《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第二話 捨てる神あれば
今思えば、俺は二度目の他人による無理強いにあっているのだ。
一度目はもちろん、叔父にれさせられた高校。そして二度目が……
異世界。
単語だけで言えば、今までの地球とは違う世界というイメージは摑める。そこに転移。
その言いから拒否権はないように思える。
「ことのり行きは、君たちとは別の世界の人たち、つまり異世界人がこちらの世界から人を呼び寄せる魔法を発させたのが発端なんだ」
相変わらず俺には選択権というものが與えられていないらしい。
學校強制學に続いて、次は異世界強制召喚と來た。
飛躍しすぎではあるが、強制という點では共通している。
それに誰だって馴染みの場所から離れるのは抵抗がある。もちろんそれは俺も例外ではない。嫌かといわれればもちろん嫌だった。
だが一つだけ興味を惹かれる単語があった。魔法だ。
「魔法は君が思っている通りの認識で間違いない。それに君たちの世界にはそういった事が記されている創作もあるね」
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俺だってライトノベルを嗜んだことはある。
だから神の言いたいことは分かった。だがそれでもすぐに「はい、分かりました」なんて納得できるわけがない。
「そうだよね、急に言われたって困るものは困るよねぇ」
神が自的な笑みを浮かべてそう言った。
というのも神と話している間に、段々と神の郭がハッキリとまとまってきているからだ。それによって表もだいぶ見えるようになってきた。
神が言ったように、俺のイメージがまとまってきた影響なのだろう。
「そうだね」
そう神の肯定。
加えて言えば、俺はさっきから何も口にしていない。全て心の中で思ったことを神が勝手に答えているのだ。
それなのに會話が通じているということは、
「ご名答、僕は君の心の聲が聞こえているよ」
やはりそうだったらしい。何か変な気分だ。
「安心して、そこまで深くは見ないからさ」
「……お願いします」
出來れば記憶も見られたくない。
もしかすると見るまでもなく、俺の事を知っているのかもしれないけどさ。
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「……まあいいや、コウスケ君、早速だけど君のスキルを確認させてもらうね」
変な間のあと、神はそういった。
その間が何を意味するのかは、れない方が良さそうだ。
そう思った後、神の言葉を味する。
スキル? ゲームのあれだろうか。
ならもしかすると、俺にも不思議な力が宿っているのかもしれない。
例えば、チートとか……ないな。
そんな下らない事を考えている俺の元に、今までの落ち著いた様子とは打って変わって素っ頓狂な聲を上げる神の聲音が響いてきた。
「ええっ! 何で神級スキルが!?」
「あの、どうしたんです?」
「あ、えーっと」
さっきまで流暢に話していた神様が噓のように今ではしどろもどろに口ごもっていた。
どう考えたっておかしい。そんな態度をとられれば、ますます気になってくるではないか。
「そうだよね、隠す必要はないか。君のスキルだし」
「俺の……」
どうやら本當に俺にも不思議な力が宿っているようだった。
これは期待が高まる。
「君のスキルは技能創造スキルメーカー、自在にスキルを作り出せるスキルだよ」
「……えっと」
神の言葉は意味が分からなかった。
どこから突っ込んでいいか分からない。
スキルを作り出せるスキルだなんて、そんなものスキルとしての範疇を超えている気がするのだが、気のせいだろうか。
そんな俺の思考を読み取ったのか、神が頭を抱えながら言った。
「そうなんだよ、本來これは神の力の一つ……のはずなんだけど」
聞き捨てならない言葉が聞こえた。
「神の力?」
「う、うん、そうなんだ」
「それがどうして?」
「それが分からないんだよね」
神でも分からないことがあるらしい。
「全能ではあっても全知ではないからね、特に他の神の事だとね……」
しばらくブツブツと不機嫌そうな顔で聲を出していた神は自らの思考の世界へとって行ってしまった。
しばらくそれを眺める俺。
だが流石は神といったところか。直ぐに切り替えてこちらを見據える。
「まあいいか、々イレギュラーが起こっただけだ」
し冷めたようにじる口調で神はそう言い、続けて言葉を発する。
「じゃあついでにそのスキルの説明でもしようか」
まだ良く分かっていないが、願ってもないことだ。
「君の技能創造スキルメーカーがスキルを作るスキルっていうのはさっきも言ったけど、その言葉の意味に何の噓もないよ」
「じゃあ、本當に」
「うん、そのままの意味だ」
それならとんでもない最強なスキルではないだろうか。
そうなるとやはり気になる。でもどうして俺なんかにそんな大層なスキルがあるのかと。
「それは僕の方でも調べておくから気にしないで良いよ、うーん、そうだなぁ、折角だし今スキルを作ってみるか」
「で、出來るんですか?」
まさかそのチートスキルを今すぐに使用できるなんて思っても見なかった。てっきり異世界に行ってからじゃないと無理、なんて展開になると思っていたのだ。だけどそんなことはないらしい。
語の展開上、力の使い方について指導者がいるのはとてもラッキーではないだろうか。
「もちろん、じゃあまず……そっかスキルそのものが何か知らないんだったね」
しまった、と顔を覆う神。
どこか憎めない、そして親近を抱くそんな存在だ。
神相手に変なじがするが。
「スキルっていうのは何となく分かってるよね?」
「多は」
ゲームのあれのイメージだが。
「それで相違ないよ、無敵っていうスキルがあったら無敵になるし、化っていうスキルなら明になれる」
どうやら本當にイメージ通りらしい。
そんなもの地球にあったら一大事である。
「そこでだ、君の最初のスキルは隠蔽、そして鑑定にしてもいいかな?」
「隠蔽? 鑑定?」
さっきの例で挙げた二つと比べるとどう考えたって強そうに聞こえない。
「こちらの都合で申し訳ないんだけど、その技能創造スキルメーカーは人間に持っていることがバレると々不味くてね、バレようもんなら君はすぐさま捕獲されて、実験臺になっちゃう恐れだってある」
それを聞くと、隠蔽は必要不可欠だと思った。異世界に行ってまで実験のモルモットになんてなりたくない。
「そのスキルは他言無用。これだけは絶対に守ってね」
神は一層口調を強めて、俺に念を押した。
そこから本當にバラしてはいけないのだと伝わってくる。
「鑑定はただ単純に君のためを思ってだよ、きっと君のスキルはかなり多くなっていくはずだ、そこでその鑑定スキルがあれば今自分がどのスキルを保有しているか分かるように出來る」
聞くだけでは、今必ず必要なスキルではなさそうだが、確かに便利ではありそうだ。
「そうだね、今は必要ないかもしれない。でも君の技能創造スキルメーカーには弱點があるんだ」
「弱點?」
「そう、まあそれは人ので保有しているが故の欠陥なんだけど、簡単に言うと、技能創造スキルメーカーによって君が作れるスキルは、君が実際に見てじたスキルしか創造できないんだ、まあそのための鑑定なんだけど」
神が告げた弱點はかなり大きな欠陥だった。
どうやらそれも人間のであるが故のことらしいが。
「だから鑑定なんていう他人に影響を與えない、つまり君が経験できないスキルは、僕がいるに作ってあげようと思ってね」
「なるほど、お願いします」
そういうと早速神が俺の頭に手を置いた。
すると、
名前 コウスケ・タカツキ
技能 鑑定
目の前にこのような文字列が現れる。
どうやらこれが鑑定スキルの力いうものらしい。現に鑑定というスキルは記されているし。
でも隠蔽という文字はどこにも見當たらなかった。
不思議に思い神を見ると、
「それは今から君が作るんだ、さあ僕のスキルを鑑定してごらん」
突然の振りに戸うが、直ぐに鑑定の仕方が頭に浮かんできた。
ただ見たいと思う対象を見つめて、鑑定したいと思うだけだ。
思った通りそうすると、
名前 不明
技能 隠蔽
先ほどのように文字列が目の前に現れる。
あまりにも簡素なため々気になるが、まあ名前を隠すスキルもあるのだと考えると何ら不自然なことはない。
「見えたね、さあこれで隠蔽スキルを経験したことになった、早速創ってごらん」
さっきと同じように頭に浮かんだ技能創造スキルメーカーの使い方を実行する。
鑑定と似たようなじで、作りたいスキルを念じるだけのようだ。
【経験確認、スキル『隠蔽』創造可能】
「うぉっ」
急に脳に流れた音聲に、思わず聲を上げる。
そんな俺に神はクスクスと笑い聲をあげ、口を開いた。
「言うのを忘れてたよ、神造技能は大抵音聲アナウンスがついてくるんだ」
言うのが遅い説明をけて俺は再び創造の作業を再開する。
【スキル『隠蔽』創造完了。殘りスキル枠1】
さて隠蔽は創れた。だが再び分からない點が出てくる。
「スキル枠はその魂に刻めるスキルの殘り総數のことだね。今の君には殘り1つしかスキルを新しく創り出せないってこと」
「え」
再び発見された技能創造スキルメーカーの弱點。
どうやらこれも人であることが足枷となっているみたいだ。
「まあ安心して、魂っていうのは長するものだ。君の頑張り次第ではスキル枠は無限に増え続ける」
その神の言葉で俺はほっと息を吐く。
もしスキル枠が増えないものだったら、このスキルは無用の産。寶の持ち腐れとなっていたところだった。
そこでスキルについての話は一段落した。
「さてそろそろ異世界について話をしようか」
「お願いします」
次に異世界そのものを教えてもらえることになった。
知識は大事だ。特に見ず知らずの土地ではかなり。
「君の行くことになった世界は、君の予想通り魔法と呼ばれるものを主として構されている」
それについてはおおよそ予想通りだった。
もし異世界に魔法はなく科學が発展してると言われたなら、拍子抜けだ。
「そして魔王と呼ばれる存在が人間の繁栄・・を脅かしている」
魔王。聞くからに悪者っぽい響きで俺たちの世界では諸悪の源のようなイメージが先行している。
まあ実際そうなのかもしれないが。
ただその存在が脅かしているのが、人間の存続ではなく繁栄と言ったところがし気になった。
その思考に気づいてか、神はし微笑む。
「そして最後に君は魔王を討伐するために人類の希、勇者として異世界へ召喚される」
「勇者……」
その流れから何となく予想はついていた。
人類の敵である魔王を討伐するのは勇者と相場が決まっている。そしてその勇者が異世界から招かれた不思議な存在だということも。
つまり今回、その勇者に當たるのが俺たちだということだ。
「これで一通り話し終えた。……そうだな、ここから先はし記憶をいじっておこうか」
途端に神がそんな不穏なことをらす。
「な、なにを?」
神の腕が俺の頭にび、れた瞬間に俺の意識は薄まる。
「これから話すことは――」
そんな神の聲が聞こえた気がするが、俺の意識はなくなった。
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