《負け組だった男のチートなスキル》第十話 人種

コウスケの言葉に、キィンクとクリアは眉をピクリとかすだけで何も言わなかった。

代わりとばかりに、大聲でんだのはゲンジュだ。

「なんでだよ!」

「なんでって、今まで俺を疑ってたんでしょ?」

目を細めてゲンジュへ言葉をかける。

「そ、それは……」

ゲンジュは何も言えず口ごもった。

「冗談だって、疑われるくらいならまだ大丈夫」

「疑われるぐらいって……」

ゲンジュは意味が分からないとばかりにコウスケを見て呟いた。

コウスケにしてみれば、今まで嫌われ続けたのだ、多疑われるくらいで怒ったりしない。とはいえ、こちらに害を加えてくるのであれば話は別なのだが。

「ならどうしてですか?」

黙ったゲンジュの代わってクリアが質問を投げかける。

「今のところ、どこかに縛られたくないんですよ」

ようやく異世界に來たことで自由になれたコウスケはそう言った。

もうし力をつけ、かつ世界を回った後ならと考える。

「そうですか、なら仕方ありません」

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「思ったよりあっさりと引くんですね」

「しつこくしてコウスケさんに嫌われたくないですから」

「だからその笑顔は反則……」

再びニコッと笑顔をクリアはコウスケへ向ける。

その笑顔を見せられるとコウスケの気持ちも揺らいでしまうというものだ。

「では、コウスケさんはこれからどこへ?」

「うーん、とりあえず近くの町を転々と回る予定なんですけど」

的な事は何も決まっていないコウスケはそう曖昧な答えを出す。

そんな曖昧な計畫でい斷わったのかと呆れられるのかと思ったのだが、クリアは笑顔を崩さず言葉を発した。

「そうですか、気をつけて下さいね、コウスケさんの容姿はただでさえ目立ちますから」

「あ、そうだった」

今まであまり誰も指摘してこなかったから気にしていなかったが、コウスケはこの地域には滅多にいない黒髪の持ち主だった。

異世界人召喚の噂はかなり遠い地域まで伝わっているらしく、厄介な事に巻き込まれる可能も高まる。

「変裝スキルさえあれば、髪のは変えられるのですが……」

変裝スキルというものがあるらしく、クリアはそう呟いた。

次に獲得するべきスキルをさっそく発見したコウスケは、嬉しいと思う反面、戦闘スキルでないことに多の不満ががあるが、今は仕方がないだろう。

「革命団にはその変裝スキルを持っている人はいないんですか?」

早速、鑑定しておこうと思いついたコウスケはそう質問する。

「それは……」

珍しくクリアが口ごもった。

視線はどこかキィンクを見ている気がする。

「私が持ってる」

そうキィンクが呟いた。それに反応したのはゲンジュである。

「おい、いいのか?」

「大丈夫、コウスケは偏見なんて持ってない」

良く分からないが信頼されているようで、コウスケは早速キィンクへ視線を向ける。

「コウスケ、私の本當の姿はハーフエルフ」

キィンクがそう呟いた後、一瞬にしてキィンクの髪のが金髪から銀へ変わった。

よく見ると、耳も若干長くなっているような気もする。

「おぉ、変裝スキルってすごいな」

思わず湧き上がったを口にするコウスケ。

その反応を見てクスリと笑みを零したのはクリアだ。

キィンクは相変わらずの無表だが、何処か表らかくなっているような気がしないでもない。

ゲンジュともう一人の男は目を丸くしてコウスケを見ていた。

「お、おい、何も思わないのか?」

ゲンジュが慌てたようにそう聲をかける。

「え? 今想を述べたばっかりだけど」

「違う、そうじゃなくて、ハーフエルフってのにだ」

「ああ、綺麗な髪だよなぁ、耳だってこれこそファンタジーってじだ」

コウスケの言葉にゲンジュはますます意味が分からないとばかりに口をあんぐりと開けて固まった。

「どうしたんだ? ゲンジュは」

「コウスケ、この國では魔人族は當然だけど、亜人も歓迎されていない、ましてや雑種なんてもってのほか」

「そうなのか? ん、雑種?」

「そう雑種、ハーフなんかは一般的にそう言われてる」

「なんだそれ、隨分ひどいな」

雑種といえば、に対して使うような言葉だ。

それを、人に使うなんてどうかしている。

「ほら、コウスケなら大丈夫」

「あ、ああ」

唖然とするゲンジュにキィンクが聲をかける。

そんなに、おかしいことなのだろうか。自分の価値観が分からなくなってきた。

「コウスケさん、異世界ではどうだったか分かりませんが、この世界では他人種の関係は相當悪いんです、なので、ハーフなど他人種間との子は疎まれているんです」

「そうなんですね」

コウスケは改めてここが異世界であることを実した。

地球でも多の人種差別はあったのだが、ここまで嫌いはしていなかったようにじる。とはいえ、コウスケは學校の連中を嫌いしているのだが。

々大変だったんだね」

コウスケは今まで辛い道を歩んできたであろうキィンクがおしくじ、頭をでる。

キィンクは不本意そうな表をするが、抵抗はしなかった。

「コウスケ、次やったら消すから」

騒だな!?」

コウスケは慌ててキィンクから手を離した。

次も思わずやってしまわないよう気をつけることにする。

「ふふ、コウスケさん、それで変裝スキルの話ですけど」

そういえばそうだったとコウスケはハッとする。とはいえ、技能創造というスキルを明かしても良いのだろうかと葛藤する。

キィンクは自分がハーフだということを、コウスケを信じて明かしてくれたのだ。

ならば、それに答えなければいけないのかもしれない。

「ああ、とりあえずキィンクのステータスを見て良いか?」

「え? コウスケさんは鑑定スキルを所有していらっしゃったんですか?」

「ま、まあな」

やはり痛いところをつかれるコウスケ。

このまま正直に話すほうが楽になれるのかもしれない。

「どうぞ」

キィンクはさも気にする様子もなく呟いた。

なので、コウスケはキィンクへ初めて使う『鑑定』を発する。

名前 キィンク

種族 半エルフ族

レベル 15

スキル 魔力作 種族隠蔽 変裝

「レベル15!?」

コウスケの倍以上あるキィンクのレベルに思わず聲をあげる。

と、キィンクからコウスケに蹴りが當たる。

突然の蹴りにコウスケは涙目になりながらキィンクを見る。

「コウスケ、レベルを大聲でぶなんてデリカシーがない」

レベルにデリカシーという概念が當てはまるのかと疑問を浮かべるコウスケだが、よく見るとキィンク以外の全員も呆れた様子でコウスケを見ていた。

「コウスケさん、私でもそれはフォローできません」

「コウスケ、常識を知ろうな?」

「コウスケとやら……」

一斉に非難をけたコウスケ。

ここの世界には地球とは違った価値観があるらしいと、學んだコウスケだった。

「ごめん、そうとは知らずに」

「一度目は良い、二度目はない」

またキィンクに対する止事項が増えたコウスケだった。

「それで? 鑑定して何になるの? まさかただ単に見たかったからではないんでしょ?」

キィンクが疑うような視線をコウスケへ向ける。やはりここは素直に言うべきであると判斷するコウスケ。と、深呼吸して言おうとするところでクリアから聲がかかった。

「大丈夫ですよコウスケさん、誰にでもはあるものですから」

「え、あ、はい」

今まさに言おうとしたコウスケだったのだが、クリアにそう言われると、改めて言うこともないかと思ってしまう。

正直、言わないことになって安心するコウスケだった。自分でも分かるくらいチートであるこのスキルは、人の努力の結晶であるスキルを一瞬で真似して使ってしまうスキルである。

もし、他人がこのスキルを持っていると分かればまず、警戒し、嫉妬する。

「そういえばコウスケさん、勇者達の狀況ですけど、やはりどの方も規格外というのが見た限り思いました、近々ダンジョンにも、潛るという話ですのでこれからどんどん強くなっていくと思います」

「そうですか……分かりました」

コウスケは顔を伏せながら呟く。

今はまだ力がないコウスケに、復讐する勇気、気持ちなどない。

まずは自分に自信が持てるほどの力を手にれ、そしてその時もし彼らが再びこちらに害を與えてくるとなれば、撃退するというのがコウスケの當面の目標である。

実際、その時がくるかは分からないが、これからずっと先でもコウスケの中には確実に彼らに対する憎悪はある事は間違いない。

いつか來るその時まで、しっかりと覚えておこう。

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