《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第二十七回 向かう道は
戦は無事に終了した。
もちろん妖に當てられていたロナワールたちは一か月の間休憩していた。
エアンは一週間くらい気絶し、サランは限界まで魔法を使い続けていたため、一時期回復しないかと思われたが。
それも全て、ロナワールのチートによって解消された。
一か月の休憩時間を妖で抵抗し、つまり妖VS妖で勝ち、チートにも程があると思えるほどの回復魔法で全員の休憩時間を短くし、サランは思い切り回復させた。
しかし、いきなりくことも危ないため、殘った二週間は話したり、食べたり、これからを話したり。
シアンはロナワールの妖に當てられ、空間に閉じ込められた。
それだけでももう一か月強の休憩が必要で、もしかしたらサランのように危機狀態に陥るかもしれない。
彼がどうなるかは知ったものではないし、知る必要もないのだが。
さすがにもう戦闘は仕掛けてこないだろうということはそれで分析をすることができた。
戦闘で多く用いられた大魔王城「最上階」が人気になり、魔王軍のたまり場となった。
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そして今日も彼らはそこに滯在している。
あとしで二週間が終わる、その前日であった。
「ぷはぁ……こうしてだらけたのもずいぶん久しぶりね」
「いや、ランがしっかりしすぎなだけだ」
「んー、ランさんの破格っぷり、見習いたいですね」
「ランは最強ね、私には無理そう」
「ランの魂……ほしい……」
藍だけには言われたくはない、と「だらけ組」隊長(?)ロナワールが真顔で言い、フェーラが話を逸らし、サタンが諦め、サランが無視はできない発言をする。
サランの発言を聞いた藍が手を心臓に當ててわざとらしく震えていた。
実際、藍がサランに殺される、といったことを実現しようとしてもできないのである。藍が強すぎる。
「でもいつまでたってもこれなのですか?」
やることもなくただだらけるだけの日々に飽きてしまったこの城最上級のメイド:フェーラ。
最上級なだけあり、ぐったりとしているのは好きではない。
いままでは休憩のために黙っていたのだが、前日ときたら、もう黙ってはいられない。
「今仕事をするのはちょっと危ないわ、特にサランが。まず進路を決めましょう、先に計畫を立てておかないと終わってしまうわ、前回の戦闘のようにね」
「それ、正論中の正論だわ」
「ロナワール様には大量の資料が用意されていますのでご安心ください」
そういえば、戦の始まり辺りにフェーラが資料を持って困っていたのをサタンは見たことがある。
サタンは苦笑いし、一切けをかけず涙目のロナワールに追い打ちをかける。
「殘念ながら、話し合いからは退去ですねぇ?」
「う、うああ……やっとけばよかったああああ」
悲鳴を上げながらも、ロナワールはフェーラとサタンに押し出され、バタンとドアを閉められ、鍵をかけられる。
外からしばらくドアを引く音も聞こえたものの、それはすぐに収まった。
サタンとフェーラは何事もなかったかのように席に座り、すみませんねえ、と目で訴え、藍が話し合いの先頭をきってくれるのを待つ。
「私は、王都へ行くわ」
「主に、あの告白のために?」
「あの告白のためですか?」
「私はあのおかげで目が覚めたのだが、あの告白、役に立ったぞ」
決心した藍に、フェーラ、サタン、そしてエアンまでもが「あの告白」を振り返る。
エアンは純粋に話しているのだが、フェーラとサタンは完全に弄っている。
藍はかあっと顔を赤らめ、ツンデレをしながらも話を戻そうとする。
「え、えぇ、まあそんなじよ、あの組織は必ず許さないもの」
「それ、熱い言葉が隠されているでしょ?言ってみなさいお姉さんがけ……」
「サタンさんに言うわけでもないんですから、下がっていてください」
同胞にも容赦はしないフェーラだった。
彼はサタンを押し返し、強制的に話を戻す。
藍は安堵のため息をつき、エアンはこの景をかみしめ、サランはよくわからないといった表で見つめている。
藍は深呼吸し。
「私は、王都へ、組織を攻略しに行くわ。あの仕打ちは、好きな人への攻撃は、許されないわ!」
「ランさん……私ランさんを信じます。資料のこともありますので、私は此処に殘ります」
「んー、フェーラが殘るなら私も殘るッ!」
「あの」フェーラとサタンもあれほど求めていた熱い言葉に込められていた本の熱に圧倒され、誰もそれをいじることはなかった。
実力の差はこんな場面にも出てしまっていたのであった。
ドアの外では、ロナワールが顔を紅させ、慌てて資料をやるために逃げ去ったのは言うまでもない余談である。
サランとエアンは黙り込み、目線で何かを訴え、藍に目を向けた。
「私もユノアやレイアを殺した大賢者を、それを許した組織を許さない、私はこのチャンスを見逃さない」
「ランの魂……一緒に……組織……魂……奪う……殺す……塵に」
「サラン、エアン!」
サランとエアンは決心し、改める意思はないと目に書いて、そして言葉を発した。
藍の決心に負けないほどの熱に、藍は肩の力を緩め、微笑んだ。
「分かったわサラン、エアン。一緒に頑張っていきましょう」
「「うん!」」
「あ、そうだ。もしかしたら私と一緒に転移してきた子二人に會うかもしれないから」
「了解!その時は雰囲気を緩めてやろう」
「私……魂……合わせられる……」
この二人とペアだときっとそこまではありえないだろうが。藍はその熱意を決心でけとめる。
それを分かったサランとエアンは今までにないほどの笑顔を浮かべ、頷いた。
エアンは仲間になったしるしにいうことがあるようだ。
「この包帯、どう思う?」
「ああいう系に見えるわ」
「実はこれ、呪いでな。これを外したら半徑一キロ凍るんだが……あの場ではどうしても使えんくてな」
「解除できる魔法は?」
「ロナワール様にも聞いたことがあるが、ないらしい」
それは最強ではないか、と言おうと思ったが、この技の最高の欠點に気付く。
傍にいると凍ってしまうではないか。
「王都へ行く途中に、それが進化するといいわね」
「黒魔を使えるようになった代償らしいがなぁ、覚醒とか進化とかあるのか?」
「それはまたその時に、ね」
真顔でそう聞いたエアンに藍は噴出し、サランも耐えきれず薄く笑みを浮かべている。
サタンとフェーラは、相変わらず空気へと化していた。
とにかくほのぼのな日々が戻ってきたのだ、これはこれでいいのではないか。
なくとも誰もが嫌がり、近づこうとしない、冷たい戦場よりは。
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