《絶対守護者の學園生活記》無我

「すまん、やっぱり疲れてたみたいだわ。もう帰るな」

「ちょ、ちょっと待って!」

カレンの制止の言葉には全く反応せず孤児院を出ていってしまうレオン。

カレンはレオンのあまりの変貌に、しばらくその場をくことが出來なかった。さっきまでけていた強烈な殺気も関係していたであろう。

しばらくして我を取り戻したカレンは、院長を子供達の所へ向かわせた後、急いでレオンの後を追い掛けていった。すっかり外は暗くなっており、様々な明かりが都を照らしていた。その中を、人とぶつからないように、なおかつしでも急ぐために早歩きで進んでいた。

レオンは帰ると言っていたが、カレンは嫌な予がしていた。レオンは何かとんでもないことをやろうとしているのではないかと。

(あの馬鹿レオン! 後で何でも言うこと聞いてもらうんだから!)

馴染のことを思いつつ、カレンは歩く速度をさらに早めた。どこかにいるであろう、馬鹿レオンの元へと。

※※※

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貴族の屋敷が多く並ぶ都の一角。そこにあるコレーグ子爵家の屋敷の前で佇む一人の青年がいた。

レオンだ。

レオンは孤児院を出た後すぐに冒険者ギルドへと向かい、コレーグ子爵の屋敷の場所を聞き出したのだ。

その青年の表は無機質なものであった。目も先ほどと変わらず據わっており、ただ目の前のものを見上げていた。

しばらくすると、レオンは前を向き、屋敷の敷地の中へと足を踏みれる。そこで、玄関の扉の前に立っていた護衛であろう、鎧姿の男二人に聲をかけられた。

「おいクソガキ。ここがどこだか分かってんのか?」

「痛い目に會いたくなかったらさっさと帰んな」

チンピラのテンプレ的セリフを吐いた護衛。だが、レオンはまるでそこに誰もいないかのように、気にすることなく前へと進む。

「ちっ、んじゃさっさと死ね!」

護衛の男がレオンに斬りかかろうとした、その時――

――護衛の男二人の首が、宙を舞った。

首から下だけになった死が倒れる。

その死の前には、いつのまにか剣を握っていたレオンが立っている。そう、レオンがやったのだ。

だが、人を殺めたことすら気にしないかのように、扉を開け中へとっていく。

そこにはここで働いているであろう、メイドや執事がおり、急にってきた男に驚いていた。

そこでレオンは魔力の流れを探知することで、地下に一人の男との子の存在を確認する。

直後、レオンは水魔法によって大きな濁流を発生させ、屋敷にいるすべての人間を外へと流す。しだけ道路のほうにも水の被害がいってしまったが、レオンが気にする様子はない。

そしてレオンは迷うことなく地下へ続く階段を発見し降りていく。降りていくにつれ、の臭いがじ取れるようになった。しばらく降りると、鉄格子の扉が現れる。レオンは躊躇うことなく開いた。

そこには酷くえた腹をした、いかにも貴族といったような恰好をした、恐らくここの當主であろう男が鞭を使って一人のの子を痛めつけているという景が広がっていた。周りにはいつのだか分からない痕や、拷問などが転がっていた。

「ぐえっ」

「………お前が四年前の主犯か」

レオンは瞬時に男へと迫り、首を摑んで持ち上げる。

「おま、えは……?」

「質問にだけ答えろ。お前は四年前の慘劇の主犯か?」

「よっ……ねん、ま……えと、は……?」

「捕まっていた盜賊を解放し、の子を攫ってくるように命令したのはお前か」

「おっ、おれ……じゃ、ない……」

「……正直に言え」

レオンは男の首にそっと剣を添える。

「ひっ! お、お……れだっ! おれが……め……いれ、いし、たっ………」

「……そうか。眠ってろ」

「うっ」

聞きたいことは聞けたと、首に手刀を落とし、男を気絶させ橫に放り投げる。

そして、先ほどまで痛めつけられていたの子の元へと向かう。

薄布を一枚だけ羽織ったの子のには無數の傷跡が存在していた。目はうつろになっており、意識があるのか分からない。

そのの子は四年前に攫われたはずのユウちゃんだった。

「遅くなって本當にごめんな、ユウちゃん……本當に、ごめん……」

先ほどまでの無機質な表を崩し、悲しさに溢れた表をしながら、詫び始めるレオン。

そしてユウちゃんを孤児院へと転移させた。表は無機質なものへと戻ったが、あるがレオンの心を支配していた。それは『怒り』のであった。自分の不甲斐なさと、ユウをあんな目に會わせた男へのものだった。

レオンは意識を失って転がっている男の前に立つ。

――あの時の村と同じように、お前も燃えてしまえばいいんだ。お前は苦しんで死ね――

そんな考えの元、男を燃やすために火屬の魔法を放とうとしたその瞬間。

部屋の扉が開いた。そしてそこに立っていたのは――

ピンクの髪が特徴の、レオンの馴染である、カレンだった。

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