《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第十一回 一重人格に戻っても

「――――――――――――――――――――――」

ユリウスの長ったらしい詠唱とセシアと海斗の魔力け渡しは晝が周り、日が沈む頃まで続いていた。

セシアと海斗の顔は真っ青で、魔力の消費が激しいことがわかる。

ユリウスのはぽっかりとが開いて、今でもが溢れ続けている。

魂から出ている淡いは彩のを包み込み、人格をひとつに結びながら幻のようにそのの輝きは増していく。

「……も……や……て……」

彩の口から微かにれたその一言が、屆くことは無かった。

詠唱と魔力のけ渡しが続き、月が登ったその時。

狀態に、ようやく変化が起きたのだった。

「なに……こんな強さに……したつもりではない……が……我には……出せない……」

ユリウスが見ているのは、彩のを包んだその

は大きさが増し、もっと輝き、その魔力の濃さは今の彼らでは出せないほどだった。

しかもなぜか彩の意識は戻っている。

「もう……や……て……」

「な、なんと言った!?」

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彩の眼からは涙が一筋零れ落ち、その瞳はユリウスをまっすぐ見つめていた。

が伝えたかったその言葉は今度こそ全に伝わったのだった。

ユリウスはセシアと海斗に向かって頷き、魂をに取り込んだ。

しかしダメージは大きく、彼は地面に膝をこすりつけて咳をし続けていた。

『ユリウス、セシア、海斗。そして、彩……』

靜かに、優雅で、しかし無機質な聲が響くが、その主は姿を現さない。

三人はそろって辺りを見回すが、誰もいない。

『……私は貴方たちの世界ヘいけない。私はそこに存在しない。伝えたいことがあるの、貴方たちと、そして彩に』

口調とそのゆったりとした話の進み方で分かった。

は「人間の屆く神聖な地域」である勇者~大賢者の域を超え、「はるか上の存在の地域」であることを。

人間の屆く地域は「聖地域」、彼は「神聖地域」。

圧倒的上の存在。

しかしユリウスも「神聖地域」なのだが。

『彩は私とのサダメがあるの。今回は助けるから、いつか私の元へ』

「それは、どこにあるのだ?」

『ユリウス以外は知っているはず、きっと知っている、きっとそこへ行く。彩を、信頼し―――――――』

の聲はそこで切れ、ユリウスの調もまるでさっきのことがなかったかのように回復した。

そして彩も何事もなかったかのようにむくりと起きた。

衝撃過ぎてセシアと海斗はビビって腰を抜かしていた。

「口調はこれがいいからこれに戻す。まーさっきの?的なのは神だ。十二人いるのは教えてもらったけどな、私は完全に治ったらしい」

「はぁ。如月さんは如月さんに戻ったんだよな?」

「何だ海斗、どちらも如月彩なんだ。二重人格だっただけさ、そこまで「彩」のほうを軽蔑するか?」

「だってウザいし」

「そういう悪口は言うなと言っただろうがぁ!!」

口調はそのままだし、姿も好みも変わらないのだが、表面の格、つまりやさしさは「如月さん」になったのだという。

「待て、貴様今神と言ったな? 名は教えてもらったのか?」

「名は……レキスト・レディフィア・セレイ。とかいうなんか長い名前だ」

「……それなら間違いはない。神の名は三段階に分かれるのが當たり前なのだ」

ユリウスは頷き、改めレキストの言ったことは間違いないことを証明した。

あの短い時間でどうやって名前を言ったのか気になるのだが。

「改めてスキルを鑑定するか?」

「あーいや、そのだな。強いスキルを持っていても……その」

「もたもたするな、いうなら言え」

ユリウスはやや言いにくそうに言った。

「合したら威力は「アヤ」のままだから強くはならんかもしれん」

「弱くなるってことか?」

「最弱は変わらねえっつーことだろ?」

海斗はニヤリと笑い、彩は顔をひきつらせた。

スキルは「如月さん」のもので威力は「彩」のものだということだ。

つまり表面が強いだけ・・ということになる。

「そ、そうなんだね『鑑定』」

なるべく彩の気に障らないようにセシアが鑑定する。

能力レベル12

力17

攻撃力20

力15

特別スキル――「支配者」スキル「空気作」スキル「発」

稱號「ユリウスの主」「王者」

「なし」

判定「才能」

「そこまで上がってないねー主に威力が」

「セシアさんは鬼かよ」

何やら凄そうなスキルを持っていても威力がなかったら逆に普通の攻撃の方が敵に効く。

しかしもともと凄いスキルを持ってすらいなかったためまだいいと言えるだろう。

村人以上賢者以下という微妙な數値とはこのことだ。

元の「如月さん」の場合能力レベルだけでも50という桁が違うくらいの數。攻撃系だということからわかるように攻撃力は1000。

本當はチートとも言えるのに最弱化した。

それにはさすがの彩も泣くと思われたが。

「なんとかなるさ! 私なら! ユリウスに頼る」

「……我は元のアヤくらいの実力は出せんぞ」

「分かってるさ、あの時の私なら大賢者くらい簡単に越していたのに……」

いうのは簡単だがずいぶん凄いことを言っているのはきっとロナワールやリーゼルトは分かるだろう。いまいち大賢者の強さを分かっていない人間組は気にしていない。

元の彩はユリウスにも勝てないもはや「霊」ランクのチート中のチートだった。

しかし彩のポジティブさによりそれは忘れ去られ、なかったこととなった。

「一重人格になっても、変わらないのか……」

ただ、落膽だけはしたのだが。

神レキストが言ったことは後程整理し、行に移すことになった。

というわけで、いろいろと証明もされたし安定した。

大理石で作られた高級あふれる部屋に彩は引っ越すことなった。

「劣等」と「才能」の差別じみたこの待遇は、組織が創立したその時、初期に決められたものだったため今では変えられる者はいない。

いや、一人だけいるかもしれない。

世界をも超える、前代未聞バグの存在が――――――――。

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