完全に敵の気配が消える。

引き裂かれた空間もパリパリと殘滓は殘しているが元通りだ。

いろいろとあったせいでレンはその場へ腰掛けてしまう。

「はぁ……こんなに疲れた戦闘は初めてです……」

タロがタッタッタと近づいてきてペロペロと顔を舐めている。

レンの苦労をねぎらってくれている。

「レンちゃん。お疲れ」

「ヴァリィさん。ご協力謝します」

ガッツリと手を握りレンを立たせる。

アイテムから冷たいお茶を出して一息をつく。

「いやー、うまく行って良かったねーレン」

「ソウデスネー」

「もー、ユキムラさんったら演技下手なんだもん私ドキドキしちゃいましたよー」

「ソウヨネー」

「え？　俺うまくやってたでしょ？」

「え？」

「え？」

それ以上、レンは何も語ることはなかった……

【白狼隊の皆さんお疲れ様でした。今、無事に作戦が功したとオトハから報告がありました！】

音もなくふわりとアルテスが降り立つ。

「珍しいですね、奧の部屋かと思いました」

【しでも早く功を伝えたくて來ちゃった】

テヘペロ。お茶目な神である。

【せっかくなので一緒に行きましょうか】

スタスタと最後の扉に向かいさっさと扉を開けて奧にっていってしまう。

突然の神の來訪とマイペースな振る舞いにしあっけに取られてしまったが、アルテスの後に続いて最後の部屋にる。

部屋の作りは見慣れたじ。

ただ中央に置かれた石像がしいつもと異なっている。

「……貓？」

「ワン！」

タロがブンブンと尾を振ってその石像に近づいていく、前足を裝置に引っ掛けると裝置が起し始める。

丸くなって寢ているような貓の石像もに包まれて、三貓が現れる。

「うん？　ここはどこ？」

【花子先輩、おはよう】

アルテスは慣れた手つきで三貓を抱きかかえる。

タロが嬉しそうに足元をクルクルと回っている。

「アルテスちゃん。それにこの……うーん、なんかいろいろ起きてるのね」

「アンアン！」

「あらまぁ～……なるほど。そういうじになっているのねー」

【ふふふ、先輩の並みは相変わらず素敵ですねー】

アルテスがニコニコで三貓をで回している。

「アルテスちゃん、タロさんの首にらせてちょうだい」

【あっ、はーい！】

「タロさん。もうし頑張ってあげてくださいね……」

タロのネックレスにちょこんとると神々しいが吸い込まれていく。

全員のネックレスにも力がみなぎるのがわかる。

【みんなも先輩がくれば喜びます。

さて、ユキムラ、とうとうこの旅をし遂げましたね。

あなた方をサナダ街へと送ります。

々と統合は整えておきますけど、経験したこととちょっと変わってるかもしれないわ。

今回の作戦の結果を反映したいから、魔王の侵攻まで一年無理やりこじ開けたわ。

そこで準備を整えてね。

本當にありがとう。あなた達のおかげでここまでやってこられました。

準備が整ったら、タロにお願いしてね】

「ワンワン！」

手を振りながらアルテスと花子先輩はに包まれて消えていく。

「……さーて、寶をもって、帰ろうか！」

「そうですね師匠。僕達の街へ！」

ユキムラは全員の顔を見渡す。この長い旅も一つの終わりを迎える。

ユキムラたちの脳裏にはすでに世界改造計畫がっている。

マニュアルも出來ている。

裝備量産計畫も立案されている。

冒険者、兵士、この世界に住む人々の強化計畫もしっかりと作られている。

1年もの時間が與えられるとは思っていなかったので、かなり余裕が出來ている。

「ダンジョンの寶はかなりのものだね、素材にしたり合金に使えば大量に製造できるね……」

ユキムラが悪い顔をしながら寶箱の中を味している。

ユキムラ達特製ダンジョンによる育は大量の素材を手にれるためにも非常に役立っている。

量産される世界を変える武防、既存の店からはサナダ商會が買い上げ素材に戻して合金や生活用魔道の素材にしていく。

世界征服に近いかもしれないが、ユキムラはその戦いを終えたらサナダ商店は國家に委譲してもいいと考えている。

ユキムラにとって大事なのは楽しく冒険しながらこの世界を愉しめばそれでいいのだ。

「それじゃぁ、皆準備はいい？」

全員が顔を見合わせ頷く。

長い時をめぐる旅もこれで終わる。

全員、旅の始まりよりも長した顔つきをしている。

たくさんの出會いと、たくさんの別れ、そしてたくさんの、本當にたくさんの戦闘によって彼らは鍛え抜かれた。

タロを中心に円陣を組むように囲む。

「わん？」

「うん。タロ、頼むよ」

「アオーン！」

タロが軽く吠えるとタロを中心に地面に魔法陣が展開していく。

はじめは地面に複數の魔法陣が重なり合っていく、それが白狼隊を包み込むように立的に多重構造を作っていく。

「これは、かっこいいな……」「ですね……」

その幻想的な景に全員、特に2名ほど目を奪われている。

全ての魔法陣が展開されると、まるで歯車のように魔法陣がき出す。

同時にの柱が白狼隊を包み込む。

ふわっとした浮遊に襲われると、白狼隊達は長い時の旅から故郷へと戻る。

プラネテル王國、サナダ街。

舞臺は始まりの地へと移する。