《魔法兵にされたので學園にります ~俺は最強の魔兵~》第13話 ガーベラという
俺がサブリナ魔法學園に來てから數日が経った。
授業にもなんとか慣れてきて、苦手な知識問題も生徒會長ことシルリアに教えてもらい克服しつつある。魔科學兵のは脳も優秀なのか記憶力がいいのだ。
結局あの夜からオニキス寮とは絡んでいない。メアミアの姉妹と會ってもあっちの方からばつが悪そうに去っていき、學園長も平時では俺に微笑みかけるだけだ。俺もオニキス寮にる気はないので、なんだかんだ平穏に學園生活は過ぎていった。
事件が起きたのはある夜。アクアマリン寮大浴場での浴を終え、場でのことだ。
セイナ、シルフィたちと話しながら俺は自分の著替えをれてあった棚を見て、俺は固まった。
「なんだ……これ」
どうしたの? とセイナたちも俺の棚を覗き込み、うわっと顔をしかめる。
畳んであった俺の著替えには、黃緑の粘ったがべったりとかけられていたのだ。しかもはが何年も放置され腐りに腐りきったような強烈な臭いを発している。俺もセイナも思わず顔を背け、また棚を開けたことによりその臭いが場に充満し、他の生徒も異変に気付き始めた。
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「こ、この臭い……プラネヅの実の果だよ! 味しいんだけど、熱するとものすごい臭いを出す果……おえっ」
「ひ、ひどいわ、レイちゃんがお風呂にいる間にかけたのね……いったい誰がこんなこと……」
「うっ……それにしてもひどい臭いだ」
アクアマリン寮の他の生徒も集まってきて俺の棚を覗き込んではうわあ、ひどい、あちゃーと顔をしかめてから、あまりの臭いに遠ざかっていく。魔科學兵の俺は嗅覚をシャットアウトしたので間近でも大丈夫だったが、セイナたちには辛すぎたのか彼らも俺から離れていく。
「これは著れないね……ほんとにひどい嫌がらせ」
「この學園にこんなことをする方がいたなんて」
「とりあえず捨ててくる、臭いが酷すぎるからな……」
他の生徒たちの視線もあるので、結局俺はタオル姿のまま臭いにまみれた制服を外に持ち出し、地面に埋める羽目になった。
翌朝。
セイナから仮に制服を借りた俺は、昨日のことをリルリーンに話しながらセイナとシルフィと教室に向かっていた。ちなみにリルリーンは頻繁にアクアマリン寮に忍び込んでいるが、所屬はルビー寮なのだ。
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「風呂の間に制服にプラネヅの臭いう!? なんちゅーインケンな嫌がらせだ」
「ほんとにね。オニキス寮の仕業かもしれないわ」
「いや……実はオニキス寮とは一応、話をつけたんだ。今さらこんなコソコソした真似をするとは思えない」
「じゃあ他に心當たりは……?」
俺は考えてみたが、見當もつかなかった。學園にってオニキス寮及び親しい友人以外で絡みがあったとすれば、セクハラ魔人ビルカか、おまぬけお嬢様サマリーくらいだ。だがどちらも俺への嫌がらせを企てるとは思えない。
だが考えられる可能はあった。
「あるいは俺が特待生だから、なのかもしれない。自分で言うのもあれだが嫉妬だな」
「たしかにレイ、ここ數日目立ってるものね。授業でも活躍して……」
「あとあれだ、生徒會長と仲良くしてるんだってね! ほんと珍しいよ、あの氷のとたった數日で友達になったなんて」
「シルリアは別に普通の子だぞ? ちょっと不用なだけで」
「それでもやっぱりレイちゃんだからよねえ。私たちはどうしても績で會長さんには気後れしちゃって……」
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「彼はそんなこと気にするほど狹量じゃないって、今度話してみるといいよ」
そうしてなんだかんだ嫌がらせのことは忘れて談笑しつつ廊下を歩いていると。
廊下の途中、掲示板の前で生徒が集まっていた。
「あれ、なんだろう?」
「みんな何かを見てるみたいだけど……」
生徒たちは掲示板に張られたものに寄ってたかって注目しているようだった。俺らも見てみようとそちらに近づいていくと、數人が俺らに気付いたかと思えば、掲示板の前の生徒たちはこぞって俺に視線を向けた。
「ど、どうしたんだみんな? 俺がどうかしたか」
俺が聞くと、生徒たちは「どうもこうもないって」「見てこれ」「ヤバいよ」と口々にわめきたてる。怪訝に思いながらも道を開けてくれた生徒たちの間を通り俺らは掲示板に張られているものを見て――絶句した。
そこには、薄暗いよくわからない場所で俺とヘルガフ先生が握手している寫真と共に、荒い文字ででかでかと『特待生と試験教諭は癒著!』『試験は八百長!』『裏口學を許すな!』と書かれていたのだ。
「な、なにこれ」
「なんだよこの寫真!」
「レイが裏口なんて……そんなことあるわけないのに!」
皆も驚きを隠せない様子だった。俺も寢耳に水だ、ヘルガフ先生と握手している寫真にもまったく覚えがない。裏口學などもってのほかだ。
幸いにも掲示板を見ていた生徒たちは俺に対し好意的だった。
「私たち特待生さんの強さ知ってるよ、授業で見たし」
「ルビー寮長さんも言ってたよ! マジボールも才能あるって」
「だいたいあのヘルガフ先生が裏口學なんて許すわけないし……」
「これ、昨日のお風呂場のことと絶対関係あるよね!」
そこにいたアクアマリン寮の生徒が口にすると、何それ、聞かせてと生徒たちが盛り上がり、昨日の出來事も知り渡る。その間にリルリーンが掲示板の寫真を引きはがし、ビリビリに破いていた。
だがそれで終わる話ではない。
「レイ……これって」
「ああ、間違いない。この學園に、俺のことを快く思わない人間がいるんだ」
怖れていたことではあった、多くの人間が集まる學校、中には悪な者もいるだろうし、その悪意が俺に向けられることもある。ついにそれに直面したというじだ。
「とりあえず先生に相談しよう。ヘルガフ先生も巻き込まれてるしな」
「そうだね、行こう」
ひとまずその場はそれで収め、俺たちは職員室へと向かっていった。
だが結局先生たちの協力を持ってしても、そう簡単には犯人は捕まらなかった。
放課後。
金持ち専用の寮、ダイヤモンド寮に1人の生徒が帰ってきた。赤いツインテールをカールさせた髪型で、おしとやかに鞄を提げた生徒だ。
ちょうど寮のロビー(高価なソファセットや紅茶の類、ピアノなどが揃えられた歓談の場)にいたユニコ・サマリーとその一派が彼に気付いて聲をかける。
「あらガーベラ様、ご機嫌うるわしゅう」
『うるわしゅう、です!』
「ええ、サマリーさんも、そのお友達の方も、お変わりないようで」
サマリーやその取り巻きたちに丁寧に會釈をしガーベラはにこりと微笑む。まさにお嬢様といった清廉な仕草だ。
「そういえば聞きました? あのレイ・ヴィーンのこと! なんでも裏口學だったそうですわね、せっかくわたくしのよき好敵手になると思いましたのに殘念ですわ」
サマリーは憤然と言う。ガーベラは困しつつも微笑んだ。
「私はまだ噂話程度にしか聞いてませんが……もし本當ならば、悲しいことですね」
「まったくですわ! あ、それと、お部屋でお友達がお待ちでしてよ」
「ええ、ではごきげんよう」
『ごきげんよう、です!』
ガーベラはもう一度會釈をするとしずしずと寮を歩いていく。
――その後姿を、サマリーたちはじいっと見つめていた。
ガーベラは寮の自室にる。生徒1人分に対しやたら豪勢な部屋では2人の生徒が彼を待ち構えていた。
ガーベラは部屋のドアを閉め鍵をかけると、両手で持っていた鞄を無造作にそのの1人に投げ捨てた。
「マーサ、肩が凝ったわ。アロマテラピーと紅茶、さっさと準備しなさい」
「はいっ」
ガーベラはもう片方にはき捨てるように命令すると、自は部屋にある1人掛けのソファにどさっと腰を下ろした。ぴかぴかに彩られたソファから足を投げ出すと、すぐさま鞄をけ取りしまっていた生徒が足置きをそこに差しれる。
「メラニア、んで」
「はっ」
ガーベラの命令にすぐに足置きをれた生徒が反応し、彼の足を丁寧にマッサージし始めた。
外での態度とは打って変わった暴な。これがガーベラ・ローズマリーの本だった。
「チッ……気にらないわ」
不機嫌そうにガーベラがごちた。
「お嬢様、ずいぶんとお機嫌がよろしくないようですが……やはりあの特待生のことですか」
「決まってるでしょ! あの、目障りったらないわ! あんなのが特待生として騒がれて、私に偉そうな顔をして! 裏口學の噂を流したのに生徒どもも教師どもも特待生びいきなのが癪に障る! ちょっとマーサ、とっとと紅茶! 遅い!」
「すみませんお嬢様、どうぞ」
「ったくどいつもこいつも……」
ガーベラはマーサが差し出した紅茶を一口飲み、なおも不機嫌そうに言い放つ。
「あんな奴、絶っ対に學園から追い出してやるわ。このガーベラを怒らせたのが運の盡きよ、この學園は私の思い通りになるの、ならなくちゃならないの! メラニア、マーサ、次の準備はできてるんでしょうね?」
「もちろんです。次は奴の周囲にいる生徒を中心に制服へのなどの嫌がらせをして、特待生の近くにいるとそういう目に遭うという流れを作ります」
「そしてヘルガフの怒りも特待生に向くように仕向け、奴を確実に孤立させます。オニキス寮の生徒も金次第で利用できるでしょう」
ガーベラの悪意が伝染したかのように、付き従う2人も邪な笑みを見せる。ガーベラはレイが陥れるさまを想像したのか満足そうに笑った。
「いざって時はお父様に頼んで社會的に抹殺してやるわ。セントールといいあいつといい、あんな田舎者が私と同じ學園にいるのが間違いなのよ」
上機嫌になったガーベラに取りるように、紅茶を持ったマーサがさらに言う。
「それとお嬢様、特待生はどうやらあのシルリアと親しくしているようですよ。特待生が孤立すれば、それと親しかったシルリアも……という風に利用できるのでは?」
その進言にガーベラはさらに上機嫌になった。
「いいわね。あのが生徒たちから見放されて捨てられる、ゾクゾクしちゃう。どんな手を使ってでも裏口學の仲間に仕立てあげてやるわ……!」
ガーベラ、そしてその従者たちは悪意に誇り笑っていた。
その時。
「お呼びかしら、ガーベラさん」
ガーベラの部屋の戸が開き、なんとシルリアが現れた。
「げっ、シ、シルリア!?」
仰天したガーベラは慌てて紅茶を置き、ませていた足を引いて丁寧に座りなおすと取り繕った笑顔を浮かべた。
「……さん。ど、どうしたのです、いきなり。鍵をどうやって開けたのですか?」
「さあ、かけ忘れてたんじゃないですか。それよりもガーベラさん。あなた、しばらく大人しくしていたと思ったら、ずいぶんと悪いことしましたね」
「え? な、なんのことでしょうか……?」
氷の生徒會長と揶揄されるシルリア・シルヴェスター。彼は冷たい瞳でガーベラをじっと見據えていて、ガーベラの作り笑いに冷や汗が浮かぶ。
「特待生であるレイさんを妬み、陥れようとするとは……あなたも落ちるところまで落ちましたね」
「シルリアさん、先程から何をおっしゃっているのですか? 私、なにがなにやらまったく……」
「拠は3つあります」
ガーベラの言葉など聞かないというように、シルリアは強く鋭く言葉を放つ。ガーベラは笑顔の裏で震えていた。
「1つ……ヘルガフ先生とレイさんが會をしているような偽造寫真。寫真などという高価なものを工作のためだけに用いれるのは、ダイヤモンド寮の生徒くらいです」
「い、言いがかりはよしてください。私は別に……」
「2つ目。生徒會長選挙のときはずいぶんと妨害してくれましたね。あなたの本、私が知らないとでも?」
シルリアはひたすらに冷たい視線で言い放つ。ガーベラは何も言えず、笑顔で震えていた。
そしてシルリアが最期のダメ押しをくらわせる。
「3つ目……掲示板に、僅かですが魔力の痕跡がありました。私は魔力の痕跡を解析し、その主の特定ができるのです。たしかにじましたよ、ここにいる、あなたの取り巻きの方の魔力を……ね。これが決定的だったわ」
シルリアがそう言った瞬間。
ガーベラはキッとマーサを睨みつけた。
「マーサ! みなさい、あんたのせいでバレたじゃない! どうしてくれんのよっ!」
「も、申し訳ありませんお嬢様! こ、痕跡は完璧に消したつもりでしたが、まさか魔力を探るなんて方法が……」
「このバカが、言い訳なんてしてんじゃあないわよッ! あんたのせいで私が……」
そんなガーベラを見て、シルリアがくすりと笑った。
「その人を責めるのはやめてくださいガーベラさん。馬鹿はあなたの方なのですから」
「なんですって? どういうことよ!」
シルリアは笑いながら、冷たい目でガーベラを見ていた。
「魔力を解析できるというのは噓です。あなたが犯人という目星はついてましたから、カマをかけたんです。そしたら見事なまでにあなた自らがボロを出したから……馬鹿、と言ったんです」
「あっ……」
ガーベラは己の失策に気付いて絶句する。
直後、ガーベラは逆上した。
「だからなんなのよ。だからどうしたってのよ! 私はガーベラ・ローズマリーよ、あんたもあのもこの學園から消し去ってやるわ! まずはあたしから生徒會長の座を奪ったシルリア! あんたから潰してやる!」
我を忘れ怒號を吐きかけるガーベラ。シルリアも真っ向からそれに対峙した。
「むところですよガーベラ。卑怯な策謀をもって私の友人を陥れようとしたこと……けして、許しません!」
シルリアの周囲に魔力が渦巻く。ガーベラもまた魔力を昂らせ、そのツインテールがぶわりと浮き上がった。取り巻きの2人もシルリアと対峙する。
ダイヤモンド寮の一室で、両者は激突した。
[書籍化]最低ランクの冒険者、勇者少女を育てる 〜俺って數合わせのおっさんじゃなかったか?〜【舊題】おい勇者、さっさと俺を解雇しろ!
ホビージャパン様より書籍化することになりました。 書籍化作業にあたりタイトルを変更することになりました。 3月1日にhj文庫より発売されます。 —————— 「俺は冒険者なんてさっさと辭めたいんだ。最初の約束どおり、俺は辭めるぞ」 「そんなこと言わないでください。後少し……後少しだけで良いですから、お願いします! 私たちを捨てないでください!」 「人聞きの悪いこと言ってんじゃねえよ! 俺は辭めるからな!」 「……でも実際のところ、チームリーダーの許可がないと抜けられませんよね? 絶対に許可なんてしませんから」 「くそっ! さっさと俺を解雇しろ! このクソ勇者!」 今より少し先の未來。エネルギー資源の枯渇をどうにかしようとある実験をしていた國があった。 だがその実験は失敗し、だがある意味では成功した。當初の目的どおり新たなエネルギーを見つけることに成功したのだ──望んだ形ではなかったが。 実験の失敗の結果、地球は異世界と繋がった。 異世界と繋がったことで魔力というエネルギーと出會うことができたが、代わりにその異世界と繋がった場所からモンスターと呼ばれる化け物達が地球側へと侵攻し始めた。 それを食い止めるべく魔力を扱う才に目覚めた冒険者。主人公はそんな冒険者の一人であるが、冒険者の中でも最低位の才能しかないと判斷された者の一人だった。 そんな主人公が、冒険者を育てるための學校に通う少女達と同じチームを組むこととなり、嫌々ながらも協力していく。そんな物語。
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