《負け組だった男のチートなスキル》第十一話 道中で
あの後、雑談やらなにやらをして、コウスケは革命団の建を後にした。
キィンクら、革命団はし話があるとの事で、今現在、コウスケは一人である。つまり、自由時間である。
「よし、レベル上げだな」
コウスケは、スキルスロットを増やすために、レベルを上げようと考え、呟いた。
昨日から連続で戦闘だが、疲れは殘っていないし大丈夫だろう。
「もう草原は足りないんだよなぁ」
コウスケはそう呟く。
あまり張ったり、自分の力を過信してはいけないとは言うが、実際にもうコウスケは草原で危険に陥ることはなくなっていた。
今では、豬に四方を囲まれていても生き殘れる自がある。さすがに、八方まで囲まれたらやばいかもしれないが。
「すいません、ここら辺にいい狩場ってありませんかね?」
コウスケが思い立ったのは、それらしい人に聞くというものだった。とはいえ、あまりにゴリゴリのマッチョは怖いので、同じくらいの型の人に話をかける。
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「ん? 狩場かい、それなら地の方へ行くと良いよ」
その人はそう言って去っていった。
地といえば、草原の奧地にそれらしいものを見た気がする。
確かに、地は草原よりも危険が多いような気がするが、魔の危険もあがるのだろうか。とはいえ、せっかくの報なので候補にはれておく。
思い立ったらすぐ行というタイプではないのだ。その後も、數人に聞きまわる。
そして、いくつかの候補地が挙がった。
森、沼地、巖場、地下、地の五つだ。
「さて、どっちに行こうか」
まず沼地だと今の裝備では苦労しそうな雰囲気が漂っている。
泥が靴にって後悔しそうだ。
続いて巖場は、今のところ一番の候補だ。何より、環境に特徴があまりない。
そして地下だが、一番危険な香りがプンプンする。絶対、危ない奴がいるだろ。
無難なものとしては、地も挙げられるが、沼地と同じことになりかねない。
「森か巖場か」
行くなら巖場だが、森の方が一番近い。
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そして、RPGなら森に行くだろう。
「よし、巖場にするか」
定番なんてものはコウスケにとっては関係ない。
既に勇者落ちしている時點で、もはやRPGに當てはまっていないのだから。
自分でそう思っていると悲しくなってくるので、さっそくコウスケは巖場へと向かう。
「お、勇者様、どちらへ?」
「し巖場へ」
「特訓ですか? 勇者様たちはが出ますな」
「ありがとう、行ってくるよ」
町の門にいた騎士の人に聲をかけられ、返事をする。
今のところ、異世界人の中で勇者落ちが出たということは知らされていないようだった。
そもそも、存在すら覚えていないのかもしれないが。とりあえず、コウスケは騎士に見送られながら外に出た。
巖場へ行くには、草原を通っていくため、移中も當然魔と遭遇する。
道中のその戦闘もしっかりと経験値に還元されるので、一石二鳥だ。だが、ここで問題が起こった。
「へへっ、おい、これなんてどうだ?」
「ん? おお、いいな」
下種な笑みを浮かべる男二人。
その傍らにはが座り込んで怯えている様子だった。
この狀況を見過ごせるわけもないコウスケだが、問題はそこではなかった。
「そうだ、城に持ってかえって皆で味見するなんてどうだ?」
「それもいいな、でもよ、最初は俺らでやっておきたくね?」
「まあそうだな」
その男二人は、コウスケと同じ異世界人の奴らだったのだ。
彼らは、座り込んでいるを上から見下ろし、ニヤニヤと笑みを浮かべていた。
會話を聞く限り、人助けという雰囲気でもない。むしろ、の方は襲われていると思われた。だが、コウスケは悩む。
今の自分の狀態ではきっと彼らには適わないからだ。
そう思ったコウスケだが、試しに鑑定を使ってみる。
雑又 草木
レベル 5
スキル 強化 鑑定
猿梨 登
レベル 5
スキル 発 鑑定
二人のステータスはこんなじだった。
彼らも誰かにれ知恵されたのか、筋力などのパラメーターは見ることが出來なかった。
見たところで、自分との差に落ち込んでいただけなので、それは良しとする。
ステータスを見る限りでは、レベルはコウスケの方が上である。だが、スキルの數は一緒であり、しかも戦闘スキルのないコウスケにとっては不利である。
「なあ、早くやろうぜ」
「分かったよ、慌てんなって」
コウスケが考えているうちにも彼らは行を開始する。
男の一人が、の腕を摑み、もう一人が服をがしにかかったのだ。
は必死に抵抗するも、勇者である彼らの筋力には遠く及ばない。
「いや、やめて下さい!」
「うるせえ、黙ってろ」
聲をあげたは、男の一人にそう言葉を吐き捨てられ、目の前に剣を見せることで聲を封じた。
その景を見たコウスケは決心する。
「やめろ」
無謀なことは知っていた。
だが、このまま見過ごす方が、コウスケにとっては殺されるより苦しいかもしれない。そう考えた故の行だった。
「んん? 誰だお前」
コウスケの姿を認識した男の一人、草木はコウスケをコウスケだと認識していなかった。
どうやら、彼と面識がなかったようだ。
「何しにきたのかなぁ? 正義の味方気取りか?」
「離してやれよ」
涙目でこちらを見つめるを見て、コウスケは言った。
男二人は、そんなコウスケを見て笑いを吹き出す。
「っぷ、まさか、勇者の僕達に指図? 力も無いくせにいきがりやがって」
突如、草木の表が醜悪に満ちた表に変わりコウスケとの距離を詰めてきた。
彼のスピードはコウスケが今まで戦ってきたイノシシよりも早かった。
「ぐはっ、う……」
あっという間に懐にられたコウスケは、鳩尾を毆られる。
こんなにも実力の差があることにコウスケは絶する。確か、彼のスキルに強化という文字があった。
それの効力かもしれない。
「ってか、こいつあのコウスケじゃん」
「は? マジかよ!」
彼らはコウスケだと認識しケラケラと笑う。どうやら型の変化があったため、コウスケだと認識されていなかっただけらしい。
捕らわれているは、コウスケが二人にあっという間にやられてしまったのを見て、絶の表に変わってしまっている。
「おら、立てよ」
草木が蹲っているコウスケを蹴り飛ばして言う。
コウスケは拳を握り締めて立ち上がる。今はただただ自分の無力が憎かった。
その後も、ずっと草木に毆る蹴るの暴力を加えられ続ける。
「げほっ、ごほっごほっ!」
の味が口の中に充満し、そして何かがにつまりむせる。
草木は毆り飽きたのか、腰に差していた剣を抜き、コウスケへと歩みよってきた。
「おい、殺す気か?」
「當然だろ? ここは異世界なんだぜ? 殺しても罪には問われないさ」
ニヤニヤと笑みを浮かべたままコウスケの元へ近づいてくる草木。
そして、蹲るコウスケの前に來て言った。
「じゃあな、ゴミ」
そうして剣を上へ振りかぶった草木。
「っは」
コウスケはその隙を逃さなかった。
草木が剣を上に振り上げた瞬間、腰に差していた刀を抜き、草木の脛を切りつけたのだ。
「いつっ! くそが!」
思わぬ反撃に草木は足を引きずりながら後ろへ下がる。
「はぁはぁ、痛みには慣れてないか?」
ゆっくりと立ち上がったコウスケは彼らにそう言い放つ。
コウスケは、毎日のように毆られた経験を生かして、痛くない拳のけ方などをを持って覚えたのだ。
そして、痛がりかたの演技も完璧である。
「く、くそ! おい登、あいつを殺せ!」
草木にそう言われた登は、殺気立った目をこちらに向けて近づいてくる。
ステータスで、こいつは発というスキルを持っていたはずだ、とコウスケは思い出し、地面に手を付く。
「死ね、!」
登がそう言って持っていた剣を振るう。と、その瞬間、コウスケと登の間には人一人隠れられるような壁が現れた。
その壁は、登の剣が當たった瞬間、発した。
「くそっ、どこだ!」
発した壁は、いとも簡単に崩れるが、その発によって飛んだ土の破片は登へ襲い掛かる。
加えて、発によって生じた土煙はコウスケの姿を一時的に隠したのだ。
「ここだよ」
コウスケはすぐに登との距離を詰め、刀を振り下ろす。
本能的に危険を察知したのか、登はバックステップでそれを辛うじて避けた。
避けたとはいえ、登の左腕からは鮮がドクドクと流れ出している。
「っち、ゴミのくせに」
「登、あいつ魔法を使えるみたいだ、なら俺が魔法で援護する、お前は近接を頼む」
「分かった」
コウスケの様子を伺いながら草木は後ろへ下がり、左腕を切られた登は近づいてくる。
そこで、コウスケは狙い通りに言ったことを心の中で小さくガッツポーズを浮かべ、んだ。
「早く、立ち上がって! 逃げて!」
突然んだコウスケに、男二人はポカンとするが、すぐに思い出したように振り返った。
そこには、同じようにポカンとしたがいる。
急いで草木はの捕まえようとするが、足を切られていたため、立ち上がって走り去ったには追いつくことが出來なかった。
「あああああ、ぶっ殺す」
苛立ったように聲を荒らげた草木と登。ここから、コウスケの無謀な戦いが始まった。
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