《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第八回 中二病は異世界にも

第二戦が始まろうとしていた。

シアンもユノアが捕まり、こちらに戻る意思はないということを知り、しピリピリしていた。

一方ロナワール達は不定期で斥候を出し、向こうの狀況を探っていた。

そして、相手が二番目に強い者で賭けることを知った。

ゆっくりと一人ずつ削っていけるのならば幸いだ。願うのはこれからも一人ずつ出てくるということ。

「!?」

「ついにいたのか」

風が吹き込んできた。テントのドアが吹き飛んだ。

髪も激しく揺れる。

遠くから狂ったようにも聞こえる、低くしい聲がした。

『來い!私が相手してやる!』

その聲に、ユノアとロナワール、サタンとフェーラが反応した。

藍はこの聲の主も元仲間だということを察した。

「エアンは強い!……オレが行く!」

「待って、私が行くわ」

ロナワールが立ち上がり、藍はそれを止めた。

「待て、ランは力を消費している。今のお前では……」

「行けるわ。ふたりでなら」

ハッとしたようにその場にいた藍以外の者が顔を上げた。

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この最強のペアならば、行けるかもしれない!

今の藍の力や魔力は約進化前と同じあたり。進化しなくともユノア以上の実力を持つ。

エアンは賢者ほどの実力を持つ。

つまり、藍の護衛をロナワールがやれば良いだけなのだ。

仕方なく、ロナワールは頷いた。現時點で、これよりの計畫は見つからなかった。

「行くわよ!」

「あぁ」

魔法を使って飛んでいく二人を見て、サタンとフェーラがニヤニヤと笑っていたのは、ユノアくらいしか気づかなかっただろう。

ちなみにユノアは勘がいい。

「ふふふ……この私に勝てる者がいるものか!!」

一方戦場では、砂をまき散らしながらも藍とエアンがにらみ合っていた。

(えぇ……まさかの中二病だわ……相手がしにくそうね)

エアンが藍の周りを見回し、鼻を鳴らすように笑うと。

「まさかの最初からボスのおでましか……まぁいい、私に勝てる者はいない!」

同じようなことを言うエアン。

さすが中二病と言っても、偽っているがする。

まあ、そんなことはどうでもいい。

藍は魔力を手に凝させ、水の弾を數え切れないほどの回りに創り出した。

エアンは怯む様子すら見られない。

「へぇ、できるもんはできるんじゃん♪でも甘いよ?」

「な……」

エアンはそう言ってニヤリと笑うと、右手を上げた。

そこからは藍と全く同じ水の弾。そして同じ量でもあった。

ロナワールは警戒したままだ。

藍も驚いている様子はない。できて當たり前の低級魔法だったからだ。

『スキルコピー』

エアンがそう詠唱をすると、手を降ろし、水の弾を消した。

の表が、さっきのは時間稼ぎだったと伝えていた。

藍はしだけ焦り、すぐに必殺を出そうとした。

『漆黒なる藍の……』

手をカメラ型にし、目に重ねる……寸前だった。

『漆黒なる藍の瞳ブラックアンドブルーアイ』

赤黒い魔法流と藍の電撃。

それがエアンの目に凝され、放たれようとしていた。

藍と全く同じ姿勢。藍と全く同じ魔力。

ロナワールは小さく苦笑いをし、藍は呆然とそこに立ちすくんだ。

「教えてやろう、ボクはスキルをコピーできるんだよっ!」

それだけ教え、エアンは凝された魔力をけもなく放った。

ぺたんと藍は地面にもちつく。

「ま……まさか……どうし、て……」

そんな言葉を殘し、藍はを凝視した。もう終わりだと、そう思ったのである。

エアンもニヤリとし、それを見下ろした。

その中でく黒い影に誰も気付くことはなかった。

「ねぇぜ、それは。藍も油斷すんなよ。アレは完全にスキルをコピーできるもんじゃねぇ」

掌から青くき通った結界を出し、藍を保護したのはロナワール。

その近くで、エアンが小さく舌打ちした。

エアンの魔力でロナワールに勝てるはずもなく、魔力のはすぐに消滅した。

立つこともできず、藍はロナワールを凝視した。

(何??これ……心臓がバクバクするわ……)

藍は心臓がバクバクと激しく悸していることに気付いた。

しかしその理由がわからない。

昨日から心が痛くなったり悸したりで、とは面倒くさいものだと藍はため息をついた。

「エアンの弱點は火屬だ、あのコピー魔法は苦手魔法のみコピーができない」

一度後方に下がり、ロナワールはいった。

エアンの様子を観察しながらも藍に向かって。

「それはロナワール、貴方しか……」

「そうだ。だから後方で応援を頼む」

「えぇ、分かったわ。」

必ず守り通す、と藍はそう付け加えると、ロナワールは進み、藍自は邪魔にならないところで撃範囲の所まで下がった。

エアンは様子を見るようにこちらを凝視している。

右目の包帯のせいで右側は見えなさそうだが。中二病さすがである。

『火炎黒砲流(フェイアレスリンダ―)』

を側面にし、どこからともなく杖を取り出してロナワールはそう詠唱をした。

エアンは怯んで慌てて結界を創り出す。

しかし相手は大魔王、その守りが通せるはずもなく。

「くっ……」

黒い火は結界を壊し、エアンに向かう……と思われたが、

『靜止』

その詠唱によって、火はぴたりときを止めて消え去っていく。

エアンが前を向くと、ロナワールが手を掲げていた。

後ろでは藍がロナワールの前に結界を創り出していた。

「なぜだ!何故助ける!」

エアンはそうんだ。

右目の包帯が風になびく。

砂は相変わらず巻き上がっており、しかしそれが視界を塞ぐことはない。

「……こちらに攻撃をしないと誓え」

低く、重苦しく、威厳のある聲でロナワールはそう言った。エアンは怯んだ。

本當はロナワールもそういうつもりはなかった。できれば戻ってしかったのだが、エアンはどう見ても戻ってくるような気配はしなかった。

ユノアよりも、きっとロナワールを、大魔王城と関係あるものすべてを憎んでいただろうから。

「分かった、もう手は出さない……くそっ『消失』」

詠唱をして、エアンは消え去った。

もういないことを確認した藍はロナワールに駆け寄る。

「また戻ってくる心配はないのかしら?」

「それはない。あいつは言ったことはきちんと守る。それがあいつの取り柄でもあった」

真顔で、エアンが消えたところ一點を見つめ、ロナワールは言った。

藍も納得した。

の方が居た日數がないのだから、それも當然だったのか。

ー――――――――――――――☆―――――――――――

「斥候から聞いたよ、また失敗したのか……エアンって忠誠誓ってたよねぇ??」

「シアン様、ユノアもエアンも裏切者です、どうかお心にとどめませぬよう……」

「こうやって失敗されるところを見て、安心できると思う??」

シアンがものすごい剣幕で機を叩いた。

いくらなんでも大賢者、その剣幕は対人戦になれていない部下がけとめられるものではない。

レイアは聲を上げてもちをついた。

「あ……はぁ……もう許さない、レイア!私と毆り込むよ!」

「はっ、はい!」

それでもシアンのもとで鍛えたレイア。

すぐに勢を立て直し、戦闘へ行く準備をした。

シアンは頭から湯気が出てくるほどにイライラしていた。

ユノアという戦力を失うだけでもピリピリしていた。

結構な先頭に立っていたほどの実力を持つエアンまでもを失ってしまった。

シアンの怒りは頂點までに達していた。

(それにしても、なぜユノアは仲間の段階まで……?)

その疑問は、いつまでもシアンの脳に殘り続けた。

しかし第三次戦は始まるのであった。

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