《二つの異世界で努力無雙 ~いつの間にかハーレム闇魔法使いにり上がってました~》さあ、暴れる時間だ

やけに靜まりかえっていた。

普段は車の行きう大通りだが、なぜか人の気配がまったくじられない。

しんしんと響きわたる蟲の鳴き聲だけが、やたら大きく耳に屆いてくる。

その靜けさがなんとも禍々しくじられてならない。まるで異空間に迷い込んだかのようだ。

警察署。

俺と高城は、門の手前で周囲のようすを窺っていた。

まだ夜の九時だというのに、店舗や住宅等からがない。すでに寢靜まっているのだろうか。

ぞくりと、なんともいえない寒気が全に走る。

生まれてこの方、警察を敵にまわすことになろうとは思ってもいなかった。俺たちはいま、日本の権威の象徴に立ち向かおうとしている。そう思うと、正直逃げ出したくなる。

けれど。

俺は隣で震えている高城に目をやる。

だって怖いはずだ。いままで自分を守ってきてくれたはずの警察が、自分に白い目を向け、殺そうとしてくるなんて。

恐怖を無理やり抑えつけ、俺は小さい聲で言った。

「……平気か」

「うん」

高城も同じく控えめに返事をすると、ぎゅっと俺の手を握ってきた。

「このまま殺されるなら……せめて、自分なりに頑張ってみたい」

「……ああ、そうだな」

そのために、まずは佐久間祐司をどうにかしなければなるまい。彼を退治するなり説得するなりすれば、この狀況を一気に打開することができる。

「……でも、どうするの? 隠れながら進むの?」

たしかにそれが一番スマートで安全な方法だ。

しかし。

「素人の俺たちがなんの知識もなしに侵できる場所じゃないだろ。変に隠れても無駄だ」

高校生の俺にはよくわからないが、きっと署には萬全のセキュリティが引いてある。それをかい潛っていく自信はない。

俺の「使役」が有効であったなら、いくらでも方法はあったと思う。しかしそれができない以上、俺たちに取れる方法はひとつだけだ。

「よし高城、正面突破するぞ」

「……は?」

さすがに冷たい顔をする高城。

「ふざけてるわけじゃない。これが俺たちの才能を生かした最も有効な方法なんだよ」

そこいらの一般人に負ける気は頭ないし、あの佐久間祐司ですら、ステータスだけを見れば俺より劣っているのだ。かといって、作戦を行えるほどの人的余裕もない。

俺はすうと息を吸い込むと、覚悟を決め、

「ついてこい!」

び、走り出した。

「えっ、ちょっとーー!」

高城も悲愴な聲を発し、追隨してくる。

瞬間。

目を半開きにしている警が二人、視界にった。ご苦労なことに、出り口の警備を命じられていたらしい。

二人の警は俺たちの姿を捉えるなり、さっと構え、拳銃を向けてきた。一般市民に銃を向けるとはなんと愚かな。

「寢てろ!」

び聲とともに、俺は右腕を掲げた。蒼のきらめきが右拳を包み込む。

瞬間、細い闇の線が二本、俺の拳から放たれた。

「ぐうっ」

という悲鳴が二つ。

警察は足を貫かれ、苦々しげな顔つきで床に倒れた。

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