《日本円でダンジョン運営》side ライオス・アリア・ヴォルドー

――ジョセフィーヌが獣神になったちょうどその頃、獣國ヴォルドーの王室にて――

「む、なんだ今の覚は」

何か力が抜けたような、不思議な覚だ。

「ライオス様、どうかなされましたか?」

話しかけてきたのは家臣の1人、虎の獣人のドルフだ。

「……力が抜ける覚があってな。なに、ステータスを見ればどうなったかわかるだろう。能力の天版を持って來い」

能力の天版は、自の能力をステータスとして可視化する古代技を用いた魔道だ。俗にアーティファクトとも呼ばれておる。

「はっ、かしこまりました」

ドルフが部屋の外へ駆けていく。

知が反応しないのだから何者かによる攻撃ではないはずだ。ではなんなのだ?この覚は。やけに嫌な予がする。

「ただいま持って參りました」

ふと気づくと、すでにドルフが能力の天版を持って來ていた。

「ありがとう。そこに座っておれ」

小指に爪で傷を付け、能力の天版にを1滴垂らす。ただの石板にしか見えぬのに、たったこれだけで能力を可視化できるのだから古代技は不思議だ。

ステータスが表示された能力の天版を上から順に見る。能力値が全的に落ちていた。これが力が抜けた覚の原因だろう。なら原因はなんだ?

さらに視線を下に落とす。すると、そこにあるはずのものが無かった。我が、この獣國の頂點である証とも言えるそれが。

「獣神が、消えているだと……ッ!」

我を象徴するスキル、獣神が消えてしまっていた。獣神はユニークスキルだ。世界にたった一人しか手にれられない頂點を表すスキル。それが消えてしまっていた。それはつまり、我より強い者が現れたということだ。

「ドルフ、隠部隊を総員しろ。新たな獣神を見つけるのだ」

「ハッ!」

我より強いなど認めぬ。どこのどいつかは知らんが絶対に見つけ殺してやる。獣神に相応しいのは、この我以外有り得ぬッ!

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