《絶対守護者の學園生活記》家族
というわけでやってきました學園祭。何がというわけなのかは分からんが。
學園祭は今日と明日の計二日間で行われる。各クラスで々と出しをやって、外からのお客さんもれてのよくあるじの學園祭だ。
俺は特に仕事はないので屋敷の皆と回ろうと思ったんだが、俺とは違って自分の仕事というのは當然あるそうなので暇ではないらしい。この言い方だと俺がヒモみたいだな。
というわけで皆が空いてる時間を確認したところ、見事にバラバラだった。
そして最終的に決まったのが俺と一対一での學園祭デートだ。人數が多いので一人當たりの時間がないのが惜しいが、その短時間が楽しいものとなるかは俺次第ってことになる。気合れていこう。
初日最初の相手はソフィ先輩とクーだ。いきなり一対一ではない気がするが、気にしない。
「人がゴミのようにいっぱい~」
「クーさんや、それは心の中に留めておこうね?」
いきなり娘の弾発言で開幕した。
今は真ん中にいるクーが右手を俺と、左手をソフィ先輩と繋いでいる狀態だ。傍から見たら仲良し親子に見えんのかね。
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「ごっはん~ごっはん~」
機嫌よさそうなクー。なんでもこの學園祭がやたらと楽しみだったらしい。いっぱい食べたかったらしく、起きてから何も食べていない。
最近食べ盛りであるの緩んだ顔は、周りにいた人たちが魅了されるほどの微笑ましさだ。辺り一帯が癒し空間になっている。
「パパ! ママ! はやくいこ!」
「はいはい、何から食べたいんだ?」
「うーんとね~、甘いの!」
「甘いのか……だったら私のクラスがクレープを出しているぞ」
「クレープ食べる!」
クレープと聞いて目を輝かせるクー。これがたまに切り刻むとか言い出す子供だと誰が思うだろうか。やめるように教えてるのにやめないんだよなあ……
そして三人でソフィ先輩のクラスへとった。やたらと列が出來ていたが、すぐに理由が分かった。
「いらっしゃいま……なんだ、お前らか」
アリスが売り子をやっていたからだ。だし第二王でもあるアリスはまさに高嶺の花。そりゃ客も來るわな。
「アリスお姉ちゃん! クレープください!」
「ほら、落とさないようにするんだぞ? おまけにソフィにもやろう」
「はーい!」と笑顔でけ取るクーの頭をでるアリス。ソフィ先輩も素直におまけのクレープをけ取る。
俺たちはその後、座れる場所を探して見つけたベンチに座った。
笑顔で味しそうに食べるクーをソフィ先輩と一緒に見守る。小みたいにはむはむと食べている姿は可らしい。
「ほらクー、頬にクリームが付いてるぞ」
「こっち?」
「違う、ほら取ってやる」
ソフィ先輩がハンカチを取り出してクーのほっぺについたクリームを拭き取る。その姿はまさにお母さん。母選手権一位は余裕だな。
「これでよし……そうだレオン。一口どうだ?」
「お、貰おうかな」
ソフィ先輩が「あーん」と言いながらクレープを差し出してくる。俺はし恥ずかしかったが意を決してかぶりついた。
それを見てソフィ先輩は満足そうにしている。
それからもソフィ先輩は俺にひたすら食べさせ続けてきた。ついにはクーまで真似し始めて、最終的に俺がほとんど食べたようなものになった。
二人ともなんだか嬉しそうだしいいか。
「すまんな、ほとんど俺が食べちゃって」
「ふふ、別に気にしなくていい。妻としては、夫が味そうに食べる姿を見るのは良きことだからな」
「妻、ねぇ……」
嬉しいことを言ってくれるソフィ先輩だったが、俺はその言葉にひっかかりをじた。
その原因は分かっている。
それはソフィ先輩が常に『良き妻』を演じようとしているからだ。
普段から割とがっついてくるカレンや、二人きりになると覚醒モードになって甘えてくるミーナ。それに俺に抱き著くのが癖になりつつおるアリスなど、積極的な彼等とは対照的に、一歩引いたじなのがソフィ先輩だ。
夫に奉仕するのが妻として當たり前、妻が子供の世話をするのは當たり前。妻が家事をするのは當たり前。まさに男にとっては理想的な『良き妻』なのかもしれない。
普段のソフィ先輩からはまさにそんな風な印象をける。
だからこそ気になるのだ。本當にそれがソフィ先輩のむものなのかと。
を深めあえ。その親父の言葉通りにするなら、このことは避けては通れないと思う。聞くなら今だ。
「ソフィ先輩、大事な話がある」
「……なら場所を移そう。屋敷に転移してくれるか?」
「ああ」
學園祭が楽しみですぐには寢付けなかったため寢不足なのか、クーが眠そうにしていたので丁度良いだろう。三人で屋敷に戻ると、ソフィ先輩はクーを部屋に寢かしつけにいく。
そして今は俺の部屋で二人で隣合ってベッドに腰掛けている。
いまいち話を切り出すタイミングが摑めなくて無言になってしまったが、しばらくしてソフィ先輩が口を開いた。
「それで? 話とはなんだ?」
「なんというか……単刀直に言うぞ? ソフィ先輩はなんで『良き妻』にこだわってるんだ?」
「それは……私にとってレオン達は大事な大事な家族だからだ」 
家族? 婚約してるし義理とはいえ娘もいるし正しいことではあるんが、それが何か関係あるのか?
「私には家族はいなかったからな」
「!!」
そうか……ソフィ先輩はクローンなんだ。俺を含めた他の皆とは違って生まれた時から獨りだったんだ。 ソフィ先輩を拾ってくれた人はいたが、その時のソフィ先輩はただ復讐のことだけを考えていた。先輩にとっては世話をしてくれる都合のいい存在だっただけなのかもしれない。
「だが、そんな私にも家族が出來たんだ。後は死ぬだけだった私の生きる意味になってくれた男。私を母親だと慕ってくれる娘。クローンである私を迎えれてくれる皆。そんな家族が」
ここまで聞けば自然と理解した。
きっとソフィ先輩は怖かったんだ。家族を失うことが。
前にソフィ先輩自が言っていた。私は生きていてはいけない存在だからと。それがいつしか大事な家族が出來るような存在になったのだ。
だが俺達は意志を持った生きだ。何かを拍子に嫌気が差して離れ離れになるかもしれない。傍から消え去ってしまうかもしれない。
だから『良き妻』を演じ、さらに俺への過度な接はしないことで他の皆との不和が起きないようにしてるのではないか。
だからこそ、はっきりと伝えてやらなきゃいけない。
「俺はありのままのソフィ先輩が、ソフィが見たい。それが例えどんなものであろうとも、俺達はずっとソフィの家族だ。それを誓う」
俺の誓いを聞いたソフィの目に戸いが見え隠れしている。
「……私はレオンに救われて、本當に嬉しかったんだ。そんなレオンを、私はしている。しすぎているといっても過言ではないほどだ」
「男にとってみれば泣いて喜ぶことだと思うけどな」
「もっと甘えてもいいのか?」
「おう」
「もっとくっついていてもいいのか?」
「おう」
「もっと……もっともっと、これから先もずっと一緒にいてくれるか?」
「むしろこちらからお願いしたいぐらいだ」
そうか……と小さく呟くと、ソフィは俺の元に顔をうずめるようにして抱き著いてきた。
「すまん……しばらくこのままでいさせてくれ」
「お好きなだけどうぞ」
元に冷たさをじる。ソフィは泣いているのかもしれない。しかし悲しみからくる涙ではない。
それはきっと――
「これからはたっぷりと甘えてやるからな! 覚悟しろレオン!」
――嬉しからくる涙だからだ。
顔を上げ、俺と目を合わせてきたソフィ先輩の心からの笑顔が、それを教えてくれていた。
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