《負け組だった男のチートなスキル》第二十二話 地上

恐らく、もしものための出口であろう通路に差し込むを目指して進むコウスケ。風が顔を吹き抜ける。久々の乾いた空気に希を抱きながらコウスケは進んだ。次第にも明るくなってきおり、もうすぐ地上だということを実させる。

そしてついにコウスケの目に日のった。日の位置を見る限り晝頃だろう。

窟でどのくらいの時を過ごしたのかは定かではないが、それがとても久々にじ、同時に解放が沸き起こった。

「とはいっても、ここはどこだ」

深呼吸をして新鮮な空気を吸い込んだ後、コウスケは辺りを見渡した。そもそもこの迷宮がどこに位置する窟なのかが全く分からない。なので、この目の前に広がる山々と森に対してどう反応して良いか分からない。てっきり王都の近くにあるものだと思っていたのだが、見た限り人工は見當たらなかった。

「この世界の地理なんて知らねえよ……」

コウスケの目標は、この國と敵対していると思われる魔人族の國に行くことだ。目的地が決まったまでは良いのだが、問題はそこがどこにあるのかが分からないということ。そして一番の問題は、現在地がどこなのか分からないということだった。

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地球時代のマップの有難みが今更ながらじるコウスケだったが、それこそ今は葉わぬ夢である。

とりあえずここで立ち止まるのは愚策だと考え、森の方へ進むことにした。さすがに山を登ろうとは思わない。

自然の森は舗裝された道路なんてあるわけもなく、想像以上に歩きにくかった。目の前に広がる木々。そこに住まう蟲。地面に生える雑草。森獨特の空気。先ほどの解放が一瞬で無に返ってしまう。しまいには窟の方がマシだとじてしまうほどだ。

いっそのこと火を放って焼け野原にしてやろうかと、過激なことを考えるがそんなことをすれば自分もただでは済まない。逆に面倒くさいことになりそうだ。だとすると、単純に進むしかない。

森を進む過程で目の前で遮る草木などをコウスケは盜った短剣を手にして切り開いていった。ちなみにこの短剣のステータスは――

名前 シャーエイナイフ

分類 短剣

スキル 鋭利

見た目は結構綺麗な短剣だが、ステータスを見ると、あの武庫にあった武に比べるとやはり見劣りする。逆になぜこれがあの武庫にあったのか不明だが、こうして使用方法は違うが役にたっているので有り難かったりする。

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そうやって進んでいくと、やはり森という場所である以上、生きの住処であることは間違いない。

「グルルルル」

「食料発見」

コウスケの前に現れたのは、という分類にして良いかわ分からないが目の赤い獣、つまり魔が現れた。見た目は赤のオオカミの姿をしているが、やはり魔の特徴である赤の瞳を持っていた。普通なら魔に出會って喜ぶ人などほとんどいないのだが、コウスケは違った。彼は反対に舌なめずりをして笑みを浮かべていた。彼にとっての魔は脅威ではなく食料だった。

とはいえ、油斷をするとやられるのはこっちだということは知っている。

「グラアアアアアア」

オオカミが跳びかかってくる。

「おぉっと」

いて避けようとするコウスケだったが、なにせ足場が悪く、つまずきかねない。そのためコウスケは避けることを諦め短剣を構えて、跳びかかってくるオオカミに対して短剣を突いた。

「グラアア」

見事にコウスケの短剣はオオカミのを貫いた。ただコウスケの腕も牙によって切り傷が生まれたが、今更この程度のケガでは怯むわけもなく、顔一つ変えずコウスケは水魔法を唱え、腕を洗い、オオカミの死に向き直る。

「このままるかな」

コウスケはオオカミの死を摑み上げ、腰に攜えている袋を広げてれようと試みた。試みただけで結局は食べるのでまた出すのだが、生ものもいけるのか確かめたかったのだった。

結果はれられた。腐るかどうかは分からないが、腐るまで生ものをれて置く気もないので今は良しとする。

とりあえず今はオオカミを食べるために、周りの草木を刈り、座れるようにする。そしてオオカミのをむしり、抜きをしてあの言葉を呟く。

「ファイア」

もはやお馴染みとなった黒い炎でオオカミのを焼いた。元から薄暗い森だったが、いつの間にか日も暮れてきており、野営する準備をしなければならない時間帯になっていた。

迷宮では、特に何もせずに『聖域』を発させるだけで済んでいた。『聖域』を習得する前は適當なを見つけてはそこに丸まって寢転がった。ならここ森でも『聖域』を使用して寢ればいいのだろうが、『聖域』に雨風しのぐ効果なんてないし、ここは迷宮に比べて気溫の差が激しい。せめて窟の一つでもあればいいのだが、生憎、周りには木しか見當たらない。

この際、このまま寢ないという選択肢も見えてくる。コウスケはしっかりと寢たい派なのだが、途中で起きるのもそれはそれでしんどい。

「とりあえず食うか」

し考えすぎている間にオオカミのが焦げかかっていたので、早めに口に移した。相変わらず素材本來の味しかせず、まずい。贅沢を言っている場合ではないのだが、やはり地球の飯がしくなってしまうのだった。

それからしばらく経ち、辺りも真っ暗闇になっていたころ、コウスケは歩いていた。この暗闇でも歩ける理由は、『超覚』スキルを発させているからである。五全てが研ぎ澄まされるため、この暗闇でも十分に歩けるのだ。あの迷宮に比べればこんな暗さは可いものだった。

「にしても何もねえな」

暗闇の中コウスケの聲が響いた。

この世界の文明レベルがどれほどなのかまだ把握していないが、このあの一國以外の人間すべて森の中に住んでいるなんてことは考えにくい。もしそうなら勇者なんて呼び出す必要もないのだから。ならば、歩いていけばいつかは人里にたどり著くのだろうが、一向にそのも匂いも音もじない。

歩いてまだ一日程度なのだから希はあるが。

そしてまた一日。また一日と時間が過ぎていく。だがいつまでたっても木、木、木。もはやここからこの世界を一周するまでずっと森なのではと言いたくなるぐらいに森だった。それに加え、魔はちゃっかり襲ってくる。食料になるから良いものの、経験値にもほとんどならず、たくさんに出てくると持ち切れず邪魔になる。そして襲ってくるのが本當に面倒くさかった。

「いっそのこと燃やしてしまおうか」

苛立ちもピークに達し、危ない発想を口にする。もちろん冗談半分であるが……もう半分は言うまでもない。

「……ん?」

コウスケの嗅覚が何かを捉えた。これは木や魔の匂いではない。どこか嗅いだことのある匂いだ。

その匂いを辿ってコウスケは進行方向を決めた。さすがにには劣る嗅覚だが、どこから匂っているのかぐらいは分かる。『強化』を使っても良いのだが、強烈なにおいを嗅いで悶絶なんてしたくないからやめておいた。

そんな時だった。どこからともなくび聲が聞こえてきたのは。

「きゃあーーーーー!」

今のコウスケに人助けをする気持ちは微塵もない。だが、人がいるということは人里が近くにあるということになる。ならば、助けて場所を案してもらえばいい。という結論に至りその聲のする方へ進んでいった。

その場所にたどり著くと、上品ななりをしたがオオカミの魔が襲われているところだった。

あまりにも場違いな服裝に呆れかえるコウスケ。

ますます助ける気がなくなってしまった。

「きゃあ、誰か、誰か助けて!」

は今にもオオカミに咬みつかれそうだ。

コウスケは、「はぁ」とため息をつき道袋から槍を取り出す。せめてこの行為に意味を持たせたかった。槍の能を試すという名目で。

思い切り振りかぶりコウスケは槍を投げる。投げ槍かどうかは知らないが、思いついたのでそうしただけだった。

槍はオオカミの方へ飛んでいったが、命中せず、オオカミとのちょうど間の地面へ突き刺さった。

ビクッととオオカミがを震わせこちらを向く。槍を外したわけだが、結果的に注意を逸らすことは功したようだ。だが槍で仕留めたかった手前、やる気が全く起きない。

「あぶない!」

がコウスケへんだ。

どういうわけかオオカミはコウスケへと狙いを変え、襲い掛かってきていたのだ。加えてコウスケの無気力な様子を見て、注意を促したのだろう。

せめてあの槍が戻ってきてくれたらやる気が出るのだが。

「お、おぉ」

コウスケの思いが通じたのか、槍がひとりでに地面から抜き出され、宙へ浮いてコウスケの元へ飛んできた。

が何らかの魔法を唱えたのだろうか。

「おし」

途端にやる気が沸き起こり、コウスケは口を開けて跳びかかってくるオオカミの口、目がけて槍を向けた。

槍は見事にオオカミを貫く。足りなさが半端ではないが、もう相手がいない。をチラリと見るが、首を振ってその考えを打ち消した。狂人になる気は頭ない。

「助けてくれてありがとう」

謝の気持ちを伝える。コウスケはその好意を無駄にしないようすぐさま要件を伝えた。

「ああ、お禮として頼むが迷子なんだ。町を案してくれないか」

「それは大変ですね! すぐさま案します」

は輝く笑顔をコウスケへ向け、コウスケの手を取り道を進めた。上品な服を著ていることから貴族だと思っていたのだが、自分で評価しても汚いコウスケの手を握るあたり貴族には思えなかった。

「私の名前はマリー、あなたは?」

全く人見知りのしない質らしい。

とはいえ、本名で名乗っても良いものか。と一時悩むが今思えば自分はそこまで有名じゃない。

「コウスケだ」

「コースケ? 変わった名前なのね」

初対面の人の名前を聞くばかりか、変だと言うにコウスケはピクピクよ目を震わせた。どうにもこういうマイペースなタイプは苦手である。

「気に障っちゃったかしら? 別に貶したつもりじゃないの」

「い、いや、気にしてない」

その後すぐにマリーの案によって人里にたどり著いた。

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