《絶対守護者の學園生活記》力の恐怖

レオンとダルクは同時に相手へと迫る。

そして刀と剣が衝突する。互いのお決まりの型で打ち合う。

やるからには殺す気で。その言葉の通りに、二人の武にはかなりの魔力が流されている。

に魔力のコーティングを施すことで強化をすることが可能だが、流せる魔力量には限界量が存在している。その量は主に武の製造に使用された素材によって左右される。それを知っている者は、二人の流す魔力量に驚きの聲を上げる。

そして冒険者や騎士などの、武蕓に秀でている者は、二人の洗練されたきに嘆の聲を上げる。

一方、武蕓などをあまり知らない一般人は二人の姿に見惚れていた。いや、正確には二人の持つ武から放たれる輝きにであろう。

レオンの刀は片刃で刀は反っており、刃渡りは70cmほどと、いたって普通といえるものだったが、刀が舞臺の照明を浴びて七に輝いていた。

ダルクの剣もいたって形などに関しては普通の剣といえるものだった。しかしこちらも剣が普通ではなかった。剣全てを覆いつくす黒。ただ黒いわけではなく、こちらも照明を浴びて輝いているように見えた。

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「綺麗……」

観客席にいた誰かが呟いた。

二人の流れるかのようなき、武が放つ輝き。

いつしか訓練場に集まった、二人を除いた全ての人がただ無言で見つめていた。

二人の容姿が整っていることも要因の一つになっていたのであろうか。

永遠に続くかに思われたかに思われる景も、終わりを迎える。

二人が同時に後ろへと距離を取った。

「やっぱりこうなるよな」

「親父とやると大こうなるな」

こうなるのが當たり前だったかのように話すダルクとレオン。今までの純粋な打ち合いは様子見であった。

レオンの特訓時代に何回も手合わせをした故に分かっていたこと。

打ち合いの際に、猛者ともいえる相手に隙を見せることは致命傷となる。だからこそ、ここぞという場面でしか大振りは出來ない。避けられる、あるいはけ流されたりすると隙になってしまうからだ。

なので力で押すのではなく、手數で攻めることになる。

そして、お互いのきに対応できるほどに経験も技量もあれば、それだけ打ち合う時間は長くなる。先に疲れを見せた方が不利になっていくだろう。

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だがそこも互いのことを分かっているからこそ。相手がそんなに簡単に終わるわけがない。そして、そんな終わり方はどっちもんでいないと。

だからこその仕切り直し。

「囲みこめ!」

レオンが土魔法で壁を作る。

學園長戦でも使った戦法だが、今回は規模が違う。

ダルクを囲むように壁を作ったのだ。

(上? 橫? それとも後ろから?)

多くの者が戦う際に最も頼るであろう視界。それを塞がれたことでどこからレオンが襲い掛かってくるかを思考するダルク。

レオンは転移を使えるがために、今の狀況は不意打ちを仕掛けるにはもってこいだからだ。

(違う! 正面だ!)

襲い來る瞬間の気配を察知したダルクは瞬時に剣を大きく振り上げ

「うおおおおおおおおおおお!!」

全力で、地面に叩きつける。その衝撃で舞臺の床が大きく崩れ、突き出た床が転移によって現れたばかりのレオンを襲う。

「ぐっ」

突然襲い來るものに、なからず驚いたレオンは、それらをいなす。

だがその隙を見逃すダルクではない。

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足で地を強く踏み、全力でレオンへと詰め寄る。

それに気付いたレオンは迫りくるダルクを迎え撃とうとしたが、視界に捉えたのはダルクではなく剣だった。ダルクは剣をレオンに向かって投擲していたのだ。

レオンはそれを叩き落すが、その瞬間に目の前にダルクが現れる。

避けることも防も間に合わないと悟り、しでも襲い來るであろう衝撃にそなえる。

「うらっ!」

ダルクはレオンの腹部に思いっきり拳を叩き込んだ。

レオンはそのまま後方へと吹き飛ぶ。

飛んだ先には先程作った土壁があり、解除しようとしたが、魔法の使用や解除には集中力を要するため、今のレオンには無理であった。

「……っ!」

土壁へと背中から叩きつけられたレオンは思わず膝をつく。

(この馬鹿力め……)

心の中で悪態をつきながらも、土壁を解除する。

「まずは一発だな」

「ああ、すぐにお返しするけど……な!」

近接戦での駆け引きではダルクが有利だと判斷したレオンは魔法で攻撃を仕掛ける。

火球、水球、風刃、土弾をレオンは生み出す。それは戦場を埋め盡くすほどの量。

それら全てが通常ではありえないほどの魔力度で構された魔法であり、それらが次々へとダルクの元へと飛んでいく。

その際にさらにレオンは重力魔法を用いて、ダルクの上から圧力をかける。

「こんなん屁でもないぞ!」

しかしダルクはより増えた重力さえもものともせず、襲い來る魔法を斬り、消滅させている。

魔法は、その魔法と同等以上の魔力をぶつけることで相殺することが出來、ダルクは斬撃に魔力を乗せて飛ばすことで魔法を消滅させているのだ。

空を覆いつくすほどの數、素人でも分かるほどの圧倒的威力の魔法。さらにはそれをともせずに対処するダルク。先ほどの打ち合いや、その用途のためか頑丈に作られている訓練場の床をいとも簡単に砕した力に、最初は興して見ていた観客も、二人の圧倒的な力に恐怖を覚え始める者もいた。

そんなことには気付かずに、レオンはダルクが魔法に対処している間に考える。

(このままでは魔力が盡きる。魔法が使えなくなり、接近戦のみになれば不利になるのは目に見えてる。なら……)

魔法を全て解除し、全力で強化を施すレオン。それに気付いたダルクも自強化を施す。

重力をかけられていたにも関わらず、に異常はないようだ。

「親父、俺の最終兵を見せてやる」

「へぇ、面白そうだ」

互いに全力を出して戦えるほどの相手が中々いないからか、この本気を出せる戦いで高揚が高まり、無意識に二人は笑っていた。

「いくぞ」

レオンが宣言すると、ダルクの周りを囲い込むようにあるものが現われる。

それは剣、槍、斧――

様々な武が宙に浮かんでいた。空間魔法によって、亜空間に保管していた武を一斉に呼び出したのだ。なにとはいわないが、レオンが前世で憧れた技を元にしている。

そして、武による圧倒的弾幕がダルクを襲う。

先ほどの魔法とは違い、魔力で構されているものではないので、同じ手段は使えない。

それでも強化を施したダルクの前では関係なかった。

「どっせえええええええええええええええい!!!」

その場で回転斬りをするダルク。風圧だけで襲い來る武を吹き飛ばしていく。

だがダルクはここで油斷をしてしまった。

最終兵と言いながらも、魔法の時と同じように量で押し切る。レオンはジリ貧になっている。そう思ってしまったからこその油斷。

だからこそ、ダルクの真上にだけ武が展開されていないことに気付かなかった。

「食らえっ!」

ダルクの真上からレオンが急降下してくる。その手には刀ではなく大剣が握られていた。

レオンは全力の一撃をダルクに叩き込む。

しかし、間一髪のところでダルクは防に間に合い、上段から振り下ろされた一撃をけ止める。

「惜しかったな!」

ダルクはそのまま押し返し、レオンはその反を利用して後方へと軽く跳躍し、著地する。

「いや、これで終われば良かったんだけどな」

軽く笑いながらそう言うレオン。しかし、余裕はなさそうだ。

「そろそろ魔力が盡きそうだし、次で終わりにしてやるよ」

「そうなのか、俺はまだまだ余裕だぞ」

レオンもダルクも魔力量は尋常ではないほどある。しかしレオンは魔法を多用し、消費魔力の多い空間魔法さえも多用していた。さらに後半では強化のために常に魔力をへと流していたため、既に魔力が盡きかけている。

一方ダルクは魔力は大量にあるが、魔法を使うこと自は苦手としており、自で戦うことを主にしている。そのため、ダルクが魔力を使うとすれば武強化と強化の時ぐらいである。

今回の戦いにおいて、レオンの方が圧倒的に魔力消費量が多かった。

を刀へと戻したレオンは居合の構えをとる。ダルクも迎え撃とうと構える。

會場全が靜まり返っていた。

しばらくの時を経て、二人は同時にき出す。全力で飛び出した二人は中央で一撃をれようとする。

そして、一閃。

二人の位置がれ替わるかたちとなり、しばらくの間を置いて片方が倒れた。

倒れたのはダルクだった。

「はぁはぁはぁ……」

レオンは刀を杖代わりにして、疲労のあまり息を荒げていた。

最後の勝負を制したのはレオンであった。

これはレオンがかに用意していた布石によるものだ。

魔法攻撃による際にかけていた重力魔法。さらに大剣による上からの全力での一撃。

これらを全てけ止めたダルクは、自でも気付かないほどのわずかなダメージが腳部に與えられていた。強化により能力が大幅に上がっていたことによって、細かなところに気付けていなかったのだ。

そのダメージにより、ほとんどの人が気付かないほどだがダルクのきが鈍っていた。

駆け引きや小細工を抜きにすれば互角とされるレオンとダルクの近距離戦。だからこそその鈍りが命取りとなる。

戦いが終わりを告げ、気を失ったダルクが醫務室へと運び込まれていく。

訓練場の結界には二つ種類が存在し、ただ周りに被害がいかないようにするだけの結界とへのダメージを神的ダメージに変換する結界だ。今回は後者が使われた。

あまりの攻撃の數々に跡形もない悲慘な狀況になっている舞臺。そして今までの戦い。

戦いを知る者、あるいは貴族などはその圧倒的な力に怯えている。戦いをよく知らない者は英雄の戦いを見ることが出來て興している。

両者の反応の違いにはもちろん訳がある。

前者は人が持ちえるであろう力を優に超えるものを見たことによる恐怖、敵に回った際の事を考えたことによる怯え。

後者は英雄は民の味方であると決めつけたうえで、この人達がついているという安心や実を見れたことによる興である。

會場には様々なが渦巻いていた。

しばらくして大きなモニターが天井から降りてくる。これは王であるダフィズが、戦いを見てもよく分からなかったという人向けに、撮影用の魔道を用いて様々な角度から撮られたものを解説を含めて振り返るためだ。

そして振り返りも終わり、それぞれのがより大きくなったその時。

「ガルーダ王國王のダフィズ=フィル=ガルーダだ」

拡聲の機能をもった魔道を使って、ダフィズが話し始めた。

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