってくれ、キィンク、どうしてコウスケを?」
「それはこっちが聞きたい、どうしてここにいるの?」
珍しくを浮き出した表でキィンクがゲンジュへと言葉を発した。
その言葉にゲンジュはウッと顔を顰める。
なにやら只ならぬ事がありそうだと、蚊帳の外のコウスケは思った。
「それは……」
口ごもるゲンジュはチラリとコウスケを見る。
見られたところでコウスケは首を傾げるだけだ。
「コウスケが勇者だから?」
「あ、あぁ」
力なくゲンジュは頷いた。
「コウスケは勇者になれなかった、確かにそう言った」
「噓かも知れないだろ!」
「どうして?」
突然のゲンジュの聲量に、キィンクはピクリと眉をひそめて言った。
「鑑定を持ってるお前なら分かるだろ、こいつは隠蔽スキルを持ってるんだぞ」
ゲンジュはそう聲を荒らげてコウスケを指差す。
いくら狀況が摑めないとはいえ、コウスケはゲンジュから決して良いでは見られていないことを理解できた。
「隠蔽で隠せるのは々スキルだけ」
「そのスキルの力が怪しいんだろ」
キィンクとゲンジュは互いに引かず、睨み合っている。
すると今まで黙っていた、名も知らぬ男が口を挾んだ。
「なら本人に聞いてみるというのはどうだ?」
その男の言葉にキィンクとゲンジュがコウスケへ視線を移す。
急に巻き込まれたコウスケは思わずたじろぐ。
「えっと……何の話でしょうか」
「今からお前が、王族のスパイかどうか確かめるんだよ」
「王族のスパイ?」
「それが演技かどうかは、後から分かる」
ゲンジュがぶっきらぼうにそう告げた。
つまりゲンジュは出會ったときからコウスケのことを心の底から信用などしてなかったのだということをコウスケは悟った。
それと同時に今までのゲンジュとの思い出が蘇り、悲しい気持ちに包まれる。
ない期間とはいえ、ゲンジュとの生活は暖かいものがあった。とコウスケは勝手ながらじていた。
「最初から信用していなかったと……」
コウスケは小さくそう呟いた。
「當たり前だろ、異世界から召喚された異世界人が勇者落ちするなんて聞いたこともねえ、ならお前が王族と繋がってると考えるほうが自然だろうが」
「だからそれは違う」
あくまでキィンクはコウスケの味方だった。
それがゲンジュには理解できないようで、眉間に皺を寄せて聲を放つ。
「何でそんなにあいつを庇う? もしかして惚れたのか?」
そんな的外れの言葉をキィンクへ投げかけたのだった。
キィンクは途端に無表になり言葉を発した。
「それはない」
あまりの即答に思わずゲンジュも直する。
そしてその場が一瞬凍ったかのように音がなくなった。その場でコウスケだけが傷つくことになったのは言うまでもない。
「な、ならどうして」
「コウスケはスパイじゃない」
「だから! なんでだよ!」
キィンクの崩れないその姿勢にゲンジュがぶ。
そして、キィンクが言った。
「だって、団長が言ってた」
「え?」「は?」「ん?」
キィンクの言葉に三人は同時に聲をらした。
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