馬車に揺られて、三時間は経っただろうか。

別れの時、海斗は手を振るだけで冷たい表をして帰っていってしまった。

実はそれが寂しさの紛らわしだったのは本人のみが知る。

彩は景を見ながら嘆の息をらしているが、ユリウスは思い切り寢てしまっている。

馬車は海斗が念りにスイートルームを用意してくれた。

そのため乗り心地は何も言えないほど気持ちがいい。

眠りもちゃんとしたため、眠気は無く、まだまだとても元気だ。

現在王都第二層なのだが、第一層ではそのまま通り抜けた。二層の扉では騎士がおり、検査をされたが何も言われることは無かった。

先程ユリウスは寢ている、と言っただろう。

しかし彼は自の力だけで姿を消しているため彩のみにしかその姿は見えない。

「えっと、第三層からは馬車が止されているからもう行けないので降ろしますね」

「あ、了解だ」

『アヤよー我は歩きたくないのである』

ユリウスが苦痛の聲をらしたものの規則は規則である。仕方がないのだ。

馬車から降ろされ、彩たちは三層目の扉をくぐる。

「……『電脳タッチパネル』」

門の前に居たが詠唱をすると、彩の履歴などが全て浮かび上がった。

転移人などそういうプライベート的なものは「鍵」でロックされているためみられることは無い。

はタッチパネルを消すと、彩に向かって一禮をし、通っていいことを示した。

「うあー、通るだけなのに張するな」

真顔を貫き通した彩はふぅ、と安堵のため息をついた。

目の前にはまだそれほど見えないものの王都フェリラーの城が見えてきていた。

それよりし離れたところにヨーロッパのような建があった。

恐らくそれが冒険者ギルドとみていいだろう。

『まあそうなのである……我は寢たいのであるー』

「我慢しろユリウス」

辺りを見回すと、意外に王都に住む者は田舎者もいれば都會の雰囲気をぷんぷん出した者もいる。

検査を突破すれば誰でもれるということか。

先に宿をとることにして、彩は十分ほど歩き、ギルドから一番近い宿「カマボコジー」の扉にる。

「こんにちはぁ！　こちらぁカマボコジーですぅ！　一週間ですかぁ？　一か月ですかぁ？」

「あー、はい、不定期でお願いする」

「不定期ですねぇ！　とりあえず一週間の料金いただきますぅ、５００Cですぅ」

「安っ」

まあいい、と思い、彩は海斗から渡された所持金１０００Cの中から半分取り出す。

それをけ取った付の人は703と書かれた鍵を渡した。

「シャワーや飯などについてはぁ、宿代にってますのでぇ」

「改め安っ」

普通ならばちょっきり1000Ⅽくらいには行くはずなのに。

彩は鍵をけ取って階段を上る。

703の部屋を開けると、同じくヨーロッパのような中だった。

「この街ヨーロッパなのか」

思わずそんな一言をこぼしてしまったのも責められないだろう。

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宿から一度出て、ギルドを目指す。

目指す、と言ってもその扉はすでに目の前にあるのだが。

扉を開けた際に、「自ドアがしい」と思ったのは心の中に仕舞っておこう。

「こんにちは。今日はギルド登録ですか？」

「ああ、そうだ。私一人なのだができるか？」

「はい。できますよ。私がステータスを鑑定しますのでお待ちください」

そう言って付嬢はあのと同じように「電脳タッチパネル」と言ってステータスを鑑定した。

この地帯では流行っているスキルのようだ。

付嬢は若干スキルと強度や魔力の差に驚きながらも羊皮紙に書き寫していく。

能力レベル13

力20

攻撃力22

防力17

知識19

特別スキル――「支配者」スキル「空気作」スキル「発」

稱號「ユリウスの主」「王者」

屬「なし」

『判定　表示できません』

判定の所は付嬢に見えていないようで、彩にしか見えなかった。

戦ってもいないのにどうやって増えたのか。

そして「知識」が増えたのはまた都市の影響なのだろうか？

しばらくして付嬢が銀に輝くカードを持ってそれを彩に渡した。

「現在Fランクでございます。説明はいるでしょうか？」

「いや大丈夫だ、ありがとう」

「了解しました。変更などがございましたら遠慮なく申し付けください」

金の髪を束ねた付嬢、このギルドのマドンナ、ウェラは禮をして彩を送った。

彩はギルドカードを持って宿に戻った。

もちろん一か月が過ぎる前に依頼をけなければいけないが今日ではなくてもいいと思った。

部屋に戻ったらユリウスがちょこんと座っていた。

「今日は寢るぞ！！！」

『む、寢られるのか！？　そ、それは……ZZZ』

「もう寢やがった！？」

彩の知らせを聞いたユリウスはそのまま寢てしまったのだった。

「私も負けない」と彩もベッドに上がり、消燈した。

るギルドカードを見つめて、彩はほぅ、と嘆の息をらした。

本の銀なのだろう、り輝いていた。

語彙などいらない。

単純に彩は「綺麗だ」と思ったのだった。

（さすがギルド。カンペキ、いやそれ以上か）

彩はギルドカードをそっとカバンの中に仕舞い、眼を閉じたのだった。