コウスケは窟で仰向けになっていた。

隣には、コウスケより倍以上の長を持つ魔が死となって倒れている。あの最後の一撃で決著がついたのだ。今でもよく勝てたなと心底思う。

ハッキリ言ってしまえば勝てたのは奇跡に近かった。いくら強化を施したとはいえたかが人の。負ける可能の方が段違いに高かった。コウスケが勝てたのは強化という勇者のチートスキルに加え、そのスキルとの相乗効果が生んだ鑑定によって弱點部位が判明したこと、そして初めから痛んだで戦ったことによる痛みに対する無関心さ、捨て。それらが重なったことでギリギリの勝利を収めることが出來たのだ。むしろ萬全な狀態だったなら途中、痛みで怯み、そのまま死んでいた可能もある。それは不幸中の幸いだった。

現在のコウスケのは限界を超え、普通の人なら自分のを見てショック死してもおかしくない有様だった。そのこともあり、コウスケは起き上がれない。とはいえ起き上がれないのにはもう一つ大きな理由があった。

ペナルティー。特定のスキルを同時に複數使用した場合に起こる現象であり、強い力を持つスキルの同時使用の時に起こる可能が高くなる。場合によっては死に至るほどの痛みを伴い、そのまま死んでしまう事もあるのだ。ペナルティーはそれほど危険な現象だった。

コウスケはもちろん、このペナルティーについては神から聞いていた。そのため今までスキルを同時に使用したことはない。しかし今回はそうせざる得ない狀況に陥っていた。死ぬ可能があると聞いていたコウスケにしてみれば、それは大きな賭けだったのだ。

加えて限界までを使った結果として、全が引き裂かれるような痛みが襲い掛かってくる。それだけでも十分コウスケの生きる気力を奪うのには十分するほどだ。だがペナルティーはその痛みさえも上書きしてしまうほどだった。それは今までけてきた痛みでは形容できない。単純にが痛いという次元ではない。あえて例えるならば生命の幹が傷ついた。そんな痛みだった。

しばらくコウスケは乾いたうめき聲を発しながら、しかしかすと痛いで必死に耐えていた。

「はぁ……」

かなり長い時間が過ぎ、ようやくコウスケのペナルティーによる痛みは薄れてきていた。とはいえ、未だはボロボロのままであるため、それらの痛みは継続中である。

コウスケは顔をし傾けて、目の前に橫たわる魔を見つめた。魔を食らうことは慣れてきていたコウスケだったが、さすがに生を食らうということはしていなかった。しかしがかせない今、殘された選択肢は一つしかなかった――

「ステータス」

名前　高月助

種族　異世界魔人(最適化中)

レベル　30

スキル 隠蔽　鑑定　強化

「ごほっごほっ！」

ステータスを見てコウスケは思わず先ほど食べた片がをくすぐりむせてしまう。

レベルがかなり上がっているだろうと予想はしていたものの、まさかここまで上がるとは思ってもいなかったのだ。倒した魔は相當なものだったのだろう。

後は、変わるはずの無い種族が変わっていることぐらいだ。

だがとりあえず種族は置いておき、今は大切なスキルスロットを確認する。

『スキル「超覚」を作りました。裝備しますか？　空きスロットは2です』

今度は呆気に取られるコウスケ。思ったほどスキルスロットが増えていなかったからだ。ゲンジュが言っていたレベル10までが長期というのは、スキルスロットの上限値も影響するのだろうか。それなら納得できるのだが。

とはいえ超覚というスキルは、この窟にいる魔が必ず持っていたスキルである。ということはここで生きていくには必要不可欠なのだろう。と判斷したコウスケは早速スキルを作りだし、裝備し使用した。

超覚スキルの使用した覚は、コウスケが行った覚強化に近いものだった。だが強化スキルでは必ずついてくる他の覚については敏にはならない。

超覚スキルは強化よりは鋭くはないが、使い勝手が良いスキルであることは確かだった。

超覚スキルを得たコウスケは、大事な事に気が付いた。今も自分のの狀態だ。

両腕、両足はもはや機能せず、片目も潰れ、全骨折という悲慘な狀況だ。くことはまず無理である。當たり前だが、痛みも継続中である。

もちろんコウスケは人間である。腕が生えたり、傷が瞬時に治ったりなんてことはあり得ない。つまりこのまま力が回復するまでジッとしていてもけるようにはならない。と思っていたコウスケの脳に、あの機械的な聲が響いた。

『種族変化に伴い、消費スキル「更新」を所得しました。殘り30秒後に使用されます』

消費スキル、種族変化について々知りたいことがあったが、それよりもコウスケを驚かせたのは、そのアナウンスの有無を言わせない言いだ。加えての30秒と言う猶予があるのも張を増大させる。ジェットコースターの上っている期間の焦らされているあのじだ。

10秒、20秒と時が過ぎる。一何が起こるのか分からない。それも一層恐怖心を思い起こさせ、せめて痛くないことをむコウスケ。もう痛い思いは嫌だった。

そしてその時が訪れた。

『消費スキル「更新」が発します』

だが運命は無常である。

アナウンスと同時に襲ったのは痛み。形容できない異次元の痛みだったペナルティーとは違い、今回の痛みはちゃんとから発生しているということが分かった。だがその痛みはあの魔と無茶をしながら戦った時の痛みを遙かに超えていた。もはや死ぬんじゃないかというほどだ。

そんな痛みがから起こるなんて誰が考えただろうか。が引き裂かれ、焼かれ、捻じ切られる。それらの覚が同時に來ているような痛みだ。死んだほうがましだと考えてもおかしくない痛みだ。

――何故、こんな目にあわなければならないのか。

そもそもこんな目にあった原因は誰にある？

勇者、クラスメイト、學生、召喚した王族。全てが憎い。

だが力が足りない。

力がしい。全てを覆せるようなチカラガ。

あいつらを、理不盡を……コワスタメノチカラガ。

痛みの中でコウスケの心に芽吹いていた黒いが長していく。確実に芽吹いたそのは決して消えうせることはないだろう。

憎しみを抱きながら、痛みに耐え続けるコウスケ。

検討むなしくコウスケは痛みのあまり気を失った。