《絶対守護者の學園生活記》ご報告
突然だけど、僕は今困っている。
「お前って凄い奴だったんだな!」
「俺と手合わせしてくれ!」
「こ、この後時間あるか……?」
久しぶりに母國である獣人國に帰省して懐かしい街並みをゆっくりと散歩していると、いつの間にか僕は多くの人に囲まれていた。次々と投げかけられるのは稱賛の聲と決闘を申し込む聲。なぜかモジモジしながらこの後の予定を聞いてくる人もいた。
多分だけどこれはレオンくんの存在が関わっているんだと思う。魔族を撃退して『絶対守護者』の稱號を手にれ、いまや世界最強と言われているレオンくんの妻である僕。
……自分で妻っていうのはなんか恥ずかしい。
それはともかく、そんなレオンくんの妻達もかなりの猛者だという話が広がっているのをこの前、シャルちゃんが持ってきたワイン片手に談笑しているときに聞いた。あの時に飲んだワインは味しかったなあ。そういえばお母さんはワイン好きだったっけ。
し話は逸れたけど実際に猛者揃いというのは本當の事だと思うし、僕だって冒険者ランクは最高位のSになっている。さらにこの話は獣人國の王であるハンナ様が積極的に広めているらしい。
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そんなわけで獣人の本能として強者であろう僕を尊敬し、決闘をんでいるのだと思う。
正直、前までは僕を弱者として蔑んでいたような人達がこうやって好意的になってくるのはあまり良い気分じゃない。獣人としては仕方ないのだろうけど、なんだかなあと思わずにはいられない。私も同じ獣人のはずだけどそこまで戦いたいと思わないのはレオンくん達に染まってきたのかな。
そもそも今回僕が帰省してきたのはお母さんへの顔見せ、それにレオンくんが改めて挨拶したいらしいから。そのレオンくんは急に仕事がってまだこっちには來てないけど、後でちゃんと來てくれるそうだ。
それそうと、うーん……。この人達にはどう対応すればいいんだろう。
とりあえず予定があるからと斷ってみると大の人が渋々といったじで離れて行ってくれた。
けど
「な! しぐらい手合わせしてくれよ!!」
一人だけしつこい人がいる。相當鈍なのか、はたまた自分に自信があるのか。凄い勢いで詰め寄ってくる。こ、ここまで近寄られるとちょっと怖い……
「おい!! さっさと答えねぇか!!!」
慌てて離れた僕を追う様にして男の腕がびてきて――――
「何してんだてめぇ」
僕まで屆くことなく、止まった。
「レオン……くん……?」
僕の目の前にはレオンくんがいた。男の腕を摑んで、睨みつけている。
「俺のミーナに何か用か?」
男の摑まれた腕からはミシミシっと鳴ってはいけない音が聞こえ、レオンくんから放たれている殺気に怯えてガクガクブルブルと震えている。
それにしても俺のミーナだって!えへへ………
「何か用かって聞いてんだよ。あぁ!?」
「ご、ごめんなさいいいいいいい!!!!!」
レオンくんが腕を離すと男はあっという間にいなくなった。それにしても怒ってるのは分かるけどここまで荒い口調になったことあったっけ?何かあったのかな?
「ふぅ、大丈夫だったか?」
「うん! ありがとう! ところで何か嫌なことでもあったの? 口調がいつもと違ったけど」
「嫌なことならさっきあったばっかりなんだが」
「さっきのじゃなくて、それよりもっと前にだよ」
「あぁ……」
急にレオンくんは遠い目をし始めた。も、もしかして聞いちゃいけなかったのかな……?
張のあまり僕はゴクリと生唾を飲みこむ。そして帰ってきた答えは――――
「ルミナさんに渡そうと用意していたワインが誰かに飲まれてたんだ……」
………ん?お母さんに?
「ほら、ルミナさんってたしかワイン好きだったろ? だから買っといたんだけどな……まあ注意書きを殘さなかった俺が悪い」
ははは、と乾いた笑いをしているレオンくん。
うん、アレだね。多分僕とシャルが飲んだやつだと思う。最近ワインを飲んだ人は僕達しかいないし十中八九當たりだ。
……ごめんね、レオンくん。
※※※
「いらっしゃいレオン君」
「お邪魔しますルミナさん」
僕の実家に著くとお母さんが出迎えてくれた。そのままリビングに行き、一息つく。
「それにしても男前になったわねぇレオン君」
「そうですかね?皆に想つかされないようにだしなみには気を付けるようにはしてるんですけど」
「あらあら、素晴らしい心掛けねぇ」
たしかにレオンくんは髪をしっかりと整えているし、服裝もぴっしりとしている。服の上からでもその引き締まったが分かるし、上手く表せないけど格好良い。元々顔は整っていたけど、特に目立つのが目。キリッとした、力強いが燈った目は頼もしさをじさせる。落ち著いた雰囲気も合わさって大人らしい。
騎士団の騎士達でのレオンくんの評価はかなり高いらしい。むむむ……
「うーん、やっぱり私もミーナ達の仲間にれてもらおうかしら?」
「へ?ルミナさんそれは一……?」
「私もそろそろ新しい人を探そうかなって思ってたところだったのよねぇ」
新しい人?どういうこと?
…………!?
「駄目!それは駄目ええぇぇぇぇええ!!!!」
急いで隣にいるレオンくんの腕を摑んで引き寄せる。
「駄目だからねお母さん!レオンくんは渡さないよ!!」
うぅ、この人は相変わらず油斷できない…………
それにお母さんは年の割に若々しく見えて二十代と言われてもおかしくはない。仕掛けでもされたら本當に危ないかも……
「冗談よ冗談。そんなにプルプルして涙目になっちゃって、我が娘ながらいつ見ても可いわねぇ。レオン君もそう思うでしょ?」
「あはは、そうですね」
うぅ、ううう…………
「本當に冗談だからそんなに睨まないの。でもずっと一人は寂しいからもっと顔を見せに來るのよ?それと早く孫の顔が見たいわぁ」
「ま、孫!?」
それってつまり、僕とレオンくんの子供ってことだよね……?
子供、子供かぁ。きっと可くて元気な子が生まれるんだろうなぁ。あ、でも産む時ってかなり痛いって聞くよね。でもレオンくんとの子供なら頑張れる。長したらママーって言いながらちょこちょこと後ろをついてきたりするのかな?そんな姿も可いんだろうなぁ…………
レオンくんは子供の扱いも得意だし、きっと幸せな家庭になるよね。良いなぁ…………
「見てレオン君。ミーナったら幸せそうな顔してトリップしてるわよ」
「ええ、かわいいですね」
………………ん?なんで僕はお母さんとレオンくんに頭をでられてるんだろう?
「ミーナも戻ってきたことだし、そろそろ本題にりましょう?今日はどんな用で來たの?」
「結婚式の招待狀を渡そうと思いまして」
「あら、ありがとう」
レオンくんが封筒を渡す。そういえば親しい人達には送らないで直接渡してるんだっけ。結婚式、楽しみだなぁ。
「ねぇレオン君」
封筒をけ取ったお母さんは真剣な顔になっていた。そのままじっとレオンくんを見つめる。
「娘をよろしくお願いします」
お母さんは座ったままではあるが頭を下げた。するとレオンくんは
「はいお任せ下さい。絶対に幸せにします」
力強く答えてくれた。これが僕の、自慢のお婿さんです。でもねレオンくん?
君のおかげで、僕は既に幸せいっぱいなんだよ?
この後、レオンくんは僕のお父さんのお墓の前でも同じように意思表明をしてくれた。
ありがとうレオンくん、大好きだよ。
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