《負け組だった男のチートなスキル》第二十一話 最深部にて
ここがこの迷宮の最深部だろうか。
幸い、通路が途中で途絶えているという最悪の事態だけは避けられた。
「だけど……」
最深部と思われるその場所には、小さめの空間が広がっていた。
中間地點にドラゴンがいたことを考えると、最深部にはドラゴンを超えるような強敵やら、珍しいアイテムなどがあると思っていたのだが、見事にそれらの希は奪われることとなる。
「何も無いってなんだよ……」
その言葉通り、この空間にめぼしいなんて見當たらなかった。あるとするなら石造りの古ぼけた臺座がポツンと置いてあるだけだ。他には何もないだけに、その臺座が異様な存在を放っている。あえておいてあるという事は何か意味があるのだろうが、コウスケがその臺座にれても特に何も反応しなかった。
「はずれか」
ボソリとコウスケは呟く。期待していた分、失は大きかった。だが、途端に臺座が振を始め、き出す。
その臺座は右にスライドし、臺座が元あった場所には階段が現れた。
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どこからどう見ても隠し通路である。つまり、ここの迷宮は未開の地ではなく、人が手を施した場所なのだろうか。
コウスケは好奇心の赴くままにその隠し階段を降りていく。
コウスケは恐怖心というに鈍になっていた。
階段は思ったよりも直ぐに終わった。
階段の先にあったのは、上の空間をそのまま小さくしたじの空間だった。だが、確実に違う部分がある。その違いを見てコウスケは口元を緩めた。
「武庫か」
コウスケが呟いた通り、この場所は武を置いておく場所のようだった。壁に掛かる剣や斧、槍。その他にも見たことのない武がそこにはあった。さらにその武は、素人目にも質の良いものであることが分かるほどだ。質では月の聖剣にも負けず劣らないと思われた。
そしてコウスケは現在武と言って良い武は持ち合わせていない。聖剣は返したし、迷宮に來る前に購した刀は手元にはない。どこに行ったのかは不明である。
だがコウスケが喜んだのはそれだけが理由ではない。
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「鑑定」
コウスケはすぐさまその言葉を口にした。
目の前に現れる様々な武の名稱。あえて例として、ひと際輝く白銀の剣を鑑定結果を出してみると、
名前 エクスリバース
創造者 ダリス・エドロン
分類 聖剣
スキル 反 浄化 発 鋭利
狀態    盜難防止
といった結果だった。
能は見ての通りで、聖剣の分類がされているところを見ると、月の持っていた聖剣と同じ格であることが予想される。さらに、コウスケの期待通り、格の高い武にはスキルが存在した。
何故コウスケがそう期待していたのか。それは月の聖剣を握ったときの違和からだった。魔族であるコウスケに拒否反応を起こしていたことや、いとも簡単にドラゴンに傷を負わせたところを考えると、あれも何らかのスキルがあったのだろうと予想していたのだ。生憎と、それを鑑定する時間がなかったので、確証は持てないが。
「ステータス」
次にコウスケは自分のステータスを開示する。
名前 コウスケ・タカツキ
種族 異世界魔人
レベル 40
スキル 技能創造 鑑定 強化 聖域
「よ、よんじゅう!?」
コウスケは目の前に表示されるステータスに驚愕した。レベルが初期化される前は確か25だったはずで、それに到達するのも結構な時間を要した。しかし現在のレベルは初期化された上でこのレベルだ。當然驚かないわけがない。
それにこれだけレベルが上がればスキルスロットもその分上がっているはず。そう思いたったコウスケは、まず外していた『隠蔽』『超覚』を裝備し直した。
『隠蔽、超覚を裝備しました。空きスロットは1です』
「まあいいか」
スキルスロットに関しては期待以上の増加は見込めなかったものの、自分のスキルをこれだけれられるというのは安心が生まれる。
ここでもう一つやることがコウスケにはあった。
それは、一つだけ空いたスキルスロットにどんなスキルをれるのかを考えることである。だが今まで見てきたスキルに特別魅力をじるものは、正直言ってなかった。ではどうするか。
その問いの答えは、もうコウスケが実行していた。
それはこの武庫にある魅力的な武を全て鑑定し、スキルを選別することだった。
先ほどの聖剣と同じように、他の武もスキルを持っているということは、既に確認済みである。
そうしてコウスケは、この場にある様々な武に鑑定をかけていった。と、そこでコウスケの視線がある武へと止まった。だからといってもその武のスキルが気になったわけではなく、
「槍か……」
その武というのも、黒でコウスケの背丈ほどある槍だ。
しかし鑑定結果では他の武と比べると地味だった。
名前 レイソウェイ
創造者 ドラン・エドロン
分類 unknown
スキル 隠蔽
武が隠蔽を持つメリットはいまいち分からないが、きっと製作者には何らかの意図があるのだろう。もちろん偶然このスキルがついた可能は否定できないが。
この槍は部屋の奧に置かれていた。見た目も他の武とは違って、派手ではない。このことから考えると、この槍は持ち主にとってさほど期待されていない武なのだろう。
この境遇にコウスケと似たものをじるが、武に同するほどコウスケの心には余裕はない。
だが、何故かこの槍がやけに気にってしまった。
勇者たちのイメージは剣である。なら勇者落ちした自分は剣を使わない。という子どもじみた反抗心に加え、剣を持った勇者と対峙したときを想定した時に有利になる槍のリーチの長さを理由にしてこの槍を拝借することに決めた。
と、脇道に逸れたが、今一番の課題は自分にどのようなスキルを付けるかだ。
再び武の山へ目を向ける。
どれも目移りするようなスキルなのだが、それは武であるからこそり立つようなものばかりだった。例えば、『鋭利』なんてスキルは、切るために作られた剣の効果が増大するもので、切る要素のない人にそんなスキルを付けたって、爪ぐらいしか強化されない。他にも、『』『発』『會話』といったスキルは武だからこそというところもある。
出來るならば、戦闘に役立つスキルがしいところだった。今のところ、『強化』のみでの戦闘方法しかできていない。これだと痛みを我慢しなければならないし、相當頑丈な奴には敵わない。まあ今はこの槍があるため、どうにかなるかもしれないが。
しばらく考えあぐねたコウスケだったが、ようやく一つのスキルに決めることができた。
『スキル「吸収」を作りました。裝備しますか?』
悩んだ末に選んだスキルは『吸収』という名前だ。鑑定によると、理攻撃以外の攻撃を吸収できるということらしい。ちなみに吸収された後は、放出型魔法であれば魔力に変換され、放出型のスキルであれば、一度きり使える消費スキルとなるそうだ。ここで重要なのが、放出型限定というところだろうか。つまり、理攻撃などは防げないということになる。
まあ今のコウスケは弾戦が主であり、足りていないのは遠距離攻撃対策だ。となれば今のコウスケには『吸収』はちょうど良いスキルであった。
その後、目についた道袋やちょっとした短剣などを取っておく。ここが誰の武庫なのかは知ったこっちゃない。こんな不用心なところに置いているのが悪いのだ。
「とりあえずこんなところかな」
満足げな表を浮かべ、コウスケは汗を拭った。ちなみに言うと先ほど盜った道袋はいわゆるアイテムボックスというもので、試しにドラゴンの骨や鱗をいくられても重さや大きさが変わらなかった。
ならここにある全部盜めばいいと思ったが、さすがに容量があるようで、ドラゴンの素材も全部はらなかった。さらに言えば、ここの武には盜難防止というスキルが掛かっているものが多く、どうしてもアイテムボックスにらないものがほとんどだった。
なのでコウスケが盜ったのは、アイテムボックスを含め、槍、短剣、の3つのみだ。どれも盜難防止のスキルがかかっていなかったことを見ると、持ち主にとってはさほど重要視されていない品なのだろう。だがコウスケにしてみれば、かなりの良品なのでありがたく頂戴させてもらった。
そうしてコウスケは久々の幸福に包まれながら、階段を上り、先ほどの空間に戻っていった。
幸い奧にもまだ通路がある。そして風が吹き込んでいることを考えると別の出口があるようだ。
コウスケはこれから自分がやる目標を口にし地上へ向けて歩みを進めた。
「目指すは魔王だ」
Duty
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