《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第七回 ダンジョン潛り(3)
「ふう……」
「こりゃ大殺戮だな」
転移門の先には、そこまで多くはないがゴブリンがいた。
海斗にとっては全く敵にならない魔であり、彩に力回復をしてもらいながら無限に戦い続けた。
そしてできたの山。
ここ、七階層はとにかくたくさんの種類の魔がでる。
やけに糸がねばねばする蜘蛛や、長さがメートル単位の蛇なども見ていた。
大殺戮どころか、もうこのダンジョン終わった気がする。
「で、八階層なのかな? 次は」
「きっとそうだろうな、おっと門が開いたぞ。転移門もしいのだがなあ」
「ちょ待て、門が二つ開いた!?」
海斗の解析は合っていたようで彩は頷いた。
恐らく八階層への門が開き、そこへ行こうとしたのだが、門が二つ開いたのである。
どれも同じような形、選び難い。
「最後に開いたやつが行きやすいんじゃないか?」
彩の意見はもっともだ。
転移門はいつ開くか分からないものである、ボスを倒した瞬間に八階層への扉が出るのに、それが後になり転移門が先に來るのはおかしい。
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靜かに分析を終わらせ、もうひとつの後から開いた扉に向かう。
だれも気付いていないようだが、その扉にはうっすらと「転移門」と書かれていた。
うす暗い。
気味悪い。
転移門を通り、この部屋にってきた瞬間にじたはそれだった。
階層が深くなるにつれ暗くなるのは分かっているが。
蝋燭がないと何も見えないという事態。
先にあるものは見えない。
通ってきた道も見えない。
周りもまったく見えない。
お互いの姿も分からない。
これはさすがに危険だろう、考えたくないことが頭をよぎる。
「最終層……十階層か……」
「ちょ、彩ちゃん。変なこと言わないでくれる? 死ぬかもしれないんだけど」
「もしはずれを引いたら、ドラゴン、か」
「ちょちょちょ、ホント怖いからダマレって!」
海斗の怖がりな一面に、彩はとある年の面影をじた。
リーゼルト以外で、初めて気を許せるようになった人だったのだろう年だ。
彩はふふっと微笑んだ。もちろん海斗には見えないのだが。
「……この雰囲気、本當にやばいんじゃないか? だってくらいほど深いんだろう? 七階層であれほどだったんだ、これは十階層か九階層しかありえないのではないのか?」
「たしかにそうだが、どちらも危ない層だ。今の力で貫けるかは分からない」
「私の力もそろそろ限界だしな」
彩も使い捨てではないが使いすぎても大丈夫というものではない。道ではなく、あくまで人間なのだから仕方がないだろう。
そんな海斗の力回復の頼りである彼の力も、もう切れ始めている。
自分で力回復するにしても魔力が足りなくなるため、いまはやめておいているのだ。
「ホントにドラゴン部屋だったら切り抜けるしかないがな」
そんな獨り言のような彩の言葉に、海斗は青ざめた。
そして彩もその意味が分かった。
「僕でもわかる。これは……」
そして二人で背を背けて、走りだす。
「「フラグだああああああああああああああああッ!!!!」」
『人間どもよ、良くたどり著いた』
「「ぎいやあああああッ!!!」」
人間のように流暢に話せる魔はただひとつ、ドラゴンのみ。
がデカいためすでに彩たちの真後ろにいる。
冷汗をドクドク流しながらも、そろりと二人は後ろを向いた。
「「うわああああああああっ!」」
そして、また絶。
真っ赤なに炎のまとわりついた翼。牙はとんでもない大きさであり目からは威圧があふれ出ている。
これぞドラゴンというじだった。
ファイヤードラゴン。
その名の通り、火に強く氷に弱い、それ以外は普通というまさにチートな魔。
しかし格そのものはそこまで殘酷ではないと彩はそんな文章があったようなことを思い出す。
今この瞬間はそうなのか分からないが、頼れるのは知識のみだ。
『なぜ驚く。貴様は力回復、貴様は転移やスライム消滅……あとひとつはなんだ? 分からない』
「僕の質問に答えたら教えますよ」
『ほう。それはなんだ?』
「貴方の作者はだれなのです? これほどのドラゴンを作できるなんて」
『我も詳しくはその名を知らないのだ、しかしそのペンネームは「ボス」といった』
「それはそうですよね。最強が名を明かすことなどないですから」
それは納得だ。
転生者やよほどのナルシストではなければ、最強ということを公開したら紛糾の対象になるかもしれないのだ。
いくら最強でもきっと國相手にはてこずるだろう。
この時の海斗はこう考えていた。なくともこの時だけは。
「僕のもうひとつのスキルは「黒牙」です。強くなれば暗闇も次元も空気も、切り裂けるそうです」
「強すぎないかぁ!?」
『ふむ、それは戦う価値があるようだな』
「できれば戦いたくはないのですがね」
「スルーかよ!?」
海斗の破格ぶりにんだ彩の言葉はあっけなくスルーされてしまう。
しかし彩もこの會話に同意だ。
いくら海斗が破格チートだったとしてもドラゴンの中でも中級辺りの者とは戦いたくない。
死んだら笑い事ではないからだ。
「とりあえず戦わなきゃダメってことは分かった。私は後方だ」
『……何故我にこれだけ報を與える』
口を開こうとした彩を制して、海斗は前に立つ。
「貴方が僕らに報をくれたので、僕らも信頼しているのです」
『そうか。ではもうひとつ報をやろう。我はほかのように氷に弱くはない。むしろ強い』
「はあ。その作者はとんでもない方のようですね」
そうだ。
この作者は真にとんでもない、「最強チート」「破格チート」、のふたつのチートを意味する言葉ですら生ぬるいほどに強すぎる。
これが、ドラゴンの知っている報の全てであった。
「では始めようではないか」
彩が邪魔にならない位置に下がり、にやりと笑った。
そしてこれが、宣戦布告でもあった。
小さなダンジョンでの、決して小さくはない戦いが始まる。
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***マンガがうがうコミカライズ原作大賞で銀賞&特別賞を受賞し、コミカライズと書籍化が決定しました! オザイ先生によるコミカライズが、マンガがうがうアプリにて2022年1月20日より配信中、2022年5月10日よりコミック第1巻発売中です。また、雙葉社Mノベルスf様から、1巻目書籍が2022年1月14日より、2巻目書籍が2022年7月8日より発売中です。いずれもイラストはみつなり都先生です!詳細は活動報告にて*** イリスは、生まれた時から落ちこぼれだった。魔術士の家系に生まれれば通常備わるはずの魔法の屬性が、生まれ落ちた時に認められなかったのだ。 王國の5魔術師団のうち1つを束ねていた魔術師団長の長女にもかかわらず、魔法の使えないイリスは、後妻に入った義母から冷たい仕打ちを受けており、その仕打ちは次第にエスカレートして、まるで侍女同然に扱われていた。 そんなイリスに、騎士のケンドールとの婚約話が持ち上がる。騎士団でもぱっとしない一兵に過ぎなかったケンドールからの婚約の申し出に、これ幸いと押し付けるようにイリスを婚約させた義母だったけれど、ケンドールはその後目覚ましい活躍を見せ、異例の速さで副騎士団長まで昇進した。義母の溺愛する、美しい妹のヘレナは、そんなケンドールをイリスから奪おうと彼に近付く。ケンドールは、イリスに向かって冷たく婚約破棄を言い放ち、ヘレナとの婚約を告げるのだった。 家を追われたイリスは、家で身に付けた侍女としてのスキルを活かして、侍女として、とある高名な魔術士の家で働き始める。「魔術士の落ちこぼれの娘として生きるより、普通の侍女として穏やかに生きる方が幸せだわ」そう思って侍女としての生活を満喫し出したイリスだったけれど、その家の主人である超絶美形の天才魔術士に、どうやら気に入られてしまったようで……。 王道のハッピーエンドのラブストーリーです。本編完結済です。後日談を追加しております。 また、恐縮ですが、感想受付を一旦停止させていただいています。 ***2021年6月30日と7月1日の日間総合ランキング/日間異世界戀愛ジャンルランキングで1位に、7月6日の週間総合ランキングで1位に、7月22日–28日の月間異世界戀愛ランキングで3位、7月29日に2位になりました。読んでくださっている皆様、本當にありがとうございます!***
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