《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第一話 日常
――痛い、いたい、イタイ。
習慣となってしまった暴力。
それがほぼ公然と行われているのだから、もはやこの學校に味方はいないといえるだろう。クラスメイトは言うまでもなく、先生だって俺の態度に嫌気がさしているはずなのだから……
しかもだ、奴らに暴力をけた後では、授業なんかに集中できるわけもなく、授業態度はもちろんのことだが、連なって績さえも右肩下がり。ただでさえ績が良い方では無かった俺がそうなってしまえば、當たり前のように先生の期待からは外れてしまう。
そうして俺の味方はどこにもいなくなっていた。
ことの始まりは學してすぐのことだった。
いや、學することが決まった時からかもしれない。
私立天運學高等學校。
俺が現在通っている國トップクラスの実績を持つ高校の通稱だ。
この學校は學基準が國最難関といわれており、公式に公開はされていないがおおよそ一般試での合格率はわずか10パーセント前後だと言われ、この學校が推薦と言うのスカウト活によって過半數以上の生徒を募っている。それ故の數字でもあるが、その合格難易度は他の高校に比べるとはるかに高いと言えるだろう。
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そんな學校に俺は通っている。
それも推薦によって。つまり俺はかなり優秀な生徒という肩書きでこの學校に學することとなっていたのだ。
しかしだ。俺にはこれといって実績もなかった。謙遜ではなく、何一つ優秀と言える能力もない。
本來ならば俺はこの學校に推薦で選ばれるどころか、試をけてもることが出來ないくらいに凡才なのだ。
ならばどうしてこんな俺がこの學校にれたのか。しかも推薦という枠で。
それにはごく簡単な理由があった。
裏口學。
そう、この學校の創設者兼理事長である高月創玄は、俺こと高月助の叔父、今となっては義父となっている男なのだ。
親の死は突然だった。
通事故、しかも俺を庇ったことで重癥を負い帰らぬ人となった。
その時から俺の人生が大きく歪み始めたのだ。
元々明るい方だと自覚していた俺の格も見る影もなくり、仲の良かった妹との関係も悪くなった。
そして、一番の変化が叔父である、創元が父親になったことだ。
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その話は半年ほど経ち、ようやく親の死に向き會えるようになったころに舞い降りた。
初めは喜びもした。
あの天下に轟く高校の創設者の息子になれると聞いた時は。
だがその喜びはすぐさま打ち崩され、絶した。
その叔父は自分の思い通りにするためにはどんな手を使ってでも葉える外道な男であることを知ってしまったのだ。
創玄が義父になったころは、俺はすでに中學卒業が間近に迫っていた時期だった。
親が他界した俺には進學の考えなど微塵もなく、加えて義父である創玄は生活費を最小限手渡すだけで家には帰ってこない。そのため俺は妹の將來の為に手に職をつけようかと考えていた。
だがそんな時にふらりと創玄が現れ、俺に予想もしなかったことを告げたのだ。
「お前は天運學高校に通うことになった」と。
もちろんそれを「はい、そうですか」と済ませられる訳がなく困した。しかし叔父から渡された學証明書には間違いなく俺の名前が記されてあったのだ。そして理解する。
この男の本質を。
何を企んでいるのか分からなかった。
だが斷ろうものなら何をされるか分からない。だから俺は素直に頷いた。
こうして俺はあの超有名エリート校へと學が決まったのだ。
しかし不安だった。
俺には才能の欠片もないのだ。その俺があんな天才たちの學校に行くのはかなり怖かった。
この學校に來る人は本の天才たちだ。俺にはその人たちに付いていける、やっていける自信がなかった。
――そして予は的中した。
待っていたのは繰り返されるいじめの日々。
みんなに無視されるのはまだかわいい方。今では當たり前のように暴力も日常と化した。
最低でも友達ができないくらいに思っていた俺の考えは甘かった。
しかも創玄もそれを知っていて何も言わない節がある。もしかするとそのために俺をこの學校にれたのかもしれないとまで思うほどだ。
俺には一つ心當たりがあった。
ここの生徒たちは今まで、有り余る才能を思う存分使い生きてきた。つまり今まで周りには自分より下か、良くて同程度の存在しかいなかったのだ。
だがこの學校には天才たちしかいない。初めて知る敗北に焦り、苛立ち、怒りを覚えたはずだ。初めて知る挫折、それが彼らにとってどれほど耐えがたいものか、當たり前だが常人の俺に知る由はない。
しかしその鬱憤こそが俺のイジメの原因であることは疑いようがなかった。
というのも天才たちの穏やかではない心を落ち著けるには、今までと同じように見下すことが出來る相手を用意したら解決するのだから。そして俺がその対象となった。當たり前だ、俺は紛れもなく凡人なのだから。
つまり俺がこの學校に學した時點でめられるのは確定したも同然だったのだ。
創玄はそうした生徒たちのガス抜きとして俺を學させたのかもしれなかった。
「おら助、立てよ」
教室で人目もはばからず飛ぶ罵聲。
俺は蹴られた。
擔任の先生こそいないものの、ほとんどの生徒はこの場にいる。だが誰一人として助けようというものはいない。
むしろその行為を促すような聲もかけられていた。
「げほっ、ごほっ」
「ははは、汚ねえ」
胃から込み上げる酸味に思わずむせる。
それを見てこの暴行の主犯である山中大將やまなかだいすけがゲラゲラと笑う。
「おらよ!」
また蹴られる。また、また、また。
このに加わっているのは、4人。
主に大將にびている取り巻きたちだ。左から順に黒井俊祐くろいしゅんすけ、坂下功樹さかしたこうき、上本敦うえもとあつしに大將を加えた4人。
どいつもこいつも見てくれだけの不良どもだ。
「何だその目は?」
「ぶっ殺すぞ」
思わず挑発的な目をしてしまった俺に再び蹴りをれる大將。
もう何度目かわからないその暴力に俺はもはや諦めのを抱いていた。
いっそ退學になった方が楽だと。それとも不登校になるか。
だが理事長で義父である創玄がそれを許さなかった。もし俺が學校をさぼるようなことがあれば、妹さえも人質にとることは間違いない。
自分の不甲斐なさに泣きたくなる。
そんな時だ。
「な、なんだ!?」
「ゆ、床がって……」
突然クラスメイト達がざわざわと騒いていた。
そういえば目の前が真っ白な気がする。ただの幻覚だと思ってたが、皆の反応を見る限り違うらしい。
「クソ、なにも見えねえ」
大將の悪態が聞こえてくる。ということは彼の仕業でもなさそうだ。
そうして段々とが増していき視界がつぶれていく。
そして全てが消え去った。
視界はもちろん、さっきまでうるさかったクラスメイト達の聲も、口に広がっていたの味も、胃酸の臭いも。
そしてを支配していた痛みも。
その真っ白な世界には何もなかった。
自分がどのような勢でいるのかも分からない。聲を発しようと思っても聞こえない。
天國? 真っ先に思ったのはそれだ。
痛みに耐えかねて俺は死んでしまったのかと。
そんな俺の聞こえないはずの耳に音が響いた。
「やあコウスケ君。機嫌はいかが?」
無機質な聲が聞こえてくる。
だが方向覚はおろか、自分のさえもどうなっているか分からない今の狀況では、その聲がどこからきているのか、いったい何者なのか、まるで見えてこない。
「自分のを想像して、あ、健全な方ね」
再び無機質な聲が響く。
怪しいのは言うまでもないが、かと言って何もすることはない。なら従うしかなかった。
俺はその聲に従うまま、自分の顔、を思い浮かべる。
すると途端に自分の五がはっきりしてきているのをじる。
「これは……?」
「まあ魂だけの狀態だからね、想像した通りの形になっているはずだよ」
聲の言う通り、俺のは傷一つない狀態で存在していた。
さっきまであんなに蹴られたのに、何も異常をじない。
いつぶりだろうか。こんなに快適ななのは。
「さても出來たわけだし、早速お話したいところなんだけど……」
聲が何か話したがっているようだが、今の俺はそれよりも自分のを確認したかった。
「そうだよね、まず現狀確認。うん、良い心がけだ」
話を無視したのに何故か褒められた。
そういえば褒められるのもいつぶりだろう。
「そろそろいいかな?」
「あ、はい」
どこに聲の主がいるかは分からないが、とりあえず頷いておいた。
「あ、そっか。僕のイメージがつかめないからも見えてないのか」
と聲が一人でに納得し、続いてこう発した。
「僕は君らの言うところの神様だ。どうだい、イメージがつかめたかな?」
かみ?
というとあの神だよな。紙なわけはないし、髪のわけもない。
そう思うと途端に目の前にぼやけた郭の人が現れた。
「まだ曖昧ってじかな? まあいいや、老人にされるのはもう飽きたし」
再び一人で納得し、神と名乗る存在は頷く。
「じゃあ自己紹介は終わりとして、早速本題だ、コウスケ君」
何故名前を知っているのか、ここはどこなのか、俺はどうなったのか。
々聞きたいことがあったが、今は目の前の神様とやらの話を聞いておこう。
「君たち・・は異世界に転移することになった」
「え?」
その神の言葉に俺は言葉を失った。
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