《魔法兵にされたので學園にります ~俺は最強の魔兵~》第9話 始まった學園生活
俺がサブリナ魔法學園にやってきた翌日。
教卓と黒板を半円の中心にするように、曲線を描く長機が並んだサブリナ魔法學園の教室。
機に向かった大勢の生徒の前、俺は黒髪の教師と並んで立っていた。
「はい、もう皆さん知ってるかもしれませんけど、改めて。特待生として編しましたレイ・ヴィーンさんです。皆さん仲良くしてあげてくださいね」
「レイ・ヴィーンです。よろしくお願いします」
先生に紹介された後に頭を下げる。生徒たちは拍手で迎えてくれた。ちなみにセイナは別のクラスなので、ここからは本當に俺単での冒険である。
「じゃあヴィーンさん、空いている好きな席に……」
「はいはい先生! あたしとシルフィ、レイちゃんと友達だから、あたしたちの隣に來てしいです!」
「あら、さすがリーリエさん。じゃヴィーンさん、あそこの席でいいかしら」
「はい、わかりました」
大聲で手を振った黃のツインテールの生徒の右隣の席に俺は座った。彼はリルリーン・リーリエ、セイナの友達で、昨日何度か話したのだ。活発な子らしく、いきなり聲を上げても教室の誰も自然にけれていた。ちなみに彼の後ろで俺に微笑みかけた黃緑でストレートの髪の落ち著いた雰囲気の生徒はシルフィ・ケイオスといってやはりセイナの友人である。
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「リルリーンさん達がいてくれてよかった、セイナもいなくて不安だったんだ」
「リルでいいよ、これからよろしくねレイ!」
「わからないことがあったらなんでも聞いてねえ」
リルリーンとシルフィは優しく俺を迎えれてくれた。サブリナ魔法學園で最初の友達ができて俺はほっと息をつく。
こうして俺の學園生活は始まったのだった。
やがて授業が始まった。
最初の授業はこのクラスの擔任でもあるメリーシャ先生の理魔法の授業。
「……というわけで、そのステアリング鉱は真っ直ぐに魔力を飛ばしても簡単には持ち上がりません。各自工夫して持ち上げてみてください」
生徒たちそれぞれの前に置かれた小石程度の鉱を教鞭で指し、若いメリーシャ先生が指示を出すと、生徒たちはそれぞれ手を向けて念じ始めた。
「んーっ!? あたし、これ得意なんだけど、なっ……!」
隣にいるリルリーンが一杯力を石に魔力を送っているが、石はぴくりともいていなかった。シルフィの方も石をかすのは難しい様子だ。
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俺も石に手を向けてけと命じてみた。正確には『この石をかしてみろ』と魔科學兵のに命じるのだ。すると俺の手から魔力が放たれ、やはり石はかない。だがそのを魔科學兵は分析して教えてくれる。この鉱石は直線の魔力を反する質を持っているので、角度をつけなければかせないようだ。
「んっ……」
俺は意識して魔力を曲げ、斜めから鉱石にアプローチしてみる。すると鉱石はぐんと持ち上がって俺の眼前に浮かび上がったので、思わず笑みがこぼれる。
浮かび上がった俺の石を見ておおっ、とリルリーンが聲を上げ、続いて他の生徒たちからも驚きの聲が上がった。メリーシャ先生もそれに気付いてまあと手を叩く。
「さすが特待生ですね、すばらしいわ。皆さんもがんばって……あら」
ちょうどその時、俺の他にも1人、鉱石を持ち上げた生徒がいた。俺の席からは後姿しか見えなかったが、明のある水の髪をした生徒だった。
そして俺に見せた驚きとは対照的に、彼の功に対する生徒や先生の反応は、「やっぱり」といったじのものだった。
「シルリアさんもお見事です。さ、他の皆さんもお2人に負けないように持ち上げてみてくださいね」
シルリアと呼ばれた生徒は先生に褒められても一切反応することはなく、また周りの生徒もそれが當たり前のように振る舞っていた。俺はなんとなくシルリアの後姿を見つめていた。
別の授業。
魔科學兵のは基本的に萬能だが、それですべての授業がこなせるわけではない。
黒い長髪で右目には眼帯をつけた、俺の試験の相手でもあったドラゴン使いヘルガフ先生の授業。意外にも座學だった。
「……というわけで魔法植と呼ばれる植には種子・胞子以外で繁するものも多い。どうだ特待生、エグリンの樹がどうやって増えるか知っているか」
名指しされた俺にクラスの注目が集まった。先の授業での活躍もあり生徒たちは俺にかなり興味を持っているのだが田舎で牧場をしていただけの俺に魔法植のことなどわかりようもない。隣の2人に助けを求めてみたが、どうやらヘルガフ先生の問いはかなり難易度が高いらしく、2人も首を橫に振った。
「わ、わかりません」
「この程度もわからんのか? 特待生よ、お前は魔力と戦闘技能は高いようだが、知識の方はまだまだと見える! 昨日も言ったが慢心せずに學に勵むのだぞ」
「は、はい」
「ふむ、ではシルリア! 答えてみろ」
ヘルガフ先生は手にした教鞭ならぬ本の鞭を、あのシルリアへと向けた。そしてシルリアはあっさりと答える。
「卵です。エグリンは擬態のため、ドラゴン類のそれに似た卵で次代を殘します」
「その通りだ! 他にも魔法植の中には奇妙な生態を持つものは多く……」
ヘルガフ先生は當たり前のように授業を続ける。俺は今教えられたことをノートにとりながら、やはりあのシルリアという生徒について考えていた。
お晝休み。
大勢の生徒たちでにぎわう共同の食堂で、妙に子力の高いハーブ定食などをセイナ・リル・シルフィたちと食べている中、俺はシルリアについて聞いてみた。
「ああ、生徒會長のこと? 同じクラスだもんね」
「生徒會長なのか、あの人。たしかにそんなじだ」
「うん、シルリア・シルヴェスター、トパーズ寮の人だよ。生徒會長としても有能で、績も常に學園総合トップ」
「でもちょっと取っ付きにくいとこがあってねー……あたし何度かってみたんだけど、つっけんどんに斷られちゃった」
「良くも悪くも、真面目な人なのよね。でもレイちゃん、シルリアさんがどうかした?」
「いや、単純に気になっただけ。授業で活躍してたからな」
「おっとレイレイ、早速ライバル発見ですかな? さすが特待生、生徒會長サマに目をつけるとはお目が高い!」
「レイレイって……別にライバルなんて思ってないよ」
「あら、でもあちらはどうなのかしら?」
「え?」
シルフィは聲を落とし、かに遠くを指差す。その先を見てみるとシルリアが俺の方を見ていた。整った顔立ちの彼の青の目は鋭く、俺は一瞬ドキりとする。だが彼は俺と視線があった直後に目を逸らし、食事の乗ったトレイを手に歩いていった。
「そりゃあ気になるよね、レイは特待生だし、昨日あれだけ活躍したんだもの」
「俺は別にな……」
「まあ一度話してみたら? 案外、秀才同士気が合うしれないわよ」
「どうだろうなあ」
俺はシルフィの言葉には疑問を呈した。不運で(あるいは幸運で)魔科學兵の力を手にれた俺と、純粋に勉強をした優等生のシルリア。どうも相容れそうにはなかった。
食事の後、俺は1人生教室に向かっていた。実は前の授業の時に忘れをしていたことに気付き、セイナたちには先に次の授業に向かうよう言って取りに來たのだ。
1人で廊下を歩いていると、すれ違ったり教室の中から覗いたりする生徒が俺に注目しているのがよくわかる。特待生が気になるのだろう。たくさんの子に熱いまなざしを浮けるのはまんざらでもない俺だが、事が事なので罪悪もあったりなかったり。
そんな俺に視線を浴びせ続ける生徒たちだったが、校舎の隅にある生教室に向かうにつれだんだんと人影はなくなっていき、生教室に著くころにはまったく聲も気配もなくなっていた。俺は安心して生教室の木戸を開き中にろうとする。
「……ん?」
だがその時。俺の勘か兵の機能か、妙な気配をじとった俺は、戸を開ける前にそこに耳を押し付けた。そして魔科學兵の卓越した聴覚で中の音を盜み聞きする。靜まり返った校舎の外れ、この時間誰もいないはずの教室から、複數の生徒の話し聲がした。
『何度も言っているでしょう。あなたたちには協力しないと』
ひとつはシルリアの聲だ。冷たく、何かを拒否している。そして殘りは。
『おーやおや、あいかわらず冷たいにゃあ』
『でもその態度がいつまで続くかニャア?』
學園の闇――前に俺を闇討ちした貓姉妹、メアとミアの聲だった。
俺はバレないよう息を殺しながら、ガラス戸から中の様子を伺う。どうもシルリアにとって、よからぬことが起こっているようだった。
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