《負け組だった男のチートなスキル》第四十一話 粛清

「ファイア」

ナリオスの家に火を放つコウスケ。メラメラと燃え上がる赤黒い炎に照らされるその顔はひどく暗い笑みを浮かべていた。

そんなコウスケの前で家は燃え続ける。その中にいた男達、死も巻き込んで。例外なく燃やし盡くした。

とはいえコウスケはただ思いつきで家を燃やしたわけではない。こうすることで計畫に何か予想外の事態があったということを、里の皆に伝えるためだ。

それで今の時間起きて出てくるような人は、元々この計畫に攜わっていた可能が極めて高い。そもそも里全が仕組んだことならばどうしようもないが。

「な、なんで家が燃えて……」

早速、村人Aが現れた。

「お、お前は……」

こちらに気づいた村人Aは驚きの表で佇む。やはり事を知っている奴だったようだ。

「じゃあな」

ただ一言そう告げて槍を投げる。あっという間もなくその人を槍は貫く。人のがこれほど脆いとは。

悲しげな顔で槍を男から引き抜く。男は絶命していた。

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「簡単だな」

それから何人殺したか、數えるようなことはしなかった。

目の前に広がる景は地獄絵図そのものだ。

ついこの前まで人が賑やかに祭りを催していたその村には、人、人、人の死がたくさん橫たわっている。どれもコウスケが行ったことなのだが、どこか他人事のようにじてしまう自分がいることに気づいていた。もはや自分にとって人殺しは問題解決のための一つの手段になってしまっているということなのだろうか。

以前では考えられないその危ない思考回路を自覚し、やはり他人事のように自分のことを危険人だと評価するコウスケがいた。

「後は……」

に返りを浴びながら呟いたコウスケは走り出す。

目的地は一つだった。

「な、何で……」

森の中に額に汗を浮かべる老人。ナリオスが真っ青な顔で呟いた。

「言ったじゃねえか。気が変わる前にって」

「だから直ぐに……」

「気が変わった」

そう一言。

「ふ、ふざけるな!」

「言った事は守らないとな」

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しずつ後ずさるナリオス。だが彼も分かっているはずだ。この男からは逃げられないということを。

「返せよそれ」

ナリオスが手に持っていた袋を見てコウスケは告げた。正直忘れていた。

しかし自分の命に危機が及びながらも、道袋をちゃっかり持ったまま逃げるナリオスは逆に心してしまう。村人の命よりもたった一つの道袋を選ぶとは。

「返したら見逃してくれるのか?」

「考えてみるさ」

ギュッと袋を握って探るようにコウスケの表を見るナリオス。今更そんな換條件がまかり通るとでも思っているのだろうか。

「や、約束しろ」

「はぁ、何でそんな面倒なことを」

ナリオスの態度に呆れかえるコウスケ。いくら渉道を持っていてもこの力の差、立場の逆転はあり得ない。今のコウスケなら殺してから後で回収しても良いのだから。

「……殺すぞ」

「っ!」

その呟きと共にナリオスがビクッとを震わせた。これで自分の置かれた立場を理解してくれたのなら嬉しいが。

「こ、これならどうだ」

ナリオスは指先から火を燈し道袋に近づけた。まだ脅すつもりらしい。

「はぁ」

関心を通り越して呆れるほどこの老人は生への執著が強い。何もそれが悪いことだとは言わないし、誰だって生きたいと思うのは當然だと思うが、こうも自分の立場を分かっていない態度を取られ続けるのは癇に障る。

「もういいよ」

しかもあの道袋に大切なものはっていない。強いて言うなら、一番価値のあるのはその道袋そのものだ。袋の中は今まで何となく拾ってきた魔の鱗やら、牙などの素材ぐらいだけで、ハッキリ言ってしまえばそれら全てを失っても構わなかった。

「ま、待て! これがどうなってもいいのか!?」

「いいよ、燃やせば?」

「っく」

ナリオスは何故か燃やすのを戸った。コウスケには道袋がどれほど貴重なものなのかは偶然拾ったものであるため実は湧かないが便利なのは確かだ。もしかするとかなり珍しい高価な品なのかもしれない。

となるとやはり燃やされるのは惜しくなってきた。

そうじたコウスケは速かった。すぐさまナリオスとの距離の差を詰める。

「ひっ!」

後ずさるナリオスの腕を摑み逃げられないようにする。もう託ははこりごりだ。

「じゃあな、楽しいひと時を有難うございます」

今出來る最高の笑顔を浮かべてコウスケはナリオスへ告げた。

偽りの顔で自分を利用していたとしてもあのひと時は、久々に人らしい生活を送れた。それだけでも謝に値する。

「あぁ、そうだそうだ。聞いておきたいことがあったんだ」

「な、なんだ?」

コウスケは元にばした手を止めてナリオスへ言葉をかけた。

「今回の事、初めから仕組んでいたんだろ? 一何処からなんだ?」

「は、初めからだよ。お前がこの國に紛れ込んだ時からだ」

思ったよりかなり前から標的にされていたらしい。となるとこの里を案したあの門番的な年もグルだったというのだろうか。

「そうだ、あの里自が我々の本拠地なんだ」

「本拠地? 一お前らは何なんだ?」

思ったより話が進んで質疑応答をするコウスケ。ナリオスも命の危険からかペラペラと言葉を話し続けた。しでも命が助かる最善の行を分かっているのだろう。

「我々は……」

「言え」

突然口ごもるナリオスに厳しめの言葉を投げかける。

「我々は、エルフ族のためのエルフ族だけの國を創ることを目的としている団だ」

「要は、他種族排斥派ってことか」

「か、簡単にまとめよって……」

「どうして、他種族が嫌いなんだ?」

「どうして? 我々は他種族が嫌いなのではない。エルフ族こそが真の人族。それ以外はも同然。だがそれにも関わらず、エルフ族は長耳族と呼ばれ、他の種族と同じ人屬として括られている。しかもだ、アルカナ連合とかいう括りで、野蠻な獣人たちやな小人族と一緒に國を創っていくだと? ふざけるな!」

長々と熱く語るナリオス。後半どうでもよくなって欠をしていたコウスケだったが、まとめると、こいつらは他種族がとことん嫌いで、しかも自分たちの種族が他よりも優れていると言いたいそうだ。ハッキリ言ってどうでもいいし、傲慢の一言でまとめられる。愚かだ。

「他種族が嫌いなのはよーく分かった。なら、正々堂々と決闘で命を懸けようじゃねえか」

「何を……?」

「簡単な事だろ? エルフ族は他の人種よりも秀でているなら魔人族なんかに負けるわけねえじゃねえか」

「な、なめよって」

ナリオスに発破をかけて提案を呑ませる。問答無用で殺しても後腐れないのだが、こういった傲慢な奴は一度完全な敗北を味合わせてやりたい。と昔から思っていたことだ。

今のコウスケには、ナリオスにあの勇者たちの面影が被っていたのだ。

「良いだろう。我が同胞を殺した罪、エルフ族を侮辱した償いを果たさせてもらう!」

コウスケが手を放した瞬間にナリオスは瞬時に距離をとった。

そして手をこちらに向ける。

「魔人族には理解できまい――リーフウィンド!」

ナリオスの手のひらから放たれる、つむじ風。それもただのつむじ風ではないようだ。々な植の蔦などを巻き込んでいる。

「そんな使い方も出來るのか」

正直心した。今までただの風を起こす魔法は使ったことがあるのだが、ここまで工夫して魔法を使ったことはない。

観察するとあの魔法は一度風に捕らわれると次々と蔦が絡まりきが取れなくなるようにできているということが分かる。本當に良く出來た魔法である。

ただ當たればの話だが。

「グラウンド」

地面を目の前に出現させその風を遮る。あれほど複雑に構されていたナリオスの魔法は、コウスケによって出されたただの土壁によって、跡形もなくかき消されてしまった。

「クソッ! まだだ。ライトニングバースト」

先ほどと同じようにナリオスはこちらに手を向けたまま、何か魔法の詠唱のような言葉を発する。

すると次第に手の平が輝き始め、特徴のある音が鳴り響き始めた。あれは雷魔法か。

「グラウンド」

次も同じように地面を盛り上げてナリオスの前に出現させるコウスケ。ただこの土壁はナリオスの四方八方を防ぐ形にして、完全に視界を奪うようにした。

遅れて発音が響く。ナリオスの雷魔法が放たれたのだろう。だが生憎とコウスケの土壁を貫くことは出來なかった。

「ま、魔人族がここまでの魔法を……」

「だから魔人族魔人族、うるせえなぁ」

「何が言いたい!」

「鑑定でもしてみればいいじゃねえか」

「何だと?」

ナリオスが『鑑定』スキルを持っていることは確認済みだ。

最初からしておけば良かったのに。という指摘は今はしないでおこう。

「い、異世界魔人!?」

予想通りのリアクションだ。

「じゃあ続きをやりましょうか」

コウスケは不気味にる赤黒い瞳でナリオスを見て言った。

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