《絶対守護者の學園生活記》師として、親として
英雄が戻ってきた。しかも息子を連れて。
王様によってもたらされた報は大きな話題となり、全大陸へと伝わるほどのものとなっていた。
そして英雄親子のお披目と共に、英雄足りうる力を持っているかの証明として、決闘を行うという報さえもが全大陸へと広まり、他の大陸の王族や貴族までもが來る事態へと発展していた。
そして俺とダルクさんの決闘當日。俺はお馴染みとなりつつある第一訓練場の控え室にいた。
「しかしお前が英雄の息子になっていたとは……」
私も當事者だからと、一緒に付いてきたアリスが呟く。
アリスにはあらかじめ伝えてあったが、やはり簡単にはいそうですかとけれられないのだろう。
アリスは俺の本當の両親を知っているし、村が無くなった後に拾われて育てられたということは伝えてある。が、拾った人達の素は知らない。
そしてその人が英雄だったのだ。
「……驚き。レオ兄にぃは何も言ってなかった」
「なんで言わなかったのよ」
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なぜか付いてきたリリィとカレンが問い詰めてくる。
リリィは前はレオンお兄ちゃんと呼んでいたのに、この前の野外実習以來、レオ兄にぃと呼ぶようになった。しかもリリィの方から俺に甘えてくることが多くなった気がする。
あまりの変化に、しばらく放心してしまったのを覚えている。
とりあえずそのことは置いといて。
「別にわざわざ言うことじゃなかっただろ」
言ったら面倒なことになりそうだったからなぁ。
「お前が英雄の息子なぁ……」
「なんだよ」
マルクが不思議そうに言う。
そう、マルクとさらにミーナまで控え室にいるのだ。結局いつものメンバーが揃っていた。
「だって普段のお前を見てたら、英雄の息子だなんて思わないだろ。威厳とか全くじないし」
「悪かったな。威厳もなにもなくて」
「ごめんねレオン君。僕も同じ意見というかなんというか……」
「ミ、ミーナまで……」
すまんな、こんな奴で。
マルクの意見はどうでもいいがミーナにもそう思われてるのは流石に堪える。
「でもなんで急に戦うみたいなことになってるのよ」
「あぁ、それはな」
俺はチラッとアリスの方を見る。事を理解してるであろうアリスに、本當のことを伝えてもいいかどうかを確認する。
俺とアリスの婚約の発表はこの決闘の後に行われるので、今言う必要はない。
しかしアリスは小さく頷いた。伝えてもいいということだろう。
「えっと、俺とアリスが婚約することになってな。王族と婚約する為に必要な分として英雄の息子というのが必要で、疑う奴らへの証明として力を見せつけることになったってじだな」
一気に説明する。
これには文句あるやつはかかってこいやの神もあるわけだが、流石にその説明は必要ないだろう。
……? なんで誰も何も言わないんだ。
「「「えええええええぇぇぇええええ!?」」」
うおっ!? ビックリした。
急にカレンとマルクとミーナが大聲をあげた。
リリィもいつもの無表に見えるが、驚いているのが分かる。
だがすぐに落ち著きを取り戻していた。
「いや、今までの二人からしたら時間の問題だとは思ってたがな」
「だね」
「どういうことだ?」
「やっぱり無自覚だったか。傍から見たらお前らイチャイチャしてるようにしか見えなかったからな?」
「なんか通じあってるというか、年夫婦のようなじだったね」
え? そんな風に見えてたの?
「なぁ、アリスは気付いてたかって……あれ?」
さっきまで近くにいたのにアリスがいない。
そしてし離れたところでアリスとカレンが話し合っているのを発見する。何話してんだ?
俺は二人に近付き、話しかけようとしたその時。
「準備が整いました。レオン様は舞臺までお越しください」
係の人に聲を掛けられた。もう時間か。
「んじゃ行ってくるわ」
「勝ってこいよ!」
「頑張ってきてね」
マルクとミーナの応援をけ、舞臺へと向かおうとする。
「レオン!」
控え室を出る瞬間に後ろから呼ばれて振り返る。
そこにはアリスがいた。
「レオン。この戦いが終わったら、し時間を貰えるか?」
「別にいいが、何かあるのか?」
「いや、私ではなくカレンがな」
「分かった」
カレンが俺に用……。俺が何かやってしまった訳じゃないよな?
「それと……私の婿になるのなら、絶対に勝ってこい」
「はいはい、姫様の仰せのとおりに」
「やめろ。お前にそんな喋り方をされるとむずくて仕方ない」
「分かっててやった」
互いに軽口を叩きあい、笑い合う。なんかいいな、このじ。
「……さっきのミーナの表現、いいな。まさに年夫婦ってじだ」
「でしょ?」
おいそこ、聞こえてるぞ。
そんじゃ行きますか。
俺は控え室を出て、舞臺に姿を現す。
そこには既にダルクさんがいた。
「よう馬鹿息子」
「ようクソ親父」
いつもの挨拶をわし、周りを見渡す。そこには観客席を埋め盡くすほどの観客。立ち見までいるようだ。上段の方には國賓の方用の個室もある。にしても靜かだな。
「ああ、お前と落ち著いて話したいからユフィにしだけ魔法で防音してもらってるぞ」
「そうだったのか。それで何を話すんだよ」
「なーに、すぐ終わる」
瞬間、押し潰すかのような濃い殺気が辺りを埋め盡くす。戦いの場となる舞臺には周りに被害を出さないように何重にも結界が張ってあるが、それを通り越して観客席の方まで屆いているようだ。観客の人達が苦しそうにしている。
「互いに、殺す気でやろうや」
そこに、いつものふざけたような雰囲気はない。
「思えば、親のようなことは全くしてやれなかったよな」
ふっと殺気を解除したダルクさんが、懐かしむかのようにして語り出す。
「息子っつっても、ただお前を鍛え上げただけだしな。親っていうよりは師だな。なぁ、俺はしっかりとお前の親をやれてたか?」
たしかに、思い返せば親らしいことは全くしてもらってない。起きたら基礎トレ、午前にダルクさんと特訓をし、午後はユフィさんと特訓。これが普通の家庭の生活とは言えないだろう。
それでも、居場所を無くしてしまっていた俺には、充分だった。自分をけれてくれる居場所がある。それだけで俺は嬉しかった。
「誰がなんと言おうとも、親父は俺の親父だよ。親父も母さんも、俺の自慢の家族だ」
「……そうか」
安堵の表を浮かべる親父。
「割と悩んでたんだぞ?何か息子にしてやれることはないかって。それで思い付いたのはこれだった」
腰に差してある剣をコンコンと叩く親父。
「師として、親として、長は見屆けないとな。だから」
そう言って親父は剣を構えた。
「やるからには殺す気でやる。本気の戦いが出來ると思うとワクワクが抑えきれん」
不敵な笑みをこぼす親父。
今まで脳筋扱いしてきてアレだけど、訂正しなきゃな。
俺までワクワクしてきた。
「けて立つぞ、親父」
俺は手首に付けている魔力強化用のリストバンドを外し、刀・を構える。そして。
「楽しもうぜ!馬鹿息子!」
「上等だ!クソ親父!」
俺と親父の戦いが始まった。
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