《絶対守護者の學園生活記》願わくば
ついに迎えた結婚式當日。
俺は目の前にドン!と建っている立派な白亜の教會を見上げていた。ここが結婚式の會場となる。
遠足前日の夜のように楽しみ――――いや、むしろ張であまり眠れなかった俺は早朝からここに訪れていた。今日ばかりは流石にということで朝の鍛錬もなく、また眠れそうにもなかったので散歩がてら會場を見に來たのだ。
式は午後からの予定なので當然人気は無い。
「慨深いものがあるな………」
人生においての一種の節目になるであろう行事を前にして、俺の口から自然と言葉がれた。
これまで本當に々なことがあった。驚きの連続だ。
そもそも転生という時點で普通ではないし、前世で流があった人達には今でも急に亡くなってしまって申し訳ないと思っている。
両親を悲しんでいるだろうか、親友は元気でやっているだろうか、保育園の子供達は俺の事をひきずったりはしないだろうか。
もう葉わないだろうが、一度でもいいから皆に會いたいなぁ……
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「なに傷に浸ってるのよ。格好良いとでも思ってるの?」
「似合わないからやめた方がいいですよ?」
前世に想いを馳せていると、いつの間にかカレンとシャルが隣に立っていた。てか出會って早々言葉が辛辣すぎませんかね……
「最近は影のある男がモテるんだよ。さっきの俺はまさにそんなじだっただろ?」
「え? 禿げのある男?」
「禿げじゃなくて影な。俺は今もふさふさだ」
「カレン、レオン君にもれられたくないことはあるのですよ」
「ちょっとシャルさん? 俺が禿げを気にしてるていで話進めるのやめてくれます?」
「あ……ごめんねレオン」
「そんな目で俺を見ないで!!!」
可哀相なものを見る目を俺に向けてくるカレンとシャル。冗談だと分かっているからいいんだが、やはり俺はこの二人には勝てないようだ。………くそぅ。
でもこうやって俺をからかってくる時の二人は機嫌が良いというのは普段の付き合いから理解している。今日という日が関係しているのだろうか。だとしたら嬉しい。
「それはそうと朝食の時間よ。さっさと屋敷に戻りましょ」
「皆待ってますよ」
「そりゃ急がないとな」
二人を連れ添って屋敷へと戻った。朝食が終われば式の準備が始まることだろう。
俺は今、新郎用の控室にいる。式を目前に控え、スタッフさん方によってなりを整えさせられた。黒のタキシードにを包むと結婚するんだと改めて実させられる。
「お、しっかりキマッているじゃないか」
「……レオン、良い」
「親父に母さんか」
鏡で自分の姿を確認していると両親が顔を出す。褒められるのは嬉しいな。
「お前の嫁さん達の準備が終わったそうだ。花嫁姿を見せようとこっちに向かってるぞ。ほれ、噂をすれば……」
部屋の外から幾つかの足音が聞こえてくる。扉の前あたりでそれが止まると扉がやや暴に開かれた。
「お、おぉ……」
ってきた皆の姿を見て、俺は思わず嘆の聲をらした。
皆が違うのドレスを著ようと最初は案が出ていたが、一ならいいが八ともなると戦隊モノを思い浮かべてしまうという俺の個人的な事により白で統一することとなった。それに白の方が皆の綺麗な髪が映えると思った。その代わりにそれぞれ違うタイプのドレスを著ている。
肩を出し健康的なを見せつけているのもあれば、ドラマなどでよく見た裾が長いものなど、どれもがその人にピッタリのチョイスだ。とりあえずアリスとソフィの主張が凄まじいお様には心の中で拝んでおこう。
誰かの視線が突き刺さるのをじるが気にしない。
「皆、凄く綺麗だ」
月並みな想しか言えなかったが皆嬉しそうに微笑んでくれた。いや、一人だけいまだに睨んできていた。
「カレン」
「なによ」
「俺はカレンの小さいだって好きだからな」
「せいっ!」
カレンが放った鋭い一撃が俺の腹にる!だが鍛え続けてきた俺の腹筋にはそんな攻撃など通用しない!
………噓です、めっちゃ痛いです。カレンの攻撃には防力無視の貫通能力でも付いてるのだろうか。
まあカレンも本気で怒ってるわけではないのですぐにいつも通りになった。俺も渇をれてもらったことで張も解れた。
さて、行きますか。
※※※
結婚式本番。多くの來賓が見守る中で場をし、花嫁を見た人達の息を呑む音や嘆の聲が聞こえる。そんな中俺達は神父の言葉を待っている。
これから行うのは誓いの言葉。大事な大事な宣言を前に張が戻ってくるかと思ったがそんなことは無かった。
なぜなら
「えーっと、汝健やかなるときも、病めるときも、それから……喜びのときも――――」
詰まりながらも進行をしていくのは神父姿の親父だったからだ。ウン、オレはナニモツッコマナイヨ。
「――――悲しみのときも、富めると………めんどくせえ! 以下省略!!」
神父失格の発言をするがここにいるのは基本的には親父の自由奔放さを知っている人達だ。苦笑はすれど非難はしなかった。
仕事を放棄した親父は俺の前に立つとガシッと両肩を摑んできた。見つめ合うこととなった親父の目は真剣そのものだ。
「お前なら分かってるだろ? この世界で生きるということを」
いきなり何言ってんだとは思わない。転生者同士だからこそこれだけで伝わるものがある。
前世とは違ってこの世界は命が軽い。魔だっているし盜賊だっている。殺すことを生業とした者だっている。一歩安全圏から出ればそこには死が待ちけている!!
とまあそこまでひどくはないけれど、とにかく危ないってわけでして。
つまり親父が確かめたかったのは大切な人達を守る覚悟があるのかってことだろう。
そんなの最初から決まってる。
「分かってるよ。息子を信じろ」
「……そうだな」
ふっと笑うと親父は一歩下がった。
俺は嫁一人一人に問いかけていく。
「カレン、これからも俺を支えていってくれるか?」
「あんたは危なっかしいから支えてあげるわよ。しょうがなくだけど」
ツンデレ乙、と言ったら頭を叩かれた。
「マイシスター、マイワイフに代わる覚悟はあるかい?」
「……イエス、ボス」
どんな會話してんのよとツッコミがどこからかった。うん、リリィはノリが良くてよろしい。
「その指、大切にしてくれよ?」
「命盡き果てるその時まで、大切にしてみせよう」
自の左手をぎゅっと抱いたアリスは嬉し涙を流していた。
「ほーれ、わしゃわしゃわしゃ」
「ふわぁ………」
いままで鍛え上げてきたでスキルを最大限発揮すると、犬っ娘はけそうになっていた。
「俺は貴の生きる意味になれていますか?」
「當然だ」
力強いの燈った瞳が、俺をしっかりと捉えていた。
「出來ればもうし大人しくなってください」
「嫌です♪」
王様の完璧スマイルは文句をすべて封殺する。
「ほんと……ほんとリーゼさんがいてくれて助かってます。今後ともよろしくお願いします」
「こちらこそ」
真面目は深々とお辭儀してくれた。
「行き遅れという肩書からはおさらばですね」
「ついにだよ! ルルちゃんに自慢しちゃった!」
ルルさんごめんなさい。
計八人。問いかけというか軽口をたたいただけなような気がするが。
ともかく、だ。
「これからもよろしくな」
俺の言葉に、皆はしっかりと頷いてくれた。
これからは家族として互いを支えあっていくんだ。こんなに幸せなことはない。
皆を連れ添って外に出ると、國民達が溫かく祝福してくれた。綺麗に響き渡る鐘の音と、溢れる笑顔。
願わくば、俺達の歩む道の先に輝かしい未來のあらんことを。
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