《絶対守護者の學園生活記》守る為の戦い
上空に現れる大きな裂け目。
それは俺の予想とは違ったタイミングでの魔族の襲來を示していた。
魔族に常識は通用しないってことか……
裂け目からはゆっくりとローブを被った二人の魔族と見覚えのある黒龍が3降りてくる。やっぱりリリィを襲った黒龍はお前らのだったか。
「馬鹿息子!」
「分かってるよ! 皆! 手筈通り頼む!」
一部の事を知っている人達に指示を出す。すると各學園選抜メンバーの大將が仲間を引き連れ外へと向かった。
これから戦闘にるにあたって、全員が同じ場所で戦うのは危険すぎる。味方の流れ弾に當たって負傷するなんてことが有り得るからだ。そんな所ではろくに本気を出せないであろう。
ここ、第一訓練場では俺とリーゼさん、そして親父が魔族と。そして他の皆には違う場所にて戦ってもらうことになっている。
さて、まずは黒龍共を移させないとな。
「學園長!」
「分かっておる!」
學園長が返事をすると同時に、黒龍の姿が消えた。
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學園長の魔法によって第二、第三、第四訓練場に飛ばしたからだ。
そしてそこには先程散らばったメンバー達が待ち構えている。
観客席では騎士達が今の事態を説明し、結界の外に出ないように注意しているのが見える。
さて、魔族と殺りあう前に一通りのことは終えたわけだが……
「待ってくれるとは、隨分と優しいんだな」
いつ相手が攻撃を仕掛けてくるか常に警戒していた訳だが一向に襲ってくる気配は無かった。
わざわざこちらの準備が終わるのを待つことにメリットは無いはずだろうし、黒龍達が飛ばされても何事も無かったかのように落ち著いていた。
なぜだ……?
「時間を稼ぐ事が今回の私達の目的なのでな。わざわざ手を出す必要は無い」
「時間稼ぎだと? 一なんの為に?」
「それはいずれ分かることであろう。それまでは相手をしてもらうぞ、若き英雄よ」
「そうだな、どっちみちお前らを倒せば全て解決するわけだしな」
時間稼ぎが果たして何のために行われるかは分からない。
だがこいつらを倒せばそれを気にする必要がなくなるのは確かだろう。
俺と魔族の男が話をしている間にも、あっちでも何やら話してるみたいだ。
「あれれれれ? レオンがアタシと殺りあってくれるんじゃなかったの? じゃあアタシの相手は誰?」
「俺だよ。レオンの師でありする父でもあるこの俺だ」
親父がなんか変なこと言ってるが……
「師? 父? あんた、レオンより強いじかな? アタシを楽しませてくれるのかなかな?」
「退屈はさせないぞ」
「ほんとにほんと? これ、防げる? ほら!」
魔族のが瞬時に親父に詰め寄り蹴りを放つ。かなり鋭い一撃だが見えない訳では無い。
親父はそれを剣で防ごうとしたその時、間に割り込む人影が見えた。
「あなたの相手は私ですよ。借りを全て返させていただきます」
「おろ? またあんた?」
影の正はシャルだった。大鎌によって蹴りをけ止めていた。
「シャル!? なんで來たんだ!?」
「ごめんなさいレオン君。この人は私に任せてほしいんです」
シャルがどうしてそんなことを言うのかはなんとなく分かっている。
俺の背に殘っている傷。シャルを庇ったがために出來たこの傷を消すにはあのを倒さなければならない。
シャルはそのケジメをつけにきたのだろう。
自分のせいで俺を傷つけてしまったことに対するケジメを。
その気持ちは嬉しい。だが
「生半可な相手じゃないんだ! 俺になにか負い目をじてるなら気にしなくていい! だから皆のところに戻れ!」
「嫌です! 私はあなたに救われた! だから今度は私があなたを助ける番です! 絶対に戻りません!」
どうやら本気のようだ。俺を見つめる瞳からは確固たる決意が読み取れる。
「……レオン君、シャルの願いを聞いてあげてください」
「リーゼさん? なにを……?」
「の子っていうのは、好きな人の為なら頑張れちゃう生きなんですよ?」
こんな時に一なにを。
そう思ったが口にすることは出來なかった。なぜなら、好きな人の為に剣にを捧げたの子を知っているから。
大好きな姉の為に、力をにつけたの子。
「……分かった。絶対に死ぬなよ!シャル!」
「! ええ、分かってます。してますよ、レオン君!」
「ああ! 俺もしてる! シャルのフォロー頼んだぞ、親父!」
「了解した! 俺もしてるぞ馬鹿息子!」
「うるせぇ! 集中しろクソ親父!」
ったく……
「待たせたな。そろそろ始めようか」
「人というのは実に興味深いな。恩を返すために命を賭けるとは」
「そうだな、婚約者なのに問答無用で毆ってきたり、しっかりしてるように見えて実はかなり抜けてたり、んな人がいて飽きないよな。だから――」
脳裏に浮かぶのは、俺にとって大切な人達。
そして、これまでの皆で笑いあった幸せな日々。
失うわけにはいかない、全て。
「俺が絶対に守ってみせる。かかってこい、魔族」
「私の名はゴラム。手合わせ願おう、若き英雄よ」
戦いの火蓋が、切って落とされた。
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