《絶対守護者の學園生活記》しずつゆっくりと

今日は一年生の野外実習が行われる日です。実際に魔と戦ってもらい、覚悟をさせようという行事。

私が教師としてこの學園に赴任してから三度目となりましたが、いままで怪我人はいないので、今年も出さないように頑張りたいと思います。

それに今回はレオン君が付いてきてくれます。世界最強とさえ言われる騎士団長がいればより安全になること間違いなしでしょう。

その肝心の人がまだ來ていませんが……時間ですし先に始めておきましょう。

「皆さん集まりましたね? 班員が全員揃ったかどうか、しっかりと裝備は整っているか今一度確認してください」

私の言葉に生徒達は「はーい」と答えてくれます。素直なのはいいですけど、素直すぎてし不安になったりもします。

生徒たちを待っていると騎士団の到著の知らせが屆きました。間に合ったようですね。

そしてすぐに騎士のお方が三人ってきました……レオン君がいませんね、どこでしょう。聞いてみるとそのまま紹介を始めていいとのことです。

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「今回は騎士団の方々が付いてきてくれます。それでは順番に紹介を――――」

始めようとした、その時でした。

「ちょっと待ったああああああああぁぁぁ!!!!」

急に上から聞こえてくる聲。そちらを向いてみれば見知った人が落ちてくるではありませんか。

ドッシーン!という凄い音とともに著地したその人は……レオン君でした。衝撃で地面がへこんでますね。

「昔親父がやったことを真似てみたが………案外楽しいな」

まさかの親譲り。とんだお騒がせ親子ですね。特に驚かない私は覚が麻痺してしまったのでしょうか?

「というわけで我が國が誇る騎士団、そのトップであるレオン=ガーディアさんが付いてきてくれます」

「よろしくな」

え!? 今の登場に対する説明は!? と訴える生徒達の目を華麗にスルーしてさっさと実習地へと向かいましょう。

レオン君と添い遂げると決めてから學んだことは、適度にツッコミ適度にスルーです。レオン君の前では子供のようにはしゃいでしまうシャルに対しても同じく。シャルに関しては微笑ましくていいんですけどね。

そして転移したのはお馴染みの森。レオン君やカレンちゃん、リリィちゃんの故郷である村の近くにあるものです。そしてレオン君と魔王との決戦の地のすぐ傍でもあります。

弱い魔しか出ませんがしっかりと注意をしてから野外実習の開始です。皆が無事に終われますように。

「それじゃ監視範囲は前に説明した通りな。俺は基本的に拠點にいるから何かあったらすぐに知らせること」

し離れて場所ではレオン君が部下に指示を出しています。格好良いです。

「終わったら団長の奢りで飯ですね!」

「ちゃんと働いたらな」

「あ、俺は娼館がいいっす!!!」

「馬鹿! 聲がでかい!!」

急いで手で口を塞ぐレオン君でしたが殘念ですね、聞こえてしまいました。こちらをチラチラと見てくるので笑顔を返してあげると顔を青ざめました。格好悪いです。

學園側の方にも指示は行き渡りました。私も見回りに參りましょう。

「お嬢さん、お一人ですか?」

「間に合ってるので結構です」

「あはは、相変わらず厳しいなあ」

私に軽い口調で話しかけてきたのは同時期に赴任した教師の……名前を忘れました。キザな男なのでそのままキザ男さんと呼びましょう。………前までの私ならちゃんと名前も覚えてたはずですが、これはやはりレオン君達といた影響ですかね。私は悪いです。

「どう? この後は二人で見回らないかい?」

「それぞれ擔當個所を決めましたよね? ちゃんと従ってください」

「そんな堅いこと言わずにさぁ」

し、しつこい……

かといって強引に突き放すのも憚られます。キザ男さんは生徒、というよりかは子生徒から人気があります。無駄に顔も良くての子に対してだけは優しいですからね。……なんで教師をやれてるのでしょうか。なので手を出しにくいのが辛いところです。もし手を出したら生徒達からどんな苦が來るやら。

と、ここで慣れた気配が近付いてくるのをじました。どうしてこう毎回いいタイミングで來るのでしょうか。頼もしすぎて惚れ直してしまいます。

「はいストーップ。大人しく仕事に戻ってくれるか?」

ふっと現れたのはレオン君でした。きが見えなかったですし、また実力を上げたようです。

「今は生徒達の安全を守るっていう大事な大事な仕事のはずだぞ? お前はこんなところで何をしてるんだ?」

「君には関係ないだろう? これは僕とリーゼリットさんの問題だから、君はさっさと戻りなよ。目障りだ」

プツン、と何かが切れる音がしました。ああ、これはマジ切れというやつですね。

「てめーが……」

「ん? 何かな? 聲が小さすぎて聞こえないよ」

レオン君の怒りに気付いてないのか煽る煽る。キザ男さん、ご愁傷さまです。レオン君はかなりの分なのにそこまで出來るとは逆に心してしまいます。

「てめーの方が目障りなんだ さっさと消えないと殺すぞこのキザ男が」

まさかのスマイル。語尾が弾み、音符マークが付いていてもおかしくはないですね。凄い殺気です。それに言葉が完全にそっちの人の言葉遣いですよ。というかネーミングセンスが同じですね。

こんな殺気を當てられたら耐のない人なんてすぐ気絶ですね。キザ男は白目をむいていました。

「落ち著いてください」

レオン君の顔を私のへと引き寄せてギュッと抱き締めます。これをやると彼は落ち著きますし、個人的にもこの行為は好きだったりします。

「もう大丈夫だ、ありがとな」

「こんなでよければいくらでも貸しますよ」

「それはまた夜にでもたっぷりとな」

「………顔を赤くしながら言われても」

「うるへー」

いですねえ。前にシャルが言っていた、からかわれた時のレオン君の反応は可いというのは本當のようです。

「にして今どきあんな奴がいるもんなんだな」

そう言うとレオン君はキザ男を生徒用に準備されていた醫療スペースへと運び、戻ってきました。

「レオン君、助けてくださりありがとうございました」

「いいんだよ。ここであんなことされるのが癪にっただけだ」

「思い出の地、ですものね……」

「ああ………」

想いを馳せるかのように遠くを見つめるレオン君がそこにはいました。皆の中では新參者である私が知る事の出來ないレオン君の過去。生まれ故郷で過ごした時間は彼にとってはとても大事なものだったのでしょう。それだけの思い出がここに詰まっています。

そんなレオン君を見ていて私は――――

なぜか怖くて――――

「リーゼさん?」

気付けばレオン君の服の袖を摘まんでいました。

なぜかレオン君が遠いところに行ってしまうような気がして、ここではないどこかにいる気がして。

「あっ……」

思わずれてしまった聲。レオン君がそっと抱きしめてくれました。

伝わる溫もりが、力の込められた腕が、確かにレオン君がここにいるのだと教えてくれました。

「もう何も心配しなくていいんです」

何を、とは聞かなかった。いえ、聞けませんでした。

私もなぜこう思ったのか分からない。

だけれど、分からないからこそ、これからも一緒に探していくのだと思います。

一緒に笑い、苦しみ、悲しみ、喜び――――

なんて、そんな大層なものなのではないのかもしれませんね。

でもこの気持ちははっきりと分かっていますから。

これからもよろしくお願いしますね?

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