《負け組だった男のチートなスキル》第二十九話 正義の味方
「はは、殺しろ!」
登の勝ち誇った笑み。
だがいつまでたっても彼の想像していた未來は起こらなかった。
「な、なんでだよ」
當然戸う登。コウスケは石を握ったまま顔を伏せていた。し震えているのも確認できる。だがその震えは脅えているわけではなかった。
「っくっくっく、ハッハハハハ!」
堪えきれない笑いがコウスケの口から放たれた。
ついでに手に持った石を登へ見せつけるように前へ突き出した。
「何で発しないんだよ!」
喚く登に折角だから答えを告げてあげた。
「『吸収』、俺のスキルだ」
「な、なんだよそのスキル」
「知らなかったのか?」
意地悪い笑みを登へ向ける。登は知るわけがないのだ。コウスケのスキル欄は『隠蔽』で隠されているのだから。
「何で俺がこんな奴に」
「現実逃避は死んでからにしてくれ」
手に持った石を投げるモーションにる。「ひっ」とけない登の聲が聞こえ、コウスケは笑みを浮かべたまま左手、つまり槍の方を登へ投擲した。
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このまま行けば脳天に直撃コースである。しかも奴はそれを避ける気力さえないようで、脅えた顔でそれをただただ眺めていた。
だが今度はコウスケの予想した未來が未然に終わった。誰かの手によって。
槍が普通ではあり得ない方向へ逸れたのだ。しかもいもの同士が當たった音を発しながら。
「誰だ」
「名乗るほどのもんじゃあないが、敢えて言うなら勇者だ」
「お、お前は……」
登のすぐ橫の茂みから一人の男が現れた。こいつも登と同じ黒髪。つまり異世界人だ。
だが登の驚きようを見るに、奴が助けを呼んだわけではなさそうだった。何てタイミングの悪い。舌打ちしながら現れた異世界人を鑑定する。すると、コウスケの表は余裕の表から困のものへと一変した。
「……っ!」
名前 神無月 勝利
種族 異世界人
レベル 35
スキル 神剣 幸運 通知 正義 鑑定
コウスケが揺するのも無理はない。彼が登よりレベルが高いから? いいや違う。彼のスキルが明らかに強そうだから? いいや違う。彼は、以前から助の味方だった男だからだ。月とは違い、行でもそれを証明していた男。それが彼だ。
「登先輩、大丈夫ですか?」
「あ、ああ」
「魔人、なぜこんなことをする」
幸い勝利は、助のことをただの見知らぬ魔人と思っていた。それならやりようがある。
「そいつがやったことを知らないのか?」
「なに?」
念のためにに『強化』を施し聲を変えて勝利の関心を惹く話題を投げかけた。登が何かを言いたそうに見てくるが、今はる余地はないと思ったのだろうか、黙ったままだ。
「こいつはこの付近を荒らす盜賊団を裏でってやがったんだよ」
「……本當か?」
「ああ、そこにいる男は辺境伯様だ」
すっかり存在を無くしていたルイモンド辺境伯に振る。そんな時こそ証拠が必要だ。彼が辺境伯の顔を知っているかは分からないが、辺境伯は拘束されている。この現場を見ればただごとではないことぐらいは伝わるだろう。
「失禮」
勝利はすぐさま辺境伯の元へ寄り拘束を解いた。そして視線を合わせて口を開く。
「ごほっ、助かった」
「辺境伯ルイモンド卿ですか?」
「ああ、そうだ」
驚いた。勝利は辺境伯の名前を知っていたようだ。
「辺境伯をこんな目に……では、彼が言った事は本當なんですね?」
勝利はコウスケの方へ目線を向け言った。辺境伯にどんなイメージを持たれているかは知らないが、危害が加えていないし、マリーと一緒に逃げるところも目撃されている。まず味方だということは伝わっているはずだ。
「ああ、相違ない」
「……そうですか」
勝利は辺境伯の言葉を聞いた後、を噛みしめた。同族の男の悪行に心を痛めているのだろうか。
「君、名前は?」
勝利はコウスケへ名前と尋ねた。とはいえ本名を言う気にはなれなかった。
「鑑定したらいいじゃないか」
「僕の信念に反するんだ」
「そうか、俺は……アヴェンだ」
「アヴェン……分かった、今回のことはこちらの不祥事みたいだ。済まない。あとの始末はこちらに任せてくれないだろうか?」
適當に思いついたアヴェンジャーから取った名前だったのだが、勝利はそれを信じ、仕舞いには謝罪までしてきた。この男は相変わらず正義溢れるようだ。
だがこのまま見逃すわけにもいかない。
「いや、こちらも被害は被ってるんだ、ただで見逃すわけがないだろ」
「それもそうだが」
コウスケの言葉に勝利は渋い顔をし考え込んだ。考えがまだ甘い。
「では、何がしい?」
「そいつの命だ」
コウスケは槍を手元に戻しながら冷めた口調でそう言い、登がビクッとを震わせる。こいつは助かったとでも思っているのだろうか。
「それは……同意できないな」
「なら、逆にお前は何が出來る?」
登を庇ったばっかりにとばっちりを食らう勝利。彼には世の中、正義だけではまかり通らないことを知るべきだ。
「俺は……」
案の定、勝利は言葉に詰まる。それもそうだ。この世界に來て一年も経っていない狀況で、命を駆けた取引なんて一介の高校生が出來るわけもない。
そこで奴がいた。
「どけ! 死ねえぇ!」
勝利を弾き飛ばし立ち上がる登。手には予備として持っていたのか、剣が握られていた。またあれを投げて発させるつもりのようだ。
「させるかよ」
コウスケは登が何かを考えていることに気が付いていた。ちょくちょく勝利の顔を窺っていたのが見えたし、何より道袋に手をれたのが見えていた。それ故、コウスケは登が剣を投げるより一手早く、槍を投げた。
「あああああ、手がぁ!」
コウスケの投げた槍は見事に登の右手を貫き、後ろの木へ突き刺さる。
「これでも俺はあいつを殺したらダメなのか?」
コウスケは座り込む勝利へ言葉をぶつける。
「……ダメだ」
「はぁ、何でだよ」
「俺の前では誰も死なせない」
「戯言だ」
「知っているさ、だけど俺はそれが出來る力を持ってしまったんだ」
「傲慢だな」
「それでも俺は、俺の剣は誰かを守るために振るう」
「……そうか」
これ以上話しても押し問答になると判斷した。こんなにも勝利が頑固だというのは初めて知った。
「お前の気持ちは分かった」
「じゃあ……」
顔をあげる勝利。その顔には若干の希のが燈っている。
「だけど、そうだな……俺の槍は殺すために突くんだ」
「そんな……」
勝利の顔が一気に暗い表に変わった。止められないと分かってしまったのだろう。友のそんな顔は見たくはないが、奴には正が知られてしまっている。このまま逃せば復讐に來るに決まっている。
コウスケは槍を手元に戻した。
「分かった、お前に免じてこれで手打ちとしよう」
コウスケの言葉に、勝利と登が顔を上げた。
コウスケの手には先ほどの石が握られている。コウスケはその手を振りかぶり、そしてそれを登へ投げた。
勝利は止めようと思えば止められたのだろう。だが石であることと、これを遮ってしまえばまた渉をしなければならないという思いからか、止めることはなかった。
そして、登の目の前に石が飛んでいく。コウスケの口角が上がる。
「ぜろ」
呟きと共に発音が響き、風が辺りを襲う。
そう、この現象は登のスキルによるものだ。『吸収』スキルによって登の『発』を消費スキルにストックしていたため、同じ蕓當が出來たのだ。
「そ、そんな」
絶に染まる勝利の顔。この責任は彼にもあるのだ。止められたのに止めなかったという罪が。
「あ、ああぁ」
殘念ながら登は生きていた。以前の面影がないほどに痛々しい姿になっていながらも聲を発している。
「やっぱ、練習が必要だなぁ」
コウスケはそう呟きながら振り返り、歩いていく。もはやここにいる理由はない。
「アヴェン……君は」
「俺はこれからも殺すために槍を使っていく、お前の剣は守るために使うんだろ? せいぜい頑張れよ」
そう言ってコウスケは森の中へ消えていった。
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