《絶対守護者の學園生活記》テンプレは案外起こりやすい

野外実習當日になった。

生徒たちは班ごとにまとまり、學園が所持する転移魔方陣が存在する建へと集められていた。もちろん俺達もだ。

転移魔方陣とはその名の通り、指定した場所へと人を転移させる魔法が込められている魔方陣だ。當然かなり貴重なものであり、この國が學園の教育に力をれていることが伝わってくる。大きさもそれなりにあり、野外実習に行く人全員をカバー出來るほどだ。なんだろう、大きな魔方陣ってなんか良いよな。前世で読んだ異世界転移系のネット小説を思い出した。そう思うとドキドキしてくるな。転移するときに「なんだ!? このは!?」とか言ってみようかな。

「そんじゃ行くぞ、お前たち」

ダルクさんがそう言って魔方陣に魔力を流し始める。

いやいやいや、なんであんたがまとめてるんだ。教師も生徒も特に不思議がっていない。え? 俺がおかしいの? あのクソ親父はいつの間にかリーダー的存在になってたの?

そんなことを考えている間に魔方陣が強く輝き、目の前の景が一瞬で変わる。

Advertisement

おいおい、ここって……。

「到著だ。今回はここの森でやるぞ。この森は比較的弱めな魔しかいないから安心しろ。全班につけるほど引率はいないからバラバラに決まった範囲を擔當することになる。何かあったらちゃんと報告しろよ? んじゃ、裝備の確認なり終わったところからどんどん行ってくれ」

そしてダルクさんは自分の持ち場であろう場所へと向かっていった。

「ねぇレオン。この森って……」

「ああ、ボーン村の森だな。あのクソ親父、絶対わざとここを選んだだろ。何考えてんだ?」

「……でも、懐かしい」

リリィが呟いた言葉に、頷き同意するカレン。そうか、この二人は五年ぶりくらいだもんな。

「なんだ? お前らこの森知ってんのか?」

「まあな。この森は俺の故郷の村に隣接してる森で昔からよく通ってたもんだ。俺達にとっては庭みたいなもんだな」

「てことは近くにお前たちの生まれた村があるのか。時間さえあれば行ってみたいな」

「うん、僕も興味があるかな」

二人は當然ながら村が既に無くなっていることは知らない。別に進んで教えることではないしな。

村、か……。あの馬鹿な男達とそれを抑える達。あのにぎやかな景を、この二人にも見せてやりたかったな。マルクなんかはすぐに溶け込めそうだ。

そこで不意に、カレンに俺の手をぎゅっと握られた。

「なんだ?」

「あんた、そのままだとが出るわよ」

なぜ? と思いながらもカレンに握られた自分の手を見る。

そこにはかなりの力が込められた握り拳があった。爪が食い込んで、今すぐにでもが噴き出してきそうだ。

どうやら俺は無意識のうちにしていたようだ。

「どうせ村を見せられないのは自分のせいだ、とか思ってたんでしょ? ひっぱたくわよ?」

「なんで!?」

「アリスに言われたこと忘れたの? 何も村を守りたかったのはレオンだけじゃない。村人達皆がそうだった。だからレオンが気にする必要はない。それよりも見てごらんなさい。急にレオンが黙ったせいでマルクとミーナが困ってるわよ」

「……忘れてねえよ。そうだな、二人の相手でもしてやるか」

「やっと調子が戻ったみたいね」

うじうじしてても仕方ないよな。うん、ポジティブ思考だ。かっとビ○グだ、俺!

「村はまた今度だな。今は野外実習に集中するぞ。ほら行こうぜ」

「そうだな、夏休みにでも行かせてもらうか」

皆が森へろうとき始めたが、すぐにきを止めた。

なぜなら、お供を二人連れた、見るからに傲慢そうな金髪イケメン野郎が正面からこちらに向かってきたからだ。

うん、俺の脳センサーがビンビンですよ。嫌な予しかしない。

「げっ」

カレンが嫌なものを見た、とばかりに聲をあげる。

「誰だか知ってるのか?」

「嫌なことにね。あいつはこの國の第一王子のエリク=フィル=ガルーダよ。街中でリリィを見かけてから気にっちゃったらしくて俺のになれってうるさいのよ。最近は大人しかったみたいだけど」

「ほほぅ……」

第一王子様。つまりはこの國の王位継承権の第一位か。そんな男がリリィを気にって手にれようとしてると。ふーん。

「おい。そろそろ俺様のになる気になったか?」

ウン、コイツコロス。イマスグコロス。

「待ってレオン君! 流石に王子様相手にそれはまずいよ!」

「離してくれミーナ! リリィを扱いするとか萬死に値する!」

「だから! 何かしたらまずいんだって!」

「止めるんじゃない! うおおおおおおおお!」

俺はクソ王子に制裁を下そうとするが、ミーナに止められてしまう。

離して、そいつ、殺せない。

「うるさいぞ、そこの愚民」

「てめぇ! リリィはじゃねえ! 今すぐ訂正しろ!」

「はん! 俺様は第一王子だぞ? 次期國王だ。民は王にとっては同然だ。そしてそれの所有権は俺様にある」

「あ?」

こいつ、マジで殺しちゃダメ? この國の未來のためにも今ここで消してしまった方がいいと思うんだけど。

「それよりも、返事を聞かせてもらおうか」

「……斷る。そもそも、あなたのことなんて知らない」

「こ、このクソめ……。父から止められてさえなければ力づくで手にれたものを……」

王様、グッジョブ! いや、王族なんだからやろうと思えば権力なりなんなり振りかざしてリリィを手にれられるのに、なんでわざわざ來たのだろうと思ってはいたが、王様がそれをじていたのか。既に國王気分のこいつにはいい薬だ。ざまあみろ。

「ふん! どうせお前はすぐに私に惚れてそちらからびてくるようになるだろう。いくぞ、お前たち!」

そう言い殘してクソ王子は去っていった。

力づくで手にれられないとなったら、今度は自分に惚れさせるときたか。なんだろう、極端すぎないか?

もしかして、第一王子って馬鹿?

うわ、いかにもテンプレっていうかなんていうか……。

クソ王子が去った後には、微妙な空気だけが殘されていたのだった。

    人が読んでいる<絶対守護者の學園生活記>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください