武闘大會まであと數日となった。

ここ最近は基本的に魔族の襲來に向けての回しに力をれていたが、今日は息抜きの日だ。

夜に他大陸の武闘大會出場メンバーとの顔合わせを目的としたパーティが行われるからだ。

親睦を深めるためのパーティでもあり、王城で行われるためかなり豪勢なものとなるが、お偉い様ばっかりのパーティではないので格式ばったものではない。そもそもマナーというものをあまり知らない俺にとっては嬉しい話だ。

そんなわけで俺は今パーティが行われる會場の前にいた。特に服裝は指定されていなかったが、一応は正裝で行くべきだろうということで燕尾服に著替え、陣が來るのを待っている。

かなり待たされるだろうと思った俺は壁に寄りかかって目を閉じ、武闘大會での対策について考える。

武闘大會は一般客も観れるようになっており、毎年かなりの観客が訪れるそうだ。

魔族が來ると分かっているため、巻き込まないためにも今年は観客の員を止めるべきだが、それはやらない方がいい。

魔族側に不自然だと思われないようにしなければいけないからだ。

フロウズ公爵家から武闘大會の報は魔族に當然流されているだろう。いつもは多くの観客で賑わっていたのに、今年は急に客をれなくなったとなれば相手が不自然だと思うのは當たり前だろう。さらにそこから我々が襲撃してくることをあらかじめ知られていたのではないかと疑われてしまう可能もある。

その場合、魔族側が報を流したのではとフロウズ公爵家に疑いの目を向けるだろう。そうしたらリーゼさんにまで被害が及ぶ。

そんなことにしないために、いつも通りを裝わなければならない。

さらに酷なことではあるが、観客には証人になってもらわなければいけない。

魔族との戦いは熾烈なものになるだろうことは想像に難くないので、かなり強力な結界を王様に用意してもらい観客席に張るつもりだ。観客にはその結界の中で俺と親父、それからリーゼさんの戦いを見てもらわなければいけない。

これには理由が二つある。

一つは、滅びたはずの魔族が生き殘っていたことに対する、國民の不安を取り除くため。

俺と親父が魔族と戦い、國民の目の前で勝利することでこの人たちがいれば安心だということを知らしめるのだ。國民を不安にさせたままにしておくことは出來ない。

二つ目は魔族撃退後のリーゼさんの扱いに対する布石。

フロウズ公爵家が通者だということは分かっているため、魔族を退けた後に摘発する予定だ。その際にリーゼさんの罪を軽くするために、観客たちの目の前で彼も魔族と戦う。

あの娘は魔族に勇敢に立ち向かっていた！

そう観客に言わせればこちらの勝ちだ。さらにリーゼさんはシャルの、この國の第一王の事を想ったが故に魔族に従っていたという経緯もある。

これらを用いて死刑にならないようにする。

大陸を追い出されるか、奴隷処分にされるかは分からないが、死からは逃れさせる。それが俺がリーゼさんを救うために出來ること。

さらに、ほぼ不可能であろうが、二つ目の理由については魔族側からの言質をとるというのが理想だ。

我々が無理矢理従わせていた。そう本人たちが言ってくれれば萬々歳。

ま、流石にないだろうけどな。

魔族の襲來に関して、他大陸の王族及び選抜メンバーの主將にのみ伝えてある。

選抜メンバーは基本的に誰もが武に優れている。魔族が連れてくるであろう魔に対処させるのが一番であろう。

かといって選抜メンバー全員にそのことを事前に伝えたら、武闘大會に集中できなくなる可能が高い。だから主將にだけ伝え、いざとなったらメンバーを纏めて王族と國民の護衛に回ってもらう。

魔族と戦うのは俺と親父とリーゼさん。魔と戦うのはそれ以外の選抜メンバーと騎士団になる。

まだ他に、しでも最善に近づけるには何をすれば……

「レオン、お待たせ！」

お、どうやら陣が來たようだ。俺は考え事を止め目を開く。

そこにはとりどりのドレスをに纏ったの子たちがいた。

そこまで仰々しいパーティではないため大人しめの清楚なドレス。それぞれが自分の髪に合わせたかのようなであり、シャルとリーゼは長い髪を纏め、お揃いにしている。

皆綺麗だとは思うが、クーだけはお遊戯會みたいで微笑ましかった。

「皆、凄く綺麗だ」

一人一人に言えなくて申し訳ないと思いつつも、率直な想を述べる。

俺の言葉をけ、頬を赤らめつつも笑ってくれる。よかった、どうにか喜んでもらえたようだ。

「それじゃ行きましょ」

カレンがそう言って俺の左腕へと自の腕を絡ませてくる。そして反対側には同じようにしてアリスが。

優先順位というのがあるのだろうか、こういう時は必ずといっていいほどこの二人が一番最初である。

俺は右腕からじるらかさに頬が緩みそうになるのを堪え、左腕の二の腕を結構な力で抓られたことからくる痛みに耐えながらも、パーティ會場の扉を開いた。