右手に広がるのは広大な山々。そこには無數のゴーレムと食人植が侵者を待ちける。

左手に広がるのは辺りを埋め盡くす濃霧。その先には數多のアンデットと七大罪の悪魔が控えている。

時刻13時、戦闘開始の時間が過ぎてから実に1時間経過している。お互い何も仕掛けることなく、相手の様子を伺っているようだ。

しばらくして、しびれを切らしたのかようやくアドゥルがきを見せた。配下の悪魔に何か命令をしている。さらに、上位のアンデットにも命令を下す。

そうして霧の中から飛び出したのは巨大化済みのヤギ、の悪魔だ。その背中には見覚えのある筋骨隆々のゾンビ、暴ががっている。さらにその暴の両肩には幽霊の雙子、幻影と恐怖がしがみついている。

ヤギはあっという間に山にり、手頃な山の山頂に登る。

「霧よ、あまねく全てを呑む濃霧よ。今此処に顕現せよ」

空に浮かび上がった幻影が、手を祈るように組んで呪文を唱える。すると、ヤギを中心に霧が溢れだした。この霧は幻影の能力だったのか。

「ギィィィ」

嫌な機械音を発し、周辺の山にいるゴーレムが濃霧の中心へレーザーを放つ。しかし、レーザーが霧の中のヤギを貫くことはなく、代わりに霧の別の場所から出たレーザーにゴーレムが貫かれていく。

「ボフォフォホォオ！」

霧の中から暴が飛び出した。飛び出したままの勢いで山の麓にいた亀型ゴーレムの甲羅を叩き潰す。

「キャハハハハハッ」

どこからともなくの笑い聲が響く。その直後、近くの山に陣取っていた人型ゴーレムの頭が切り落とされた。ゴーレムの頭部が地に落ちると同時に、周りの木々が猛烈な勢いで枯れていく。

すっかり荒れた山の中心にいるのは、倒れたゴーレムとその上に浮かぶ幽霊、恐怖だけだ。そのつぶらな瞳は、赤く染まっている。

「メェェエエェ」

ヤギの鳴き聲が聞こえると、霧から無數のアンデットが流れ出てきた。霧から素早く飛び出したメイド服のゾンビは、恐怖が枯らした山に何かを落とす。すると、荒れた地面を割って更なるアンデットが姿を表した。

「ウェキキキ」

霧から表れたゾンビの一人、殺戮は、細長いを不気味に揺らしながら食人植をバッサバッサと切り落としていく。

倒れた食人植は、次々とアンデットに踏まれていった。

……七大罪の悪魔がのヤギしか出ていないのだが、圧倒的にアドゥルが優勢だ。亀型ゴーレムは暴に潰され、人型ゴーレムは恐怖に瞬殺され、食人植は殺戮に切り殺される。

ゾンビの腐が山を荒らし、メイド服の撒く何かで新たなアンデットを生み出す。

 　幻影が作る濃霧も、既にいくつかの山を包み込んでいる。

アンデット軍団、恐るべし。