《負け組だった俺と制限されたチートスキル》第二十四話 もう一つの勇者

この里が俺たち赤い目、あの男が言うに、魔人を拘束して研究する共同

それはつまり、カノスガが俺に対して行っていた事と全く同じ事、そのものだ。

そんなまさか、何てありがちのは特に湧いてこない。

何しろ、この里には昨日來て一泊したというだけの関係なのだ。深いは全くといっていいほど無かった。

ただアルトに関してだけは別だ。

あの善意の塊であるアルトが裏にこんなどす黒いものを隠していたなんて、到底信じられない。

確かに親切すぎて逆に怪しいとじていた、ミリルも恐らくはそうじていただろう。

いや、返ってあの親切はやましい事があったからと解釈すれば腑に落ちる。

無償の善意なんてものはないのだと、改めて見直せたいい機會だったのだ。

「で? 手伝うか?」

男がニヤリと笑みを浮かべながら俺にそう尋ねてきた。

この狀況で手伝うといえば一つ。

人殺しの手伝いである。

こいつらが皆カノスガの協力者だったならば、問答無用で殺していただろうが、他人からその事実を聞いたからか、いまいち実が無かった。

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復讐心も燃え上がるどころか、燻ったまま。

どこか他人事のようにじている自分がいるのだろう。そうじていた。

俺にはこの男の言うような、赤い目の同族という観念はないのだ。

俺は一人で復讐をし遂げようとしていたのだから。

つまり復讐対象は、俺に害を與えてきたものだけ。そこに仲間、友、同族がけた害はらない。

俺にとっては、他人がどういう扱いをけようが大したことではないのだ。

「何だ、気が乗らないか?」

「まあな」

男の言葉に俺はそう返事をした。

確かに気が乗らない。

俺が憎悪を抱くのは復讐対象者だけ、決して人殺しに快楽を覚えるような人間になった覚えはないのだ。

「まあ良い」

男はそれだけ言って剣を抜いた。

初めて見る景だ。

とはいえ、今までも目に見えない速度で抜いていたのだろうが。

そして男が殺戮を開始しようとした、その時。

複數の足音が里のり口の方から聞こえてきた。

間違いなく、魔対峙に出かけた男たちの凱旋だ。

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「む、貴様の言ったとおりになったな」

「え?」

男の意図が分からず、思わず聞き返す。

「人気のある場所で人殺しは効率が悪いという話だ」

「ああ」

納得した。

確かに、、子どもだけならこの男の手を煩わせることはなかったはずだ。

しかし多數の男達を相手取らなければならない今の狀況は、この男でも多は面倒にじるのだろう、それでその発言なのだと、俺は思っていた。

だが実際は――

「コウスケ……君?」

アルトの聲が聞こえた。

見れば帰ってきた男達の先頭を歩いている青年、その人がアルトであることに気が付く。流石はお偉いさん、中々の待遇である。

何て呑気に考えながら、俺はアルトの顔を見る。

その顔はいつもの爽やかな笑みは微塵も無く、唖然と言った顔。

そんな彼が見ているのは俺の方、詳しく言えば、俺とあの男の傍に倒れているの死を見ているようだった。

そりゃあ同郷も者が目の前で無殘に殺されていたら困するし、その近くに昨日泊めた男がいたことで、更なる混が彼を襲っている事だろう。

「それは……君がやったのか?」

恐る恐ると言った口調だ。

もちろん答えは否、見方によればしばかり関與しているかもしれないが、そこに意思はなく俺はただ偶然居合わせた人に過ぎない。

「いや、それはオレがやった」

そう口にしたのはあの男だった。

この男の事だから、俺を巻き込まないために自白した、なんていう理由ではないだろう。ただ自分の手柄を橫取りされたくなかったか、それとも自分に注目を集めたかったからか、はたまた別の事があるのか。

「お前が……やったのか」

初めて聞くアルトの暗い

それは怒りか、悲しみか、表だけでは分からない。ただそれは決して明るいものではなかった。

男とアルトがにらみ合う。

俺はそれを端から見ていた。

正直、アルトには恩をじているし、それが悪意に満ちたものだったとしても、助かったのは確か。こちらに実害がないのであればわざわざその恩を仇で返そうとも思わない。

「ああ、オレがやった」

「何のために?」

震える聲でそう男に尋ねるアルト。

「何でだと? そんなものオレの勝手ではないか」

「お前の都合で彼は殺されたって言うのか?」

「人殺しとは大抵そういったことで起こるものだ」

「ふざけるな!」

相も変わらず男の言い分は筋が通っていて、かつ相手を苛立たせる言いだった。

アルトは聲を荒らげるほど憤っている。

「オレは何一つふざけていないのだがな」

「いい加減にしろ」

今にもアルトは飛び掛りそうな勢いだった。

だが武らしい武は彼のどこにもない。

それは魔を狩りに行った者とは思えない裝いであることは間違いない。現に彼の後ろにいる男たちの手にはちゃんと鍬や鎌などの農から剣や槍などの武が見當たる。

もしかするとアルトはお坊ちゃんだから指示係だったのかもしれない。

だが他人が苦労しているのに自分だけ何もしないで見ているような男には見えない。

そこだけが気になったのだが、

次の瞬間、その答えが男の口によって告げられた。

「オレは何一つふざけていないぞ、勇者よ」

「僕が勇者だと知っての狼藉か」

待て、勇者だと?

あいつが?

あのアルトが?

「勇者、だと?」

聲を出さずにはいられなかった。

だって勇者という名は、あいつらに與えられた稱號なのだから。

「知らなかったのか」

男が一言そう言った。

知るわけがない。

「どういうことだよ」

そう尋ねるも、

「勇者を知らぬのか?」

と驚かれる。

勇者自を知らないわけじゃない、むしろ勇者についてはよく知っている。

「勇者は異世界人だけじゃないのかよ」

俺はその事実を口にする。

この際、この事実を知っているのが王國関係者だけだったとしても構わなかった。

事実を知りたい、ただそれだけだった。

「答えてやろう、といいたい所だが……」

しかし男はそれ以上言う前に、目の前の青年、アルトに目を向けた。

あの男が目の前の青年に警戒していた。

今まで余裕たっぷりだったあの男がだ。

ということはつまり、あの青年、アルトはこの男にとって警戒するに値する人間なのだ。

當たり前だが俺を前にしたときなんて、比じゃない程、この男は集中していた。

だがそんなこと関係ない。

俺は今、答えが知りたくてイライラしていた。

今なら、無謀だがこの男に襲い掛かってでも答えを聞き出そうとしかねないほどだ。

そんな俺に聲をかけてくるものがいた。

「コウスケ君、君は何も関係がないんだよね?」

冷めた口調。

あの溫かい口調の青年は見る影も無かった。

「あ、ああ」

あまりの豹変振りに戸っているわけではない。

この青年が勇者なのかという戸いが尾を引いているだけだ。

誰でもいいから答えをくれ。

そこにあの男が余計な口を挾んだ。

「関係があるかもしれんぞ?」

「なに?」

ギロリと鋭い視線でアルトが男と俺を睨みつける。

俺は何も言えない。

関係はあるような、ないような、といった曖昧なじなのだから。

対して男の方は、

「そろそろ手合わせ願おうか、勇者様」

全く空気を読まない発言を繰り出した。

その模様に、驚きを通り越して、あきれ返ってしまう。

今は自分のことだけで、手一杯だというのにこの男のせいでペースがされる。

勇者について聞きたいが、今は一即発の自。それも俺が到底葉わないような次元の戦いが繰り広げられようとしている。加えて、男の発言によって俺も巻き込まれようとしている。

もうめちゃくちゃだった。

「お前……!」

「お前……」

俺とアルトの言葉が重なる。

前者の押し殺したような聲がアルトで、後者の呆れかえっているのが俺だ。

「ふ、何ならその者ら皆でかかってきても良いが?」

「調子に乗るなよ」

そろそろ覚で分かっていた。

戦いが始まると。

そうじた直後、

「――はぁ!」

とてつもない音の金屬音が目の前で響き渡った。

何も見えなかった。

しかしいつの間にか目の前でこうして繰り広げられている。

まるで音が遅れて聞こえた覚。

それほどまでに目の前の景は速いという次元を超えていた。

そう、俺の目の前では戦いが始まっていた。

目の前でアルトとあの男が鍔競りあっているのだから。

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