《絶対守護者の學園生活記》家政婦の魔族

俺は今親父の家の元空き部屋にいる。なぜ元なのかというと、今現在はこの部屋にベットが二つ置いてあり、そこに寢ている人がいるからだ。

その人とはゴラムとシミル。世界を滅ぼすために魔王の復活を畫策し、武闘大會の時に襲撃してきた魔族。俺が転移させた後、急に意識を失い、あれから目を覚まさない。

武闘大會で俺とシャルは無事にこの二人を倒したが、トドメは刺さなかった。これには二つ理由がある。

一つ目はこの二人が行に出たのは復讐のためであり、その原因となった出來事があまりにも理不盡極まりないことだったからだ。

過去に起きた大戦で、大切な娘が目の前で辱められ、そして殺された。その景を何も出來ずに見ている事しか出來なかった二人は無力な自分達を恨み、爭いなどが起こる世界を憎んだ。

する娘へのせめてもの手向けとしての復讐でもあった。

そんな事を知って同し、二人を保護するなんて、俺はとんだ甘ちゃんなんだろう。

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二つ目は納得出來ないことがあったから。確かに負のが二人を支配していたのは分かった。だからといって、世界を滅ぼすなどと大層なことを普通は考えるだろうか?

強大な力を持つ魔王ならともかく、たった二人の魔族だけで世界を敵に回そうなどとは考えない。だからこそ魔王を復活させようと企んだわけだが、失敗する確率が圧倒的に高いのは誰でも分かる。それでも挑んだのだ。

ここで俺が疑問に思ったのが本當に自分の意思だったのかということ。娘を大切にしているような優しい格の持ち主がそんな行に出るだろうか?出るにしても相手は世界ではなく娘を殺した野郎共だと俺は思う。

ともかく、いくら俺が考えたところで真相にたどり著くことはない。もし本當に自分の意思で復讐を果たそうとしていたのなら死刑以外で相応の罰はけさせるつもりだし、他の何かの意思が絡んでいたのなら頼みたいことがある。

そしてここに俺がいる理由は親父から「あいつらそろそろ起きそうな気がする」と連絡を貰ったからだ。親父の「気がする」はほぼほぼ當たる。

「う、うぅぅ……」

どうやらゴラムが起きたようだ。続いてシミルも起きて、辺りをきょろきょろ見渡すと俺の方を向く。

ここからが重要だ。何を言ってくるかで今後の対応が決まると言ってもいいほど、最初の言葉の重みが深い。

「……ここはどこだ?なぜ私はここにいる?そして君は誰なんだ?」

――――ビンゴだ。

ゴラムの様子からも噓を言ってるとは思えない。られていた際の記憶を消されているのだろう。

実はある予測を立てていた。以前にクソ王子がリリィを手にれる為に何者かの協力を得て黒龍を呼び寄せるという事件が起きた。しかしその事件の解決後、クソ王子はその協力者のことを何一つ覚えてはいなかった。

つまり相手は記憶、あるいは神を作することが出來るのではないか?そんな能力があるなら誰彼構わずに使えばいいだろうが、そんな集団催眠のようなことが起きたことは確認されていない。つまりその能力を使うには何かしらの條件がある。例えば、心が弱っている者などにしか効果を発揮しないとか。

娘を失い、心に傷を負ったところにつけ込まれた。魔王を復活させるように仕向けられたのではないか。そして使いにならなくなったら洩を防ぐためにも記憶を消される。

結局これも推測でしかないが、ゴラムの発言により、この可能が高まっただけでも充分な収穫だ。後は魔王に直接聞いてやる。

々と説明しますから、落ち著いて聞いてくださいね」

っている二人にこれまでのことを話す。黙って聞いていた二人の顔が、申し訳ないというようなものへと変わっていく。

「本當にすまない。私達に出來ることなら何でもする。この命も捧げる覚悟だ」

「いや、いいんです。幸い何も被害は出なかったので」

「しかしそれでは……」

まぁやったことがやったことだから何も無しというのも納得出來ないのだろう。ゴラムが食い下がってくる。

「ならこれはどうです? もうすぐ俺に確か妹が出來るんです。父はこの先仕事で々と忙しいですし、母は子育てで大変です。なので家政婦として働くというのはいかがですかね?」

そう、母さんのお腹の中にいるのはの子らしい。つまり妹が増える。それはそうと、親父は生まれてくる子供に恥ずかしい姿は見せられないからと仕事を始めるらしい。騎士団の指南役だっけか?そうするとこの家には母さんしか殘らず、子供の世話に家事もとなると大変だろう。だからこその家政婦だ。……ゴラムは男だし家政夫?まぁそれはどうでもいい。

「本當にいいのか?」

「ええ。本當にいいんです」

「……ありがとう。そして、これからよろしく」

そして握手を求められた。しっかりと返し、俺は帰ることにした。詳しいことは親父達と話してもらうことにしよう。

これで殘る問題事は魔王との一騎打ちだけになった。

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