《絶対守護者の學園生活記》レオンVS學園長
學園長の呼びかけにより、全校生徒が第一訓練場へと集まっていた。
國主催で行われる武闘大會などにも使われる、東京の某ドームと同じほどの広さをしており、もちろん観客席もある。
中央に集まり、學園長の言葉を待つ。だがここで、俺の脳センサーが警鐘を鳴らす。自由奔放な大人達の相手によって培ってきたスキルだ。
「これより新生歓迎のレクリエーションを行う! 容はワシとの一騎打ちじゃ! 制限時間は五分! どちらかが気絶するか、降參すれば勝敗が決まる。面白そうじゃろう?」
ドヤ顔をし、そう発言する學園長。さらにそれを聞いて盛り上がる生徒達。英雄を育てた人として知られる學園長の戦いが見れるんだ。そりゃ、興するだろう。
でもな? まだ肝心なことを言ってないんだぞ? センサーさんがビンビンですよ。
「希者全員とやるのは流石に時間がかかるしのぅ。ここはワシが選ばせてもらうとしよう。なに、退屈はしなかろう。それでは――」
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わざとらしく対戦相手を探すように生徒たちを見渡し、その目がこっちを向く。うん、分かってた。前に會った時の戦う場を用意するという言葉を思い出す。絶対このレクリエーションのことだよなぁ。
「レオン=ガーディア、お前じゃ! こっちへ來い!」
「……うっす」
新生歓迎のレクリエーションですよね? 俺も新生ですよ? てか周りの視線がきつい。
「他の者は観客席に移せい。しっかりと結界を張っとくから被害は出んじゃろう。中では死ぬこともないから本気で來るのじゃぞ?」
「そっちも本気なんだろ?」
「當たり前じゃ。せっかく猛者と戦えるんじゃ。本気でやらんでどうする」
「ですよねー。てか制服なんですけど」
「戦闘時に使えるように、丈夫に作られてるから大丈夫であろう。きやすさもばっちりのはずじゃ」
「この制服すげえ……」
白寄りのクリームというのだろうか?それを基調とした制服だ。ネクタイのによって學年が分かるらしい。個人的には黒がよかったが、そうすると髪のも相まって全黒になって暗い印象を與えかねない。
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「それでは両者、位置についてください」
ここの教師であろう審判に言われ、お互いにし離れ、武を構える。
俺はダルクに貰った剣を、學園長は木製であろう杖を構えている。黒いローブを著ているため魔法使いという言葉が似合うと思う。怪しい教団にいそうな人に見えなくもない。
「それでは……始め!」
試合が始まった。久しぶりの対人戦だ。
「まずは小手調べだ」
俺は開始の合図と同時に目の前に、土魔法で大きな壁を作り、視界を塞ぐ。そして転移を使い學園長の後ろへ現れ、剣を素早く振り下ろす。
だが、學園長の杖によって防がれてしまう。
「まさか転移を使えるとはのう。ならばワシも」
そして學園長が消え、俺の後ろに現れ、杖を振り下ろしてくる。さっきとは逆に俺がけ止める形になるが――
(おっも! これが老人のするような攻撃かよ!)
武に魔力のコーティングを施すことで、強化をすることが出來る。緻な魔力作を必要とするので出來る人は多くはないが、學園長なら當然出來るだろうし、俺も一応出來る。
にしても見た目魔法使いなのにパワーまで相當なもんだ。脳筋の師匠なだけある。
「やはり転移魔法は疲れるのぅ。ここからは地力勝負といこうではないか」
「上等!」
転移は元は空間魔法であり、強力な魔法でもあるため、かなりの魔力を消耗する。なので発は出來ない。
仕切り直しとばかりに、元の位置に戻り、再び武を構える。
そして、思いっきり足を踏み出し、一気に學園長との間合いを詰め、斜めに振り上げるが防がれる。それからも、お互いが相手の隙を見つけては攻撃をわすが、けとめるか、をわずかにそらす程度で避けるなどが続き三分ほど経っただろうか。埒が明かない。仕掛けるか。
後ろに大きく跳躍すると、それを追いかけるように學園長も前へと詰めてくる。
そして、宙にいる俺に向けて、圧した水の弾丸を超高速で飛ばしてくる。アレに當たってしまえば蜂の巣コースだろう。
咄嗟に目に魔力を通して視力を強化し、剣で弾丸に対処していく。そして、俺が著地したと同時に、いまだに放たれる水の弾幕に紛れて俺の懐に潛り込んでくる。だが――
「それを待ってたよ!」
魔法も上手く対処され、近接においても決著がつかない。なら、防ぎきれないほどの圧倒的な出力の魔法で仕掛けるか、大きな隙を作ってそこで近接による一撃を仕掛けるか。どちらかになるだろうと予想した。魔法使いな見た目である學園長だとしたら、普通は前者の方法で攻めてくるだろう。実際に水の弾丸は強力だったし、誰だって魔法で攻めてくると思うはずだ。だからこそ、逆で攻めてくる。
そんな俺の予想が當たった。
「むっ!?」
懐に潛り込んできた學園長だったが、不意に後ろから飛んできた一発の水の弾丸に気付き、きが鈍る。俺がこっそりと空間魔法を使い、後ろに移させた弾丸だ。きが鈍った一瞬の隙を突き、重力魔法を使って上から大きな圧力をかける。これは同じ重力魔法によって反発させる力を生むことで相殺できる。もちろん學園長もやってくるが、弾丸の対処もあり、結果として大きな隙が生まれる。
(確実に仕留める!)
剣ではなく、魔法によって確実に仕留めることを決めた俺は、學園長を思い切り蹴り飛ばし、魔法を発する。
「燃え上がれ!」
風魔法によって大きな竜巻を発生させ、そこに火魔法を合わせることで特大の火――というよりは、炎の竜巻を作り上げる。
「ぐおおおおおおおおおお!!」
竜巻をモロに食らった學園長のび聲が響く。そして、しした後、竜巻が消える。
そこにはボロボロの狀態の學園長が膝をついて存在した。満創痍だ。もうくこともできないだろう。
歩いて近づいていき、首元にそっと剣をそえる。
「……參った! あっぱれじゃ!」
「勝者! レオン=ガーディア!」
審判の宣言に、一瞬、シーンと靜かになったが、すぐに大きな歓聲に包まれる。
あー疲れた。いい訓練になったとも思うが、魔力を大量に使った反でが重い。
「いやはや、本気を出してないお主にすら負けてしまうとは。これからのワクワクが止まらんわい」
「? 本気なら出したが?」
「何を言っておる。お前の手首に付いてるのはなんじゃ」
「あー、忘れてた」
俺の両手首にはリストバンドが付いていた。これはダルク達に鍛えてもらっていた時に著けていた魔力強化用の道で、常に魔力に負荷がかかる狀態となる。
つまり、手加減狀態で戦っていたことになる。
筋力強化用のギプスはともかく、これは付けてても違和なくてそのままだったんだよなぁ。むしろ魔力に負荷がかかってることに慣れすぎてこっちがデフォルトになっている。
「見てた者たちも満足したようじゃし、これでレクリエーションは終わりじゃの。また戦おうぞ」
「程々にしてくれよ?」
「分かっておるよ。では皆の者! レクリエーションは終わりじゃ! 新生はクラスを確認し、教室に移せよ。解散じゃ!」
そうして俺も自分のクラスを確認し、教室へと向かった。
※※※
私は思わず自分の目を疑ってしまった。
あのレオンが學園長に勝ったのだ。
學園長は先の大戦において、圧倒的な力を見せつけ、魔族を滅ぼしたという英雄を育て上げた者として知られており、実際にかなりの強さで英雄の次に強いと言われてるほどだ。
そんな人と、一年ではあるが一緒に過ごした馴染が、対等以上の力を見せつけ勝利してしまったのだ。
戦ってる最中のきもほとんど見えなかったし、魔法もかなり強力なものであった。レオンは英雄に匹敵するほどの力を持っている――そうじさせるほどの試合だった。
周りの人達も、あまりの速さに、目が追い付いつかなかったようだ。でも、凄い試合を見れたと、興している。
だが私は違った。
なぜなら、昔の彼を知っているから。
四年ほど前の彼はガルムさんに稽古をつけてもらっていたが、普通の大人よりし強い程度だったはずだ。それなのに、たった四年であの學園長を倒せるまでの強さに長していた。
並大抵の訓練ではそうはならない。つまりは人には想像もつかないほどの、本當に過酷な訓練を積んだのであろう。
そして、気になった。彼がそこまで強くなった理由とは何なのだろうか。
もちろん、ボーン村が消えた後の、レオンがどんな道を歩んできたのかも気になる。だが、それほどの強さをつけるためにはとってもとっても大きな覚悟が必要だ。
聞きたいことは盡きないが、後で絶対に問いただそう。
そう決めた私は、指定された教室へと、歩を進めた。
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