《俺にエンジョイもチートも全否定!~仕方ない、最弱で最強の俺が行ってやろう~》第十二回 神聖な場所と言えば。
神の言っていたことを細部まで調べている。
今やっていることを簡単に述べればこうして一言でまとめられる。
しかし実際は違う。
眼に映りきらないくらいの大きさの城全の地図を持って一から調べている。
神が住めるほどの神聖な地域がこの城にあっただろうか。
レキストが彩を指名した、ということは彩にとってもこの城の主である海斗にとっても一大事。
セシアとユリウスも手伝って、彩がいつも本を読んでいるあの図書館で調べていた。
「全く分からんな」
ユリウスがそんな一言をこぼした。
この城は大きさがゆえに地図にすると10枚くらいの多さになる。
一代目の才能がどうやってこの地図を書いたのか気になる。
なにせ、手書きだったのだから。
「いやぁ無理だ。弱くなったうえに調べ事なんて」
「如月さんはこういうのには弱かったよな」
「なぁっ!? わ、悪かったな……準人だって苦手だったんだからよ」
「あん? 準人? 誰だそれ」
彩と海斗の間ではつながりがあるがリーゼルトと海斗ではつながりがない。ゆえに海斗がリーゼルトを知らないのも仕方がないことだ。
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しかしそれはもうひとつ理由がある。
たんに彩が海斗にリーゼルトを知ってほしくなかったからである。
口がったことに気付き、慌てて彩は違う話題で隠す。
「神聖地域ねぇ……聖剣はもう抜かれたしな、あそこはすでに神聖じゃないだろうな」
「あー、で、でも僕の聖剣が何かわかるかもしれないよ」
「うむ。聖剣というのはその主人が全方面で強くなり、それに宿る霊がそれを認めることがあれば出てきて助言することもありえる」
ユリウスの言葉を聞いて、一同はさらに考え込んだ。
セシアは聖剣を使う気はなさそうだし、使う機會そのものがないと思われる。
隣が大魔王城がゆえに逆に狙われないらしい。
「その霊が、出てきてくれればねぇ」
ピカッ。
まさにその効果音が似合うかのように地図の中心が強く輝いた。
レキストのものよりは一段劣っているがユリウスよりは一段高い。
『はぁい、妖アイエリアスだよ~♪聖剣の妖なんかじゃないけど、出てきちゃった!』
普通の妖の可らしい聲よりも棒読みでアイエリアスは言った。
ボス一筋だということは変わらないのだ。
いきなり出てきたドラゴンの一個上で神の一個下である妖を見てぽかんと口を開ける一同。
『驚かなくていいってば。地下室ね、はい地下室! もうボスが來いって言わなかったら來なかったんだからね?』
「貴様……ボスの手下だったのか」
『手下とか言わないでよね右腕なんだからさ! もう行くね気味悪いッ』
霊らしくない言葉を吐き捨ててアイエリアスは去っていった。
いきなり現れて嵐のように去っていったアイエリアスの居た場所を見つめ、彩とユリウス、海斗とセシアも絶句してしばらくの間けなかった。
「ボス……の、霊……か。聞いたことはあるのだが會ったのは初めてだ」
「ていうかこのボス何を考えているのか分からないな」
「……それで評判だったのだ。我々はすでに、あやつの計畫にっているのかもしれんな」
ユリウスは天井を見上げて、そっと聲を出した。彩もセシアも海斗も、いざ彼らが攻めてきた時について覚悟はできている。
もちろんボスが計畫をすようなことは決してしない。
「計畫力で有名だったのだ、長い「時」をものともしない」
「不老不死的なのでも持ってるのかよ」
「いや、魔力で維持してきているのだと思う。恐らく黒魔法だ」
海斗の出した答えに、ユリウスは頷いた。
黒魔法のデメリットは自が「魔」と化すただそれだけ。
魔力消費も並みよりないが取得が面倒くさい。
その點に目を瞑ってしまえばメリットだらけで、常に魔力を消費し続けて若さを保っていても膨大な魔力があるのだから苦にはならないと思う。
「強敵だな」
「敵かは分からないけどね? 早まったらだめだよ」
「自殺しないぞ??」
「如月さん、セシアはその意味で言ってないと思うんだが」
「アヤよさりげなくその言葉を言うでない」
ユリウスはいつも通りの対処を取っている。
デリカシーもプライドもない彩の言にいちいち戸っていたら話が進まないのだ。
「早すぎてよくわからなかったけど、あの地下室に行くのかな?」
この雰囲気を斷ち切るかのようにセシアがそういった。
「アイエリアス?さんによるとそうらしい」
海斗が答える。
あの地下室、というのは皆共通の呼び方。
城の部探検の時に彩と海斗が見た水晶のあるところのことだ。
「うぅ……何があるか分からないだろあそこ」
「いやぁ、僕も無理なんだよなあそこ。うわさによると二代目が作ったらしい」
「またどこで仕れたのだその報」
ユリウスはまたも呆れるのだった。
このメンバーはセシア以外全員まともではないと……。
二代目は。
永遠に生き、死んでもまた生き返るという能力を持っていた。
彼はきっとさみしかったのだろう。
ひとりで、劣等たちに避けられて。
だからこそ作ったのだろう場所。
彼は、彼の人生を終わらせてくれたのは斷の魔グロッセスでもあった。
さらりと舞う黒の混ざった濃い紫の神。それが、グロッセスの印象でもあった。
「え? この図書館だ」
「作った人最強じゃないか!?」
「伝説によるとな。最強のブレスレットを手にれた年三代目が創ったらしい。それはなんでも作れる能力を持ったブレスレットだったんだってよ」
「……めちゃめちゃしいんだけど」
彩も異世界転移するときそんなじのチートを夢見ていたのは言うまでもない。
「……落ち込むのは後にするのだ、とりあえず明日行くぞ」
「あぁユリウス、貴方はなz」
「さて行こう、我も早く帰りたくってな」
「分かった。じゃあ僕もかえる、セシア行くぞ」
「うん、それじゃあ彩ちゃん、ユリウスさん、また明日會いましょう」
彩の自稱名演技っぽいのは放っておいて三人は別れの挨拶をした。
そうは言っても明日また會うのだが。
溜息をついて、彩も片づけて部屋に帰った。
さて明日は重要な事項がある。しわくわくする心もあるのだが張がそれを超えている。
「本當に、マジかよ」
「マジなのである」
消燈した部屋で、二人はそうぽつりとつぶやいたのだった。
靜かな夜に寄り添うように。
しく寂しい月をめるように。
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