《負け組だった男のチートなスキル》第九話 革命団

キィンクから放たれた言葉は、コウスケを除く二人を納得させるものだったらしく、すっかり意気消沈としていた。

「あの、未だに分かっていないんですが」

コウスケはたまらずそう口に出す。

それに答えたのはゲンジュだった。

「あぁ、ここが革命団の支部だってのはキィンクからきいてるよな? 革命団ってのは簡単に言うと反王制派の集まりなんだよ」

ゲンジュがそこまで言うと、続いてキィンクが口を出す。

「この國には々な反王制の団がある、けどその中でも一番の力を持っているのが革命団」

革命団の概要は分かった。

つまり、いわゆる王の兵である勇者たちは革命団にとっては厄介な敵なのだろう。

だからコウスケは、ゲンジュらに疑われることとなったと。とはいえ、先ほどの団長、という言葉の意味は分かっていない。

団長というほどなのだから、この団のトップであるのだろう。

だが、コウスケ自、団長に會った記憶もない。

そのため、何故その団長がコウスケを庇うのか不明だったのだ。

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「そして、その革命団を創り上げたのが、クリア団長という人」

「なるほど……クリア?」

何処かで聞いたことのあるような名前だと、コウスケは疑問を口にする。確か、前に話してあったことのあるような気がしないでもない。

「そう、今は王城にいる」

「王城……あ」

コウスケは思い出したとばかりに顔を上げた。

コウスケが城で話したのは、クラスメイトと偉そうな人ぐらいだ。だが、最後に聲をかけてくれたがいた。

そのが確か、クリアという名前だったような気がする。

「噂をすればなんとやらだな」

ゲンジュがそう呟いた。

注意して聞くと、この部屋へと近づいてくる足音がある。

「みなさん、お久しぶりですね」

足音の正の人が、き通るような聲で言葉を発した。

やはり、コウスケはこの聲を聞いたことがあった。

「そして、コウスケ様もお久しぶりです」

「う、うん、まさかクリアさんが革命団の団長さんだとは思っても見ませんでしたよ」

コウスケは戸いの表を浮かべながらクリアへ告げる。

クリアの方は、手で口を押さえ笑みを浮かべた。

「ごめんなさい、あの時は正を明かすわけにはいきませんでしたから」

あの時はコウスケの人格を確かめるためだと、付け足してクリアは言った。

そして、あの後キィンクへ連絡し、その連絡をけたキィンクが偶然を裝ってあの日のコウスケと出會ったわけだ。

「コウスケと會ったのも団長の指示だったのか」

ゲンジュも初めて知ったとばかりに頭を掻く。

全てを知っていたのは、キィンクとクリアだけだった。

「ごめん、でもゲンジュは演技なんて出來ないから」

キィンクはゲンジュに向けてそう言い放つ。

その言葉でゲンジュはウッと顔を顰めた。自分でも自覚があるようだ。

「しかし、コウスケ様を巻き込む形になってしまい申し訳ありません」

クリアはそう言ってコウスケへ頭を下げる。

確かに、し厄介な出來事に巻き込まれたコウスケだが、ゲンジュたちと過ごした日々は悪いものではなく、むしろ楽しい日々だった。

そのおで、型も戻すことが出來たこともある。そう言ったことを踏まえると、良いことだけかもしれない。

「いえ、むしろ楽しい日々を過ごせました、ダイエットも功しましたし」

「確かに以前にも増して魅力的になっていますね」

クリアは笑みを浮かべながらそう述べた。

コウスケとしてみれば、であるクリアに面と向かってそういわれると照れてしまい、現に落ち著かない様子で、言葉に詰まっていた。

「団長、コウスケが困ってる」

そこにキィンクが助け舟を出す。

「お世辭でも言ってはいけないこともある」

前言撤回、助け舟ではなかったようだ。

「そう? 私は本當のことを言っていますよ」

「あ、あの、もう良いですから」

まだまだ続けそうなクリアにコウスケは言葉を発する。

このままでは、ゆでだこになってしまう自覚がコウスケにはあった。

「分かりました、コウスケ様への悪戯はこれくらいにして」

クリアはペロッと舌を出して言った。

それものクリアがやれば、映えるのだから憎めない。

「あと、そのコウスケ様というのもむずいので、呼び捨てで良いです」

「コウスケ様……いえ、コウスケさんが言うならそうしますね」

まだ呼び捨てではないのだが、様付けよりは斷然良いのでコウスケは口を挾まないでおいた。

「とりあえず、俺に近づくようにキィンクにクリアさんが頼んだのは、俺が実際に王族のスパイかどうか知るためだったんですね?」

コウスケは今までの話をまとめて口に出した。

だが、クリアはキョトンとした表をして首を傾げた後、言葉を発した。

「いえ、その考えはゲンジュたちの方ですよ」

「そうだ、俺はコウスケがスパイだったなら、逆にこちらのスパイとして飼い慣らすつもりだった」

つまりゲンジュはコウスケを二重スパイにしようとしていたわけだ。

続いてキィンクが言う。

「忘れた? コウスケをスパイじゃないって言ったのは団長だってこと」

「あ、そうだった」

コウスケは先ほどの會話を思い出す。

では、何故キィンクはコウスケに近づいたのか、疑問が殘る。

「では、どうして俺に近づいたんです?」

「その理由はいくつかありますが、そのの一つはコウスケさん、あなたの力が目的でした」

「俺の力?」

「はい、いくら勇者落ちしたとはいえ、異世界人は私たちより様々な恩恵があるはずですから」

コウスケは複雑な心境になる。

無能だと捨てられたコウスケにとって、力を認めてもらえることは嬉しい。

だが、自分の価値が異世界人としての力だけといわれるのは悲しくもある。

「ええっと、コウスケさん、勘違いしないで下さいね、理由は一つだけではないです、もちろんコウスケさんに革命団にってしいという気持ちはもちろんありましたが、でも私がキィンクにコウスケさんの監視を頼んだのは、護衛のためなんです、これはキィンクも知らなかったことだけど」

「初耳」

クリアの言葉にキィンクはムスッとした表で呟いた。とはいえ、コウスケにしてみるとどうしてクリアにそこまでされるのか分からなかった。

「どうしてそこまで?」

「コウスケさんがあの勇者達からの対応が見ていられなかったというのもあります、後は……そうですね、コウスケさんが勇者達の中で一番善良な心を持っていると思ったからでしょうか」

「一目で分かるものなのか?」

「いえ、初めは妙に落ち著いていましたので、しは変に思ったんですよ」

神様にこれから起きることを予言されていましたから、とはいえず口ごもる。

「なら、最初に會ったときは俺がスパイかどうか疑っていたんじゃないのか?」

コウスケは當然の疑問を口にする。

すると、クリアはクスリと笑って告げた。

「まあそうなんですけど、あの時のコウスケさんは本當に宰相に嫌われてましたし、そもそもスパイになる時間すらありませんでしたよね」

「ま、まぁそうだけど」

「でも、憶測だけで判斷するわけにもいかないので、城外ではキィンクにコウスケさんを擔當してもらい、私は城報集めをしていたというわけです」

つまり今までの話したことをまとめるとこういうことになる。

ゲンジュと話していた男は、コウスケを王族のスパイだと思い監視していた。

キィンクは、クリアからの指示でコウスケがスパイかどうか監視していたが、クリアからスパイではないと言われたため、疑いは消え去った。

最後に、クリアは王城からコウスケを見送った後、キィンクに監視という名目でコウスケの護衛を頼む。

その後、城報を集め、コウスケがスパイかどうか調査していた、というわけだ。

実にややこしい。

「では、コウスケさん、どうします? このまま革命団にりますか?」

クリアはそう言って魅力的な微笑をコウスケへ向ける。

この場にいる誰もがコウスケへ視線を移させていた。

當然コウスケの答えは一つ――

「お斷りさせて頂きます」

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