……ユキムラ……目を覚まして下さいユキムラ……

『ん……？　ここは……？』

ヒデオは自分がどこにいるか確かめる。

周りはりに包まれて何も見えない。りに包まれてはいるが眩しくはない。

真っ白な世界に浮いているような覚だ。

と言うか、この狀況をヒデオは知っている。

【ようやく目が覚めましたかユキムラ。貴方をここに呼んだのは他でもあ】

『VOのオープニングじゃないか！？』

【ユキムラ、人が話しているのに途中で大聲をあげるものではありませんよ。】

『あ、すみません……』

ヒデオは自分に話しかけている存在に目を向ける。

ゲームではドット絵で可らしく描かれていた月の神アルテス。

ヒデオは気が付かなかったが宅配員と同じ絶世と言っていいの神様だ。

グラフィックもドット絵ではなく現実と全く區別がつかない。

純白の布をのようにまとうグラビアアイドルも足で逃げ出すような完璧なスタイル。

の谷間も橫も布によってエロテッィクにさらけ出している。

日本人的なし薄めで気のある顔立ちに漆黒の長髪。

神を表すのにその表現はどうかと思うが、まさに神だ。

目の前にしいがいる。

その事実にヒデオは恥心を覚え……ない。

『あれ？　恥ずかしくない？　と言うか、普通に話せている……』

【ユキムラはヴェルフェリア・オンラインの中では普通に話せていましたし、

相手でも関係なくむしろコミュ能力抜群に振る舞っていたじゃありませんか？】

そういえばそうだとヒデオは思う。

ギルド戦の傭兵のときには、まぁ、傭兵と言ってもユキムラは伝説のプレイヤー、ギルドマスターも勉強させてほしいと指揮権を委ねられることも多々あった。

先陣に立って戦場全に指示を出していた、なんてことも珍しくない。

ヒデオ自のPSプレイヤースキルも卓越していたが、戦況全への把握能力も超越していた。

その指示は的確でしかもわかりやすい、何人もの上位ギルドランカーがその指導をけて誕生した。

もちろん相手がだろうが気後れすることもない。

『僕は今、ユキムラなのか……』

【そうです。ユキムラ、貴方を呼び出したのは他でもありません。

我が世界ヴェルフェリアが今危機に瀕しているのです。

神たちは捉えられ、神は打倒されました。

我らの世界の希である勇者も邪神の力の前に傷つき倒れてしまいました。

我々に殘された手段は一つしかありません、來訪者ビジターである貴方に頼るしか無いのです！】

ヒデオは久しぶりにオープニングを見て思い出す。

もちろんキャラメイクはたくさんしているので何度も見ていたが、ここ數年は新しいJobもスキルも追加されないため新キャラはとんと作っていなかった。

そういえばこんなストーリーだったなーとしみじみと思い出す。

始めの頃は誰もまだクリアをしていないために攻略報もないメインストーリークエを、右往左往しながら一つ一つクリアしていって、初めて展開されるストーリーをじっくりと楽しんだもんだ。

  ストーリー自の完度の高さも魅力のひとつだった。

（それが何度もやってるうちに文章も読まなくなってエンターキーを連打するようになって、さらに報酬が味しくないクエストはやらなくなって……『旨い』クエストだけを効率だけで廻すようになってだんだんと作業になっていくんだよなぁ……）

【聞いていますかユキムラ？】

『あ、全然聞いてませんでした』

思いにふけっている間にも神の話は進んでいた。

神の話を簡単に言えば、邪神が世界に訪れて立ち向かった神も勇者も敗れたから、異世界の人間に助けてしい。

神や神の封印やら復活やらを手伝って、最終的には邪神を倒し、世界には平和を取り戻してほしい。

そういう王道ストーリーだ、もちろんサイドストーリーも大量にあって、コンシューマーゲームと比べにならないボリュームに當時のヒデオはどんどんのめり込んでいった。

【……また自分の世界にってますね……セッカクヨンデアゲタノニ……ブツブツ】

『あ、すみません聞いてます聞いてます』

【はぁ……まぁいいです。私の力も限られていますが、貴方には加護を與えます。

どうかこの世界をよろしくお願いします。

  貴方にとって実りある人生を過ごせますように・・・・・・】

ひと目で心を奪われてしまうようなアルテスの極上の笑顔でヒデオは送られる。

『……？　そんなセリフあったっけ？』

ゲームと同じように目の前がりに包まれていく。

自分の容姿を決める場面だ、しかし、ヒデオのキャラは変更できない。

長年の相棒であるユキムラ、黒髪の短髪軽くモヒカンぽく立っている。

しタレ目の気のある目と泣きぼくろ、２Dからこの華麗グラフィックになると、ため息が出るほどの男になっている。

現実のヒデオは不摂生な生活を送っており、悪くない顔つきも病的に痩せ真っ白、髪はび放題で後ろで無造作に結び、髭も適當にが痛まないように切っていて、正直不潔な印象だ。

『なんか、自分を化しているみたいで恥ずかしいな……』

ゲーム開始時、來訪者として小さな辺境の村に16歳の年、場合によってはがたどり著く。

『そこでチュートリアルを兼ねた……、まぁいいや。

  続きはやっていけばわかる。』

ヒデオは服裝なども用のユキムラと同じものを選ぶ。

初期クラスは見習い剣士、ってのが初心者のセオリーだが、トリッキーな作が必要な代わりに取得経験値が多いという隠しポテンシャルを持つ……

凡人オーディナリーマンを選ぶ。

普通にプレイするとはっきり言って弱い。

というか、まともにかすことも難しい。

しかし、作のコツを知っていると普通に戦える。

いや、強い。

しかし、その作方法は普通のプレイヤーなら難解すぎてめんどくさくて投げ出してしまう。

例えば敵一倒すのも他の職業ならクリックすれば勝手に攻撃してくれるのに、このキャラは自分の正面に右足を出し、左足を出す、剣を右手で抜刀する。振り上げる、振り下ろす。

この調子でキーに割り振られたコマンドを連続で力していく。

ほぼすべての行をキー割り振りできる。

しかし、そんなもの使いこなせるやつはいなかった。

ヒデオ以外は。

彼を最強足らしめたのは、まさにこの作方法だ。

UBMアルティメットバトルモードという作方法だ。

村に降り立つユキムラ、ヒデオの脳裏に使い慣れた4臺のキーボードとマウスが現れる。

ヒデオの脳の自分が足になりぽきぽきと指を鳴らす。

左手、左足、右手、右足。

まるで生きのようにき出し、キーを叩く。

それに合わせてユキムラが剣を振り下ろし、なぎ払い、突き、振り上げる、華麗にサイドステップをこなしシャドーボクシングのようにき出す。

まるで踴るように。対戦する相手には悪魔に見えるユキムラステップ。

ヒデオにしかできない戦闘方法だ、ヒデオは確認するかのようにユキムラを作していると、段々と視界が変化していく。

どんどんユキムラの視界になっていく。

俯瞰でユキムラを見ている視界、ユキムラが見ている視界。

二つの世界が今ヒデオの中に流れ込んでくる。

次の瞬間、彼は自分自の足で大地に立っていた。

ヒデオがユキムラとしてヴェルオンの大地に降り立った瞬間であった。