《魔法兵にされたので學園にります ~俺は最強の魔兵~》第18話 編生は2人組

俺とミニッツの決闘があった翌日、奇しくも同じ大ホールにて。

その日は珍しく全校朝會があり、朝から全校生徒が大ホールに集まり並んでいた。朝會とはいえ自由がモットーのサブリナ魔法學園、寮別に列を作る程度の気楽なものである。パマディーテ教頭だけは厳しい目を學生たちに送っていたが大半の生徒は小聲で友達と話している。

俺もセイナ・シルフィのアクアマリン寮の2人と共に集まり雑談などしていた。話題はこの朝會が開かれた理由についてだった。

「編生?」

「らしい。シルリアが言っていた、近いに編生が來るかもしれない……って」

「それは久しぶりねえ。レイちゃんは特待生だから、正式な人は今季初めてかしら」

「しかし編で朝會が開かれるもんなのか? 俺の時はなかったんだけど……」

「レイの場合は試験でかなり目立ってたからね、生徒への紹介のために普通はやるんだよ。寮決めもあるし……あっ、來たみたいだよ」

壇上に學園長が姿を現し、騒いでいた生徒たちがし靜かになる。まだ壇上には學園長1人だ。

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「皆さん、おはようございます。実はこの度サブリナ魔法學園に編生が學する次第となりまして、その紹介のために集まっていただきました」

案の定編生らしく、わあっと生徒たちが沸き立った。パマディーテ教頭が騒がないように注意をし、なんとか落ち著いてから終始にこにこしていた學園長が切り出す。

「今回編するのはお2人、お友達同士ということです。事前に筆記試験をけていただき、非常に高い績だったため文句なしの學となりました。仲良くしてあげてくださいね」

2人! 生徒がまたわっと盛り上がり、俺も舌を巻いた。いったいどんな生徒なんだろうと生徒たちの期待が高まっていく。

「ではお2人とも、こちらへ」

學園長が促し、ステージ袖からその2人は現れた。

1人は紫のセミロングを綺麗に切り揃えた。遠目から見てもとわかる整った顔立ちをしていたが表は妙にい。だが張しているわけでもないのかスタスタと自然に歩いていた。

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もう片方は見るからに派手な生徒だった。朝會のステージ上であるにも関わらずサングラスを頭に乗せ、髪はショッキングピンクのツインテール。頬にはハートのフェイスペイント、制服も元が開いている上にスカートも短く改造されている。生徒たちに対して「いぇーい」と言った合に手を振っているが、その奇抜な格好にはさすがの生徒たちもやや引き気味だった。

2人は會長の橫に並び、現れた順に自己紹介をした。

「ミーシャ・エフスカヤです。アクアマリン寮に所屬することになりました。よろしくお願いいたします」

淡々と、靜かに言葉を連ね頭を下げるミーシャはシルリアを越えるクールっぷりだ。生徒たちからは拍手が上がった。

「はーい、私、オーリィ・ガルゾニスでーす! トパーズ寮になりましたんでー、これからヨロヨロ~っ♪」

見た目通りのハイテンションな挨拶だったが、トパーズ寮という點に生徒たちがざわめいた。トパーズ寮は知の寮、頭脳に長ける生徒たちがる寮であり、派手な容姿のオーリィのイメージとはまるで正反対だ。だが思えばこの2人は筆記試験で優秀な績を収めたと學園長が言っていた。人は見た目によらない、ということなのかもしれない。

とその時。ふいに、壇上のミーシャと俺の目が合った。なんだか間が悪く、俺はすぐに目を逸らす。だがなぜかミーシャはその後しばらく俺のことをじっと見つめていた。

「皆さん。エフスカヤさん、ガルゾニスさんとも、よろしくお願いいたしますね。ではお2人とも、ありがとうございました」

「はい、ありがとうございました」

「サンキューでぇ~す」

正反対なミーシャとオーリィの2人は壇上を去った。

それから朝會は學園長の話や各種連絡などを行いつつがなく終了した。だがその間、俺はなぜかミーシャの視線が引っかかっていたのだった。

ミーシャは偶然にも俺と同じクラスだった。

その日の晝休み、ミーシャはクラスの生徒たちに囲まれていた。

「ねえねえミーシャさんはどこの出なの?」

「編試験ってどんなじだった?」

「クラブ活はいる気はある?」

「ミーちゃんって呼んでもいい?」

教室の後ろになったミーシャの席に詰めかける子たち。編生ということもそうだが、何よりミーシャのそのそのものの容姿、また無機質なその言子からすると「お人形さんみたい」と高評価らしかった。

ただ子たちの隙間から見えるミーシャはちやほやされても喜ぶことはなく、かといって疎ましがるわけでもなく、やはり淡々とけ流していた。

「レイちゃんも、編生さんに興味あるのかしら?」

ミーシャを見ていたらシルフィが聞いてきた。まあな、と頷く。

「獨特な子だからな、みんな興味もってる。リルなんてもう食いつかんばかりだ」

「リルちゃんは友達作りが大好きだからねえ。ミーシャちゃんも無口でどうなることかと思ったけど、あの人気っぷりならすぐに馴染めるでしょうね。ノノちゃんもアクアマリン寮で歓迎會の準備してるって」

「お、そうか。じゃあ俺らも授業が終わったら手伝いに……」

とその時、俺はとんとんと肩を叩かれた。振り返るとそこに置かれていた指が頬にぶにゅっと刺さる。悪戯っぽく笑うリルを俺は不満顔で睨んだ。

「なんだリル、編生より俺への悪戯が好きか?」

「レイレイ的にはそっちの方が嬉しいのかな? ヤいちゃって~うりうり」

「バカ。で、どうした」

「なんかね、ミーちゃんがこのクラスに特待生がいるって聞いたけど誰なのか、って。いい機會だし挨拶してみたら?」

「んー……そうだな」

リルに言われ、俺は席を立った。思えば俺らの側から編生への態度ばかりを考えていたが、ミーシャからすれば魔法學園の生徒であるこちらを知りたいと思うのが自然だ。ましてや特待生の俺なんか特に目立った生徒である。ただ人形のような彼が他人に興味を持つというのはいささか意外で――いやさすがにその言い分は失禮か、彼だって人間だ。

すでに俺を待ち構えていた子の群に混ざる形で俺はミーシャの機の前に立った。子たちは俺とミーシャのり行きをわくわくして見守っている。

「あなたが、レイ・ヴィーン。特待生」

「ああ」

ミーシャは俺をじっと見つめる。真っ直ぐに、どこかのない冷たい目で。見れば見るほどミーシャはきれいな顔をしていた、目は無表だが大きく、顔のパーツすべてが整然と配置されているようで――別に威圧されてるわけでもないのだがなんとなく無言の圧に耐えられず、俺は思わず目を逸らす。

「改めまして……ミーシャ・エフスカヤです。よろしくお願いします」

「あ、ああ。よろしく」

俺らは軽い挨拶のあと互いに沈黙してしまい、周りの生徒に「えーそれだけ?」「2人とも奧手すぎー」などとはやしたてられてしまった。

その後、俺らは親睦も兼ねてシルフィやシルリアもいミーシャを晝食をとったりした。ミーシャがパン1つだけで済ませたのは驚いた、曰く「消化機能があまり強くない」らしい。

話してみると無口で妙に淡々としていたがミーシャは悪い人間ではなさそうだ。その獨特なペースも慣れれば楽しい。彼が俺に興味を持ってくれていることもあり、また友達が増えたこと、俺はひとまず純粋に喜んだのだった。

一方その頃、學園長室では。

「それでは學園長、先にお晝を失禮いたしますね」

「ええ、ごゆっくり」

學園長にいつも付き従っているパマディーテ教頭が部屋を出て行った。ふう、とラルプリム學園長は息をつく。

「教頭先生、真面目なのはいいけど、ちょっと肩がこるのよね……」

まあ本當にこっているわけじゃないんだけど。學園長は書類の整理をしていた手をいったん休めると、ふと思い立ち、引き出しから別の書類を取り出した。

それは編手続きの書類。數日前に理した生徒の素が書かれている、いわば履歴書のような書類だ。今日正式に編した2人の顔寫真もそこに添えられていた。

「ミーシャ・エフスカヤに……オーリィ・ガルゾニス……か」

サブリナ魔法學園は基本的に來るものは拒まない。相応の実力を持っていればどんな素でもれる――それは封印を守るために優秀な魔法使いが必要という理由もあってのことだ。今回の件でもミーシャとオーリィはれたが、実は2人の素にはわずかに不審な點があるのだ。また學園長自2人からは妙なものをじ取っていた。

そしてその時。ノックもなく、學園長室の戸が開かれた。

「やっほほほーっ、學園長せんせー」

噂をすればなんとやら、軽い挨拶をしながらずかずかと部屋にってきたのは當のオーリィ・ガルゾニスだった。オーリィは戸を閉めるとまったく悪びれもせずに學園長へと歩み寄ってくる。

學園長に笑みはなかった。無禮な態度に怒ったのではない。

「ガルゾニスさん……なんのご用でしょうか?」

「べっつにー? ただ、ちょっとせんせーに聞きたいことがあってね。オニキス寮のこと」

くるくるダンスのようなきをしつつオーリィは學園長の機にもたれかかった。ハートのマークが刻まれた頬はにやにや笑いで歪んでいるが、瞳は笑っていなかった。

「オニキス寮……もうそこまで……いえ、最初から知っていたのですね」

「ん? あ、このほっぺの気になる? これシールなんだー、だから気にらなかったらぺりぺりーって」

學園長を翻弄するかのようにオーリィは関係ない頬のハートを剝がした。そしてそれを無意味に逆の頬に張り直し、また笑って學園長を見る。學園長は怒りは見せないが、ただただ警戒を強めていた。

「ね。封印、あとどれくらいで破れそう?」

オーリィは笑いながら言い放った。學園長は確信した。この生徒、パマディーテ教頭がいなくなったタイミングまで完璧に見計らい――接近してきたのだ。

學園長は立ち上がった。並の生徒ならすくみ上るような魔力をにたぎらせてみたが、オーリィはだらーっと機にもたれたまま笑っていた。

「……薄々、じていたのですが」

學園長とオーリィの視線が錯する。そしてラルプリム學園長は言った。

「『あなた達』、魔科學兵ですね?」

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