《老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件》310話 心と秋の空

コウとナオのデートは周囲の期待以上に順調に進んでいた。

夕方には二人仲良く手を繋いで図書館の書を読み漁っていた。

夜にはレストランの最もいい席が自然と二人の特等席として用意されていた。

料理はGUが作るものだけではなく、ユキムラの持つドラゴンを利用した料理まで提供される。

「うわ! なんだこれ!! うますぎる!!」

「こっちのエビの料理も、とろけそう……」

その食事の金額を知ったら、意識を失うことは間違いない。

こそこそと背後でく大人たちの手によって、二人の食事は一國の王でもなかなか味わえないものになっている。

一緒に用意する飲みでも飲みやすく食事との相も考えられている。

ユキムラの食事に対するこだわりはとんでもなく強いのだ。

「いいのかな……これ、俺らなんかが食べて……」

「恵まれすぎてて怖い、普通に考えればアリシア様と一緒に冒険してるなんて信じられないもんね……」

「ユキムラ様があまりに桁外れで忘れがちだけど、この國の最重要人のお側にいるんだよな」

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やり過ぎてしまってやや二人を萎させる結果となってしまった。

「……まぁ、俺としては、ちゃんとけじめつけられてよかったけど……」

「私も皆さんには凄く謝してるけど……」

「「隠れてるつもりで隠れていませんから!」」

二人には隠れてコソコソとついてきているメンバーがまるわかりだ。

レストランでも皆不自然に勢を低くして隠れるので余計に目立っている。

タロとヴァリィはカウンターで普通に食事を楽しんでいた。

「い、いやー。ごめんごめん、やっぱりこの狹い街でデートは無謀だったよね」

「つ、ついね。ごめんね二人共!」

「でも、二人共おめでとう」

「ちょ、アリシアなんかいい話にしていい人ぶらないでよ!」

「せっかく上手くごまかしたのに!」

「「ごまかせていませんから」」

済し崩し的では有るが、きちんと告白できたコウもそれをけたナオも素敵な一日だった。

その後は皆にきちんとお祝いされて楽しい時間を過ごすことができた。

コウとナオにとってユキムラ達と出會ったことは最高の幸運であったし、けた恩は生涯忘れることはできないものとなった。

「さぁ、二人はもう帰りなさい。

大切な二人の時間を野暮な大人たちが邪魔して悪かったわね。おやすみなさい」

ヴァリィは二人を送り出し。そのまま出口に構える。

「まだ追い回したい悪い大人は、私を酔い潰してからいきなさーい」

テーブルには大量のラムが並べられている。

結局、白狼隊の良心はヴァリィが握っていた。

人工的に造られた街を2つの影が歩いていく。

その握られた手から、お互いの何とも言えないが伝わってくる。

「き、今日は……楽しかったね……」

「お、おう。そうだな。あんなに味しいものがこの世にあるなんて、びっくりしたよ」

「みんなに著いていけば、もっといろんなことを知れるんでしょうね……」

「できれば、この先もユキムラ様達の元で働きたいなぁ……」

「私も……そ、その……コウと一緒に働けたらいいな……」

「ナオ……」

街の明かりが途切れる一瞬の暗闇の中で、二人のが優しくれ合う。

「んっ……」

素直にその行為をれたナオ、しかし、コウの若さゆえの行心を理解できていなかった。

「んっ……? ちょ、ちょっと!」

バッとコウから距離を取るナオ。

「きゅ、急にいろいろとりすぎ! エッチ! 馬鹿!」

「いやいやいや、ちょっと雰囲気出てたし……」

「出てたし何よ! もう! デリカシー無いんだから!

ちょっとかっこいいなって思ったけど取り消し! このエロ猿!」

「さ、猿は酷いだろ! しかもお前離れる時、結構真面目にボディーブロー放ったろ!

け止めてなかったら大怪我するだろ怪力!」

「な! なんですってー!! あったま來た!

付き合ったからって調子乗ってんじゃないわよ!

あたしのほうが上だってしっかりとそのに叩き込んであげるんだから!」

「俺だっていつまで負けっぱなしじゃないこと思い知らせてやる!」

「「決闘だ!!」」

「明日の朝、中央広場」

「武はナシな。ステゴロでかかってこいや」

「吠え面かかせてやる!」

「泣かしてやる!」

ずんずんと二人で宿舎に戻っていく。

……その様子はタロによってヴァリィに伝えられる。

「あらあら、まだ二人っきりにするのは早かったかしらねぇ。

レンー、ちょっと來てー」

ヴァリィに潰された男達の介抱をしていたレンに事の顛末を説明する。

「あー、戦だとコウ君が不利じゃないですかねぇ。ソーカねーちゃん」

「んー? どうしたのレン?」

3人で事の顛末を話していると子會メンバーも加わる。

「流石にコウちゃん早いわよねー、もうちょっと大人だったら」

「仕方ないでしょ、まだ若いんだし」

「ソーカから見て戦いはどうなりそう?」

「単純なだけだと、ナオが圧倒するかと……武があればいい戦いになりそうだけど……」

「魔法はどうするんだろ?」

「コウちゃんの格的に使わなそうよねー」

「ですよねー。糸が強力だからなぁ……」

「武がないとどう戦うか……」

「師匠が起きてれば何か策でも……」

「打撃ならナオだけど、投撃もえればコウもかなり善戦できると思うよー」

「あれ、師匠起きたんですか?」

「タロがね、治してくれた」

足元でタロが尾を振りながらユキムラや潰れた男達に癒しのを當てている。

ゾンビのような顔がみるみる良くなっていく。

一般的な回復魔法は酔いには効かないが、流石はタロである。

「とにかく、折角の休みの見世、盛り上げちゃおー」

ユキムラの悪巧みも始まる。

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