「うぅん……」

気を失ってからどのくらいの時間が過ぎただろうか。

元々が真っ暗なこの窟では、正確な時間を計ることなんて出來ない。

とりあえずコウスケはステータスを確認することにした。気絶する前に々変な言葉が聞こえたためだ。

「ステータス」

名前 コウスケ・タカツキ

種族 異世界魔人

レベル　1

スキル 隠蔽　鑑定　強化　超覚

『スキルスロットが足りません。外すスキルを3つ選択してください』

ステータスを開くなり言葉が脳に響く。その言葉が意味するとおり何故かレベルが初期化されていた。

「レベル1！？」

今までの努力が一瞬で無に返ったのだ。誰だって驚く。だがその聲は揺しているコウスケに考える暇を與えず、再び言葉を発した。

『スキルスロットが足りません。外すスキルを3つ選択してください。なお選択しない場合は全てのスキルが消失します』

先ほど言った言葉に今度は脅し文句が追加された。早くしろ。そう言うかのように。

「えっと、それなら隠蔽と超覚、鑑定で」

コウスケはさほど重要ではないと判斷したスキルを選択する。超覚に至ってはついさっき作ったばっかりのスキルなので複雑な心境になったが、仕方がない。

もしかすると今まで食べたものに原因があるのかもしれないが……キノコのせいだろうか？

何故レベルが戻ったのかは不明だが、レベルが1になったことで、スキルスロットが減ったということは理解できた。では他の値はどうなったのだろうか。それさえも戻っている可能が高いのは分かってはいるが、それでもしは上乗せされていてしいと思うコウスケだった。

名前 コウスケ・タカツキ

種族 異世界魔人

レベル　1

力 普通

魔力 異常

攻撃力　普通

防力　異常

敏捷力　普通

スキル　技能創造　強化

「……おい」

コウスケは表記されたステータスを見て思わず呟く。

レベルが1だった頃のステータスを正確には覚えていないが、かなり壊滅的だったという記憶がある。それに比べるとまし。いやかなり良い。本來であれば喜ぶべきなのだろうが、表記されたステータスがおかしいと思わざるを得ない仕上がりになっており、誰だってこんなのを見れば目を疑うだろう。

まず異常という言葉が褒められているのか貶されているのかまるで分からない。異常なほどあるのか、異常なほどないのか、はたまたそのものが異常狀態であるのか。たった二文字では判別がつかない。

とはいえ、ステータスそのものは前ほど壊滅的ではないと思われるので、コウスケは戸いながらも満足していた。

レベルの初期化、ステータスの意味不明表記。々分からないことがあるが、一つだけ確かな事があった。それは今までコウスケを蝕んでいたの痛みが噓のように跡形もなく無くなっていたのだ。

そのことについて考えられる理由は痛みをじなくなるほどの間寢ていた可能があった。だがそれでは飢、又は魔に食われるかして、今頃永遠の眠りについているはずだ。

今の狀態を簡単に説明できる便利な言葉がある。

死後の世界。

とても信じられないが一番納得できる。神だっていたのだ。無いとはいえない。

そんな事を考えながらコウスケは狀況を理解するために起き上がった・・・・・・。

そしてスキル『強化』を五に使い、の回りを確認する。先ほど外してしまったが、強化に似たスキル『超覚』を使うという手もあったが、あえてそれはしなかった。なぜなら改めての狀態を確認しようと思ったため、覚が鋭くなる『強化』にした。その思通り、強化を使った箇所の全ての覚が鋭くなる。だが気絶する前に襲ってきた痛みなどは一切なく、が健全であることを再確認することができた。

暗闇の中に薄っすらと様々な郭が浮かび上がる。その景は気絶する前の窟そのものだ。初めからこの窟と思われる場所が死後の世界であったならば、ここが死後の世界であるということは否定できないが、そんなことを考えていても先には進めない。コウスケはここを窟だと思うことにした。そして早く出するために、奧へ進むことを決める。

『強化』によって視界を得たコウスケ。一先ずこの空間から抜け出すべく、へ向かう。

その過程でも、小さな魔が地面を這っていたり、飛んでいたりしていた。そのため経験値としてしっかり役立てる。

の前に立つと、そのがかなり奧深くまで続いていることが確認できた。強化した視力でも行き止まりが見えなかったからだ。

そうして長い間痛みに耐えたこの空間からコウスケは出した。

「あれ？　そういえば……」

窟の。通路を歩いている最中、コウスケは先ほどからじていた違和。そのことについて、脳裏をよぎった。何か忘れている気がする。そもそも何であんなにあの空間で苦しんでいたのか。

「グルアアアア！」

もうしでそれが何か思い出せそうなところで、魔獣型の魔が現れた。殘念ながら鑑定スキルは手放してしまったので、そいつが何者かは分からない。

「全強化」

早速、全に強化を施し、この通路にる前に拾っておいた魔の骨を手にする。強化狀態で弾戦は愚作と考えての判斷だ。

その魔はすぐさまコウスケへと飛び掛る。それをコウスケはバックステップで避け、持っている骨を魔目掛けて振るう。

その骨は見事に魔に當たり、魔はあっという間に気絶した。

強化を使っての攻撃なので當然と言えば當然なのかもしてない。もちろんその骨を伝ってくる振はコウスケの腕に伝わり、強化による鋭い痛覚が襲うが、いまさらその程度の痛みに怯むコウスケではなかった。

トドメとして骨を魔へと突き刺す。

そしてカッと赤い目を見開くが、すぐに力盡きた。

橫たわる魔。このまま放置しても良いのだが、それはそれで勿無い気もする。とはいえを収納するようなものは持ち合わせていない。であればここで食うしか選択肢はなかった。

「ファイア」

ボオッと魔の死が燃え上がる。

てっきり、強化に加え、久々の源に目が痛くなると思っていたコウスケだったが、そんなことはなかった。どういうわけか、コウスケが発した炎は、というをほとんど発しない訶不思議な炎だったからだ。とはいえしっかりと熱を帯び、魔を燃焼させていることからそれが炎であることは間違いない。

コウスケは化學の授業で習った気のする炎のについて思い出してみる。だがそもそも魔法が存在するこの世界で、科學の常識がまともに通用するとは思えない。そう思ったコウスケは目の前で燃え盛る、赤黒い・・・炎をぼんやりと見つめていた。

「やっぱまずいな」

焦げた魔のを食べながら呟く。何も味付けをしていないため、素材そのの味がするのだが、その素材が決して良いではないため、結論としてまずいのだ。

以前の世界の食と比べたら、どの食事もこの世界ではし見劣りをしてしまう。一刻も早くえてしまった舌を改善していく必要がある。それを改めて思ったのだった。

食事を終え、窟の通路を進む。

そんなコウスケの頭には、先ほど脳裏を掠めた違和について考えていた。

「いてっ」

考え事をして歩いていたためか、コウスケはどう來るの巖へ腕を掠めた。

それはとても小さな痛み。生命に何ら影響しない痛みだ。

だが、その痛みがきっかけとなって、コウスケは思い出した。

「腕、足が……」

そうコウスケのには、なくなった筈の腕、引き千切れた筈の足が、何事もなかったかのようにそこにあったのだ。

気絶する前に聞いた「更新」という消費スキルが頭をよぎった。