《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第四話 絶

真っ暗だ。

それは俺が目を覚まして直ぐ思ったことの一つである。

その他には異常な気と土臭さ、とても不快じる。

つまり最後に殘っている記憶の場所ではないことは間違いなかった。

つまり気を失う前のあの時の會話の通り、俺は地下牢にれられてしまったのだろうか。

場所が場所だけにその推理の信憑はかなり高いといえる。

「っ痛、が……」

起き上がろうとすると、に激痛が走った。

骨折までは言ってないだろうが、全打撲であろう俺のは起き上がるのにもかなりの痛みが出るほどの怪我を負ってしまったようだった。

なら立ち上がらなければいいのだ。

立ってどうする、立ってもここが牢獄だとするなら、何も意味をなさない。それどころかまた痛めつけられる可能だってある。

そんなのは嫌だ。もうこのままここで大人しく……

不満と暗闇、加えて痛みが相まって、俺の希こそぎ奪っていき、正反対の絶に染め上げていった。

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痛い、怖い、酷い、辛い、苦しい、寂しい。

負のが溢れ出る。

俺の味方はいないのか。

今更ながらそんな甘い考えがよぎる。

「はははっ」

乾いた笑みがれる。

そんな甘い考え、とうに捨てたはずだったのに。

そうだそもそも俺には味方なんていなかった。學で疎遠になった妹だって心では俺の事を邪魔に思っていたのかもしれない。きっとそうだ、全てが俺の敵だったんだ。俺が気づいていなかっただけできっと沙良も……

今思うと、今までの癒しも、思い出も、幸せも、全てが噓に塗り固められた醜悪なものに見えてくる。

そうか俺には味方なんていなかったんだ。

「くそっ」

乾ききったはずの目から涙が溢れ出す。

俺は一何のために……

「くそっ」

握り拳をつくり地面を毆りつける。

痛い。

そんなの當然だ。

「くそっ」

それでも俺は何度も何度も地面を叩き続けた。

意味のある行なんかじゃないことは重々承知だ。ただの八つ當たりにしか過ぎない。

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それでもその悔しさをどこかにぶつけたかった。

もう人生なんて……

しまいにはそう考え始めていた。

折角の異世界なのだ。

俺の死に場所としては中々に素晴らしい場所ではないか。

人生を諦める。

真っ黒な絶に呑まれかけた俺の元へ、足音が聞こえて來た。

そして、

「おい、起きたか?」

聲が聞こえた。

「返事をしろ」

それは何度も聞き慣れている。

これは他人を蔑む聲だ。

「おい!」

無視するのは簡単だ。

でもこれ以上怒らせてしまっては自分のに危害が加わる。

そう臆病風に吹かれて、俺は口を開いた。

「……はい」

自分の思ったよりも枯れた聲。

俺はどれほどの間、気を失っていたのだろうか。

「それでいい、ついてこい。取り調べだ」

足音が近くまで寄って來て、俺は強引に起き上がらせられ、引っ張られた。

痛みのあまりに思わず出るき聲。

だがそれでも構わないとばかりに、俺を引っ張る男は足を止めることなく進んでいった。

しばらく歩いた。

そこから分かるとおり、この施設はそれほどまでに広い。

獄なんて考えても直ぐに迷子になってしまうほどには広い。

でもまあそもそも獄なんて出來る気もする気ももはや起きないのだが。

「ここにれ」

そうして案されたのは錆びついた扉の前だ。所々にへこみや傷があり、それを見るだけでも、俺はその部屋にりたくないと本能的にじてしまった。

「早くれ」

男に押されて、俺は転がるようにその部屋へった。

その部屋の裝は、

拷問部屋、まさにその表現があっていた。

「さあ、そこに座りなさい」

先に部屋で待っていた男

その男が俺に向かってそう言葉をかけた。

は、先ほどの男より口調が穏やかで、この部屋の番をするようには見えないほど、しっかりしたなりをしていた。

だがそれが逆に薄気味悪さを醸し出している。

「まずは自己紹介をしようか、私の名前はガンド。君は?」

「……コウスケ」

噓などをつく気力もない。

今はただ平穏に終えたい、それだけだった。

「では取り調べを始めよう。うん、いきなりだけど単刀直に聞くよ、君は魔王の手下なのかい?」

男の問い。

答えはもちろんNO。

俺は首を振った。

「ふむ、しかし勇者召喚で勇者スキルを持たぬものなど先例がない」

顎に手を置き自答する男。

そんなことを言われたって知らないものは知らない。むしろそちら側が把握するべき容である。

だが男はすぐに閃いたとばかりに俺へと向き直り、

「君のスキルは隠蔽以外に何がある? 異世界人であるならばスキルを答えられるだろう?」

と質問してきた。

異世界人であるならば、という言い回しに俺は顔を顰める。これでは鑑定スキルを持っていないという言い訳が通じないからだ。

しかもあの言い回しだと、勇者として召喚された異世界人は例外なく自分のスキルを把握した狀態で召喚されたということだ。

そこから推測するに、神が口頭でスキルを告げたか、異世界人が鑑定スキルを持っていたかの二択だ。

いずれにせよ、俺は自分の持っているスキルを告げなくてはいけない狀況にあることは確かだった。

正直悩ましい質問だった。俺のスキルは言わずもがな、既に知られている『隠蔽』に『鑑定』、そしてそもそも隠蔽を付けた意味である『技能創造スキルメーカー』の3つ。

先の2つは言っても問題ないが、技能創造スキルメーカーだけは絶対に言ってはいけない。

「噓はいけないよ? ちゃんと全部のスキルを言うんだ」

男の追及。

俺は神の念押しを思い出して、重い口を開いた。

「……鑑定です」

「ほお、鑑定を持っていると」

男が口角を上げた。

「な、何か?」

その不気味な表に俺は揺する。

何もへまはしていないはずだ。

「鑑定スキルを持っているのが本當なら、自らのスキルを知っているということが異世界人であるという証明にはり得ないなぁ」

「は……?」

自分の淺はかな発現を悔やんだ。

まさかそういう解釈に至るなんて思いもよらなかったのだ。

つまり異世界人が自分のスキルを知っている理由は、鑑定スキルによってではなく、神から告げられる、という方だったのだ。

そしてそもそも俺は大將のスキルを鑑定していたのだ。その時奴のスキルに鑑定なんて文字はなかった。

自分の淺はかさを悔やむ。

「実に殘念だよ」

口ではああいっても、男の目は笑っていた。

この男、はなから俺を信用するつもりはなかったらしい。それどころか犯罪者に仕立て上げるつもりでいる。

「それに鑑定スキル持ちはスパイには必須條件。おや、ますます証拠が整ってきましたねぇ」

卑しい笑みを浮かべてそういう男。

あまりにもわざとらしい演技ではあるが、俺にはもうそれを否定できるほどの材料は持ち合わせていない。

いや、とっくに諦めていたのではないか。なぜ俺は助かろうともがいているんだ。

「ふふ、言い返す気力もありませんか。ではお認めになったということで、これから報を吐いてもらいましょう」

「何も知らない」

本當の事だ。

だが信じてもらえる狀況下に無いことは俺が一番知っている。

「そうですか、ではいつまで知らないと言い張れるのか楽しみですねぇ」

そう言い、男は壁に掛けてある様々な拷問に手をばした。

「や、やめ……ろ」

嫌な予が全を駆け巡った。

あのを見れば誰もがそう思うだろう。

これ以上の苦痛はないと思っていた。

でも地獄はこれからだっていうのか。

ふざけるな。

「嫌だ、來るな!」

必死に暴れるが、手足が拘束されていて逃げられない。

そうしている間にも男がゆっくりとを手にして近づいている。

そして俺の目の前に顔を近づけていった。

「君が噓さえつかなければ良かったんだよ?」

「噓なんて、言ってない」

その地獄から抜け出すために、あらん限りの聲を張り上げる。

だが男の笑みは変わらない。

「じゃあもう一つだけ種明かしをしようか、私のスキルに『真偽』というスキルがある、そしてこれは相手の噓を見破ることが出來るんだ」

その言葉に俺は目を見開いた。

ということは、あの時だ。

自分のスキルを告げた時。俺はそこで唯一噓をついた。

それが原因。

なら俺は一どうすれば良かったんだ。

本當のことを言っても、俺は実験臺にされる。

鑑定スキルの事だって、噓をついても俺は見抜かれていたというわけか。

つまり最初から俺は詰んでいたのだ。

親の後見人に叔父がなったときから、俺の人生は狂い始めていたのだ。

もし異世界に來なくたって、俺はあの連中からいじめをけ続けて、いずれは死んでいたかもしれない。

遅かれ早かれ、俺の人生はもう……

人生の不條理に憎しみをじるより先に、俺の心は諦めを選んだ。

いっそのこと殺してしいと。

名前 マハリート・ガンド

スキル 真偽 鑑定 吸収 耐毒 直

無意識に開いた鑑定結果。

にも彼の言葉は真実だった。

「理解したかな? じゃ洗いざらい吐こうか」

男が笑みを浮かべたまま、俺にを近づけてくる。

いくら生を諦めたとはいえ、痛いのは嫌だった。

もう苦しみたくない、もう痛い思いはしたくない。

「や、やめ――」

その言葉を最後に俺の聲は悲鳴に変わった。

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