《負け組だった男のチートなスキル》第六十話 偉大な父の息子

あれから數日もの間。

コウスケはこの騒が治まるまで安靜という名目で、実質的に個室に監されていた。

ただコウスケも事を察しているので、怒るようなことはしない。

それにちゃんと食事を持ってきてくれるので、別にこのままでもいいのでは、と思うほどには居心地は良かった。

まあそんなワケにもいかないのが、コウスケの人生なのだが。

そんなコウスケの元に訪れる者がいた。

「コウスケさん、父から伝言を頼まれてきました」

小人族の長の息子であるドランだ。

ドランにはあの泣きんだ後、父にどうにかして會えないかと尋ねてみた。

以前に尋ねた事はあったのだが、あの騒があったのだ。

忘れてしまっている可能も否定できない。

そう思ったコウスケは改めて尋ねたのだ。

その件について、ドランは何とかしてみるといってくれた。

その返事が今日のこれだったのだ。

「何だ?」

コウスケは早速尋ねる。

これで自分の人生が決まるともいえる答えなのだ。

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「はい、父が言うには、この騒が治まり次第謁見する場を設けるといっていました」

「この騒が治まるまでか……」

隨分と待たされた挙句、またお預けを食らう形となったコウスケ。

彼の心は沈んだ。

また待つしかないという事実は、辛いものがあったのだ。

「すいません、僕の力ではこれが一杯で」

「いや、いいんだ、會う約束が出來ただけで大きな進歩だからな」

ドランが謝罪してくるのを、コウスケは手で制してそう言った。

流石にここまでしてもらって、まだ足りないとは言えなかったのだ。

コウスケもそこまでは鬼ではない。

ここでわがままを言ってドランからの信頼を失う方がデメリットが大きい事ぐらい分かっていた。

それからまたまた數日後。

とうとうこの日がやってきた。

「コウスケさん、お待たせしました」

「やっとか」

ドランがテンション高めでコウスケに會いに來た。

コウスケの方も待っていたとばかりに立ち上がる。

「はい、では案します」

「お前だけか?」

コウスケはそう疑問を口にした。

流石に今から種族を治める長の元へ行くというのに、護衛もなくていいのか、素直にそう思ったからである。

ドラン一人で案するということは、コウスケがもしどこかの刺客で長を暗殺するために潛していたとすると、この警備はあまりにも手薄なのだ。

コウスケは逆に心配になった。

自分自、小人族という種族に対して若干の信頼はあの騒で得られたとは思っているものの、ここまでとは思っていなかったのだ。

つまりこの警備の薄さが逆に怪しく、罠のようにじてしまっていた。

「はい、変に警備をつけるのもコウスケさんが嫌がると思って」

その言い方からすると、警備が誰もついていないのは、ドランが提案したからと取れた。

確かにそれなら、納得ではある。

「お前が護衛はいらないっていったのか?」

「はい、そうですけど……ダメでしたか?」

「いや、ダメじゃないんだが」

流石に手薄すぎるだろ、とコウスケは思ったがいえなかった。

ここまで自分を信用してくれている相手には強く言えなかったのだ。

コウスケにもまだ溫が殘っている証拠である。

「では行きましょうか」

「ああ」

ドランに連れられてコウスケは數日振りに部屋から出た。

とはいえ、部屋の外も地下であるため太はない。

そのため特に部屋から出たところで、何も新鮮味をじる事はなかった。

ドランの後を続く。

どうやら本當に騒は治まっているようだ。

人通りがあまりない。

それにたまにコウスケと目が合うものがいるが、特に反応をしないのだ。

しかしたまに反応する者がおり、そう言った人はコウスケへと近寄り、

「ありがとうございました!」

と言った合にお禮を言われるのだった。

もしかしなくてもあの時、あの場所にいた人だろう。

コウスケは戸いながら會釈を返す事しか出來ない。

お禮を言われなれていないということもあるが、何より自分は騒を起こした張本人として恨まれていると思ったからだ。

自分達とは違う種族の人間に罪をなすりつけ、騒を治める。

それが一番簡単で、効率の良い騒の治め方なのだから。

しかしこの様子を見るに、小人族の長はそういったやり方をとっていないようだった。

だからコウスケは驚いたのである。

「お前の父はどうやってあの騒を治めたんだ?」

「え、そうですね……ひたすら被害者の方々へ直接謝罪しに行ったくらいでしょうか」

「直接……謝罪?」

それは到底信じられないことだ。

「はい、父はそう言ったことはしっかりする格ですので」

なんてことないとばかりにドランは口にする。

コウスケは開いた口が塞がらなかった。

國の代表が國の騒に謝罪をすることは當然である。當然ではあるが、それはあくまで會見などの場で行い、被害者たちへ間接的な謝罪を行うことが普通である。

なのにここの長は直接謝罪しに回っているというのだ。

驚かないわけがない。

「人格的に優れた父だな」

なのでコウスケは素直な想を口にした。

「そう……でしょうか」

しかしドランはあまり嬉しそうではなかった。

それもドランの生い立ちを知っていれば何となく分かる。

父を認めることは、自分を否定することになるのだ。

ドランは父に認めてもらえなかったのだから。

「ああ、そうそう出來ることじゃないはずだ」

ドランは難しい顔で何も言わなかった。

「それにそんな父を持ったって事は、いつか越えるべき壁として目標が立てやすいじゃねえか」

「え?」

「子は親を超えていくもんだ、だからお前もあの偉大な父を超えられる人になれるさ、きっとな」

「僕が……父を……」

これでひとまずドランに自信を持ってもらおう。

このまましんみりとした空気、コウスケには耐えられそうになかった。

それに言った事は全て本當に思ったことだったのだ。

何も勵ますためだけにでまかせをいったわけではない。

「だからを張れ、俺はお前の槍を認めてる」

「コウスケさん……」

「ま、気にしすぎんな」

コウスケは自分が臭いセリフを吐いていることに気づき、苦笑いを浮かべてドランの頭に手を置いた。

もうこれ以上は勘弁してくれ、と言わんばかりに。

「ありがとうございます」

「いいって」

ドランからの謝の言葉にコウスケは苦笑いで返す。

恥ずかしくてたまらなかったのだ。

だが相手はあのドランだ。

そのやり取りは、目的地に著くまで続いた。

見ればし大きな扉が目の前にあった。

「著きました」

「……やっとか」

何だか距離以上に疲れたとじるのは気のせいではないはずだ。

全てはドランのせいである。

「では行きましょう」

ドランがその大きな扉をノックする。

「ドランです、父上」

堂々とした言い。

これは元からなのか、それともコウスケがさっき飛ばした激勵のおなのか、今までが知らないコウスケにとっては知る由もないことだが、何だかその長を嬉しくじていた。

「ドランか、何用だ」

「魔人コウスケを連れてまいりました」

「良かろう、室せよ」

「はい」

アポを取っていたはずなのだが、このやり取りは便宜上必要なのだろう。コウスケはそのやり取りをそんなじに冷めて分析していた。

ただれる事には変わりない。

とうとう念願の三大長の一人と謁見できるのだ。

「失禮します」

コウスケは一応の禮儀としてそう言い、扉を潛った。

中は思いのほか平凡で、比べてはいけないのだろうが、王城とは大違いだった。

これは今の代の長の意向なのか、それとも伝統なのか。

そんなことはコウスケには分からないが、ただ一つだけ言うならば、あの王城よりは好が持てるとうう事だ。

あんな豪華な建を建築するには並大抵ではない大量の資金が必要になる。

それはもちろん民から巻き上げた稅金。

それを民のために使うのではなく、自分の威を示すために使っているのを見て、気分の良くじるわけがなかった。

それに関してはここの君主は立派である。

コウスケはそう思い、今謁見を行う。

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