《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第八回 ダンジョン潛り(4)
ズドォン。
鈍い発音がして、ダンジョン全が揺れた。
もちろん彩たちが立っている場が発生源で、そこが一番揺れている。
その攻撃を放ったのは海斗で、彼は魔力で作られた蛍の紫の刃を持ってにたりと笑っていた。
彩はステップを踏み、その足の下では優しく煌めく魔法陣を創り出しながら、海斗に無限に力を供給し続けている。
その「無限」はきっとこの戦いが終わるまでだろう。
攻撃をけたドラゴンは苦しそうに何歩か下がった。
後から知る事なのだが、一歩が1000メートルということで、今は何キロか下がっているだろう。
苦笑いしかできなかった。
彩は目を閉じて集中し、海斗は飛んでくる「ブレス」と呼ばれる高熱の火の球を避けながら地面を斬りつける。
を斬りつけるのは無謀だ。
「僕が……これを扱えないと思いましたか? 訓練しましたよ、リオン様から思い切り、スパルタ教育をやらされましたから、もちろん完璧に扱えます」
『ふむ、次元を割れないのは、きっと、魔力の足りなさ、という、ことだな』
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「きっとそういうこと……ですね」
両方力は切れかかっている。
海斗に至っては結構戦ってきたためにもともとそこまで力は殘っていない。
それを強制的に限界を超えて引き出しているため、心臓にかかる負擔が重い。
一方の彩も簡単にやっているわけではなかった。
絶えず魔力を消費し、ステップを踏み続けるその足はもう重くなっている。
顔面蒼白と言う言葉が似あう狀態だ。
かといってドラゴンが無事だとは言わない。
「才能」とは賢者クラスだ。それほどの者の攻撃を當てられ続け、無事と言う方が可笑しい。
くたびにその巨大ながふらついている。
始まってから、五分は経っただろう。これぞ勝負の先が見えない戦いである。
『人間どもよ、もうあきらめたらどうなのだ』
「……これはさすがに、そうですね。このままでは共倒れ」
「諦めないッ!!!」
「!!!???」
彩の力からは想像できないほどの大きな聲が出た。
彼は手を掲げたままで、そこから魔力も放出し続けている。
その聲は、海斗の知っている、大切だと思っていたの聲そのものだった。
「私は諦めない……慘めじゃない……共倒れしても、私が諦めることは無いよっ! 私は、気持ちの良い戦いをして……気持ちよく……終わりたい……」
海斗の確信は深まる。
確信は、確実の信念へと変わっていく。
ドラゴンさえも、そんなの変わりっぷりにやや固まっている。
【スキル「支配者」スキル「空気作」スキル「発」稱號「王者」を使用しますか?】
持ってもいないスキルと稱號。
その聲は彩の脳に響いてきた。
彼の記憶によると、発により起こる、何らかの理由によるスキルの大量発生。
隠しスキルと言った場合もあるが、発見されないことはありえない。
今は、迷わずに使用する。
「私こそが……支配……者……で、あるの……です……」
『う……うおぉ!?』
「なんて急展開……彩ちゃん。……如月さんは、なぜあんなスキルを、持ってい、る?」
全てのスキルをドラゴンに向かってぶちまけてから、彩はゆっくりと倒れた。
そのを海斗がキャッチする。
彩は命に別狀はないようで、気絶しているだけだと思われる。恐らく魔力の使い過ぎだ。
殘されたのは、「支配者」によって洗脳されているドラゴンだけだった。
『解け……攻撃しない……これを、解けッ……』
眼が高いところにあるためよくわからないが、きっと涙目だっただろう。
暗くてよくわからない。
けれど、ドラゴンが本気でそう言っているのは分かる。
きっと無意識で、彩はその脳の拘束を解いたのだった。
――――――――――――――――――――――――――☆
一方、地上では。
転移門にて転移されてしまった劣等たちがダンジョンの外にて待機していた。
安全中の安全、大當たりである。
時間によってこのダンジョンは転移先が変わるようだ。
それはさておき、ダンジョンの真ん前に飛ばされた彼らは本気で心配していた。
「……海斗さんに、何かあったらどうしましょう」
劣等上級であり財閥のお嬢様の柊絵。
あちこち歩き回りながら、彼らの代表で最も心配していた人でもある。
「私、海斗さんを知ってるの……彼は本當のああいう系じゃないわ」
「じゃあどういう系なんだよ」
中級である年傘木太一。
彼もスキルがあるのだが使いにならない「料理が味しくなる」というその名通りの。
「海斗さんは、両親を失っているわ。父はたらし。きっと學んだのでしょう」
「そらいけないもんを學んじまったもんだなあ」
「父なのだから、きっと憧れの対象だったのよ、たとえどんな格だったとしても」
「そんな話何処で……」
「聞いたのよ。セシアさんから。「海斗を頼むよ」って言われたの」
そう言いながら、絵はすでに涙目になっていた。
太一も聞いて納得し、海斗を恨みながらいろいろ口をやめようと誓ったのだった。
じつは彩と同じ顔をしたり、同じ思いだったと述べていたのは彼だったというのは紛れもない真実であった。
ドゴォン。
その話が終わり、五分ほどしんと靜まり返ったその時のことだ。
「わぁ!?」
ダンジョン全が揺れ、地面も大きく揺るがされた。
そのびが誰のものかすら分からないほど、喧噪としていた。
絵はまた本気で焦った顔をしている。
太一もめずらしく心配をしている。
「どうしよう……海斗さんに、何かあったら……」
「とりあえず、出てくるのを待つしかないな」
それはそうだ、と皆は納得し、しばらく待つことにした。
そのしばらくしたあと。
海斗が彩を抱えて、その後ろに信じられない大きさのドラゴンが立っており、彼らの目の前に現れたのだった。
今の狀況をよく表せない、びでもないびが響き渡った。
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