《絶対守護者の學園生活記》こんなに可いのに

ゴブリンが出現するという、王都近郊にある森林にて。

「ふっ!」

ダガーナイフを逆手に持ったミーナがゴブリンのを切り裂く。

前世でもゲームなどでよく見た緑の小人、ゴブリンが息絶え倒れる。

「おー、相変わらず速いなぁ」

実技の授業などでも度々ミーナがいてるところを見ていたが、やはり獣人なだけあって能力が高い。特に敏捷だ。一般の人族の冒険者よりも圧倒的に速い。だがその分筋力が足りないようだ。見た目150cmほどの小柄なの子なのでそこは仕方ない気がする。だからこそ數ある武の中で、比較的軽いダガーナイフを使ってきを阻害しないようにしているのであろう。致命傷は與えずらいが、そこは速さでカバーをして地道にダメージを重ねていく。それがミーナの戦闘スタイルだ。一番阻害してそうなのは主張の激しい二つの膨らみな気がしなくもないが。

そして何よりも重要なこと、それはミーナが犬の獣人であること。俺は貓より犬派だからだ。ミーナは可いなぁ。

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「……何か変な事考えてない?」

「そんなことないぞ? ミーナは可いなぁって思っただけだ」

「やっぱり変なこと考えてる! あとでないで!」

あ、無意識にミーナの頭をでてたようだ。ミーナがぷんぷんと怒っている。これじゃ俺が単なる変態みたいである。仮に俺が変態だとしても、変態という名の紳士であると言っておこう。

「すまんすまん。最近んなことがありすぎて心が荒んでて癒されたいなぁと思ってたんだ」

「だからって急にでないで! それならリリィちゃんにすればいいんじゃない?」

「リリィはなぁ……」

最近、しのマイシスターの方から積極的に俺にふれてくるようになって、逆に俺からリリィにれることに遠慮してしまうようになった。なんというか、相手からくるとドキドキしてしまう。いかんいかん、相手は例え義理だとしても妹だぞ。

「それよりも、これで依頼は完了だな」

「そうだね、ギルドに戻ろっか」

どうやらミーナは本気で怒っていたわけではなく、すぐに元に戻った。

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流石は大天使ミーナたんだ。本人に言ったら本気で怒りそうなので口には出さないが。

※※※

「はい、これで依頼達だね! お疲れ様!」

冒険者ギルドに戻った俺達は、ゴブリンの討伐証明である耳を提出することで依頼が完了したことを報告し、報酬金をけ取る。

「他の依頼はける?」

「いや、もう大分暗くなってきたし帰るよ」

「そっか、またねレオン君」

放課後に來て依頼をけたので、既に夕方になっており外はし暗い。依頼自は24時間いつでもけられるが、流石にそこまでやる必要はじなかったので今日は終わりにしよう。

手を振ってくるリーフェさんに俺達も振り返し、ギルドを出る。

帰って飯食って、シャワーでも浴びてさっさと寢

……たかったんだけどなぁ。

「おいおい、犬っころがこんなとこで何してんだぁ?」

ギルドを出た直後、後ろから聲を掛けられたので振り返る。

そこにはいかにも柄の悪そうな、ガッチリとしたをした男の獣人が立っていた。學園の制服を著ているし、ネクタイのからすると二年生か?

學生にも小遣い稼ぎとして冒険者をやっている者もいる。制服は前に學園長が言っていたとおり、耐久などが高いためそのままの格好で依頼をける者が多い。

種族としては、どうやら狼の獣人みたいだ。

「なんか用か?」

「いやなに、汚らしい犬っころがいたもんだからな」

そう言ってミーナを蔑んだ目で見る男。

あ? なんだこいつ。

「簡単に死んじまうような奴がこんな所にいるんじゃねぇ、よ!」

言い切ると同時に、男が背中に擔いでいたバルディッシュをミーナに振り下ろす。

「……騒だな、先輩」

すかさず間にり、剣でけ止める。

……この攻撃、どう考えても殺す気でやってやがる。

「弱っちい犬ッころ風が冒険者なんてやってもすぐに死んじまうってのを、をもってさせてやろうと思ってな。それにお前なら止められると分かってたしな、有名人さんよぉ」

こいつ、俺が止めることを分かっててこんなことしたのか。もし俺が割り込まなかったらミーナは死んでたんだぞ?

「おー怖い怖い。流石に學最強決定戦の前に問題なんか起こすつもりはねぇよ。んじゃな」

俺が怒りを覚え始めていると、男はそう言い殘し去って行ってしまう。

「ちっ……むかつく野郎だ。大丈夫か? ミーナ」

男が現われてから、ずっと俯いて黙っていたミーナへと話しかける。流石にあんなこと言われたら落ち込むよなぁ。

「……うん、僕は大丈夫だよ!」

ミーナはそう言って笑うが、俺にはその笑顔が、無理をしているようにしか見えなかった。

「ミーナ、本當のことを言ってくれないか?」

「な、なに言ってるのレオン君。本當に大丈夫だよ?」

「俺達は友達だろ? しぐらい頼ってくれ。こんな馬鹿な奴で悪いとは思うが」

「……なら、聞いてくれる?」

そうしてミーナは語り始めた。……馬鹿な奴ってのは否定してくれないのね。

獣人族は弱強食の種族である。最も強いとされる者が王となり、それを巡って戦うといったことも頻繁にあり、國は荒れていた。世紀末かな? そして種族差によって生まれる実力の違いによって、差別なども起きたらしい。ミーナには悪いが、たしかに犬と狼だったらスペックが全然違う。

だがそれも昔の事。英雄が活躍した例の大戦が終わると、獣人國は様々な変貌を遂げた。

最も強い者が王となるのは変わらないが、上を目指す為には國の許可を取って決闘という形で決著をつけるようになった。それを守れないようであれば罰せられるらしい。今まで見境なく起きていた戦いも収まり、國には平穏が訪れた。

種族による差別も、新しい國王が法を作ったことで無くなったらしい。

しかし、それはあくまでも平面上であった。長年付いていたものが早々変わるわけもなく、差別は隠れて行われていた。

犬の獣人はそれの被害を最もけていたらしい。人族からすれば充分高い能力でも、他の獣人からしたら底辺ともいえるものだったそうだ。

「僕の家族も差別に遭っていたんだ。そしてある日、お父さんが亡くなった。僕を庇って」

暴力を振るわれそうになったミーナを父が庇った。そしてその影響で父が亡くなった。

「僕は思ったんだ。なんでこんなことになるの? 僕たちの何がいけないの? 自分で決めることのできない出生で、どうしてこんな辛い思いをしなきゃいけないの?」

ミーナが必死に喋り続ける。そして理解する。それはまるで――

「どうして僕は、こんなにも無力なの?」

――まるで、昔の俺みたいだ。

「だから僕は學園に來たんだ。ここに來れば、何かが変わるかもしれないと思って」

人族において、貴族はその財力で家庭教師などを雇い、小さい頃から魔法などを學ぶ。平民は大きな商會の子でもない限りは財力に余裕はなく、そんなことは出來ない。

生まれによる差。これは人族においてもり立つ。

しかし、英雄が現われたことでこの考えは変わることとなる。魔族を倒した英雄は平民出だったのだ。そんな差をともせずに、英雄は圧倒的な力を見せつけた。

學園には強くなるための環境が整っている。そして、英雄を育てたとされる學園長もいる。

ここに來れば、強さを手にれられるかもしれない。変われるかもしれない。

そんな期待をに抱いて。

「だけど、なんにも変わってないみたい。さっきだって、怯えて何も出來なかった」

ミーナは力なく笑う。

「やっぱり僕には、変わる事なんて無理だったのかな」

ミーナの目から涙が零れ落ちる。

駄目だ。それで終わってしまったら、後に殘るのは後悔だけなんだ。

「……あいつをぶっ倒そう」

「え?」

「ミーナも學最強決定戦に出て、あいつを倒すんだよ」

「……そんなの無理だよ」

「無理じゃない!」

突然大聲を上げた俺に、ミーナは目を丸くする。

「もっと友達を頼れって言ったろ? 俺から見たらミーナは充分にびしろがあるぞ? ミーナの努力次第でもっと強くなれる。あいつよりも強くな。英雄の息子の言葉だ、中々の説得力だろ。それに」

最も大事なことがある。それは

「ミーナは汚らしい犬っころなんかじゃない。可の子だ」

俺はキメ顔でそう告げる。可いは正義!

だがミーナは今度は口を開いて呆けてしまっている。

「……ぷっ。あははははははははは!」

「な、なんだよ」

「いや、なんでもないよ。あは、あはははははははは!!」

急に笑い出したミーナ。その笑顔には先ほどまでの無理をしているようなじは見けられなかった。

「だって、真面目な話してたのに、急にそんな冗談言うんだもん」

「冗談じゃないんだけどなぁ」

まだおかしいのか、お腹を抑えているミーナ。ちょっと笑いすぎじゃありません?

しばらくして、やっとミーナが落ち著いた。

「……レオン君、友達としてお願い。僕をあの人に勝てるぐらいに強くして」

そう言ったミーナの瞳には確固たる決意がめられていた。

答えなんか一つしかないじゃないか。

「おう! 任せとけ!」

レオンズブートキャンプの始まりだ!

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