《魔法兵にされたので學園にります ~俺は最強の魔兵~》第19話 ミーシャと友達

「あなた達……魔科學兵ですね?」

サブリナ魔法學園學園長室。謎の編生オーリィと対峙した學園長はそう言い切った。

「へえ、やっぱ學園長クラスのヒトにはわかっちゃうんだ? すっごーい!」

それを聞き、ツインテールで出度の高い改造制服を來た派手な生徒オーリィはケラケラと笑う。學園長は鋭く靜かにそれを睨んでいた。

「フ、フ、フ! それとも『逆』かな? すごいから學園長になった……いや、なれた? フフッ」

「何が言いたいのです」

「べっつにー。ただ、手段と目的は大事だよねって話! ねえそれよりさ、『あなた達』ってどこまでのこと言っているの? あたしとミーシャ? それとも他の生徒? それともぉ……?」

「想像にお任せします」

學園長は立ち上がった。麗な顔は凜々しく引き締まり、魔力は臨戦態勢として渦巻き始める。オーリィはそれでもニヤニヤ笑っていた。

「『彼』は……善良な存在です。観察し、揺さぶりをかけてもみましたが、本當に何も知らなかった。故郷という村を調査しその存在も確認しました……改造され、容姿は変わっていたようですがね」

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「とーぜんでしょ! レイはいい子だよ、アタシと違ってね!」

その時だった。

ふいに、オーリィのが浮き上がる。瞬間、その四肢がピンとび、彼の全を大きな立方が包み込んだ。立方は、學園長の魔力からできている。さすがにオーリィの顔も歪んだ。

「あ、あれ? 學園長サン、生徒にこんなことしていいのかなあ……?」

オーリィは腕をかそうとするがぴくりともかない。彼を包む立方、それは枷の異空間。學園長の魔法だった。

「私は學園長であると同時に……使命を負う1人の魔師。穢れ、墮ちることなど怖れません。學園の皆にはバレなければよいのですからね……」

學園長はそう言ってくすりと笑った。

「さ、特別に招待してあげましょう。私の空間魔法……その真髄、『異空間』へ。そこでは誰にも見られず、また悲鳴も魔力もどこにも屆きません。授業ではやらない『魔法拷問』、ご教授いたしましょう」

「てーねーな口調が逆にコワイってヤツ? でもちょっとやすっぽいよねソレ~」

「まずはあなたの余裕を剝ぐ。次に本を切り出す。最後に全てをえぐり取る……さ、參りましょうか」

ゆらり、と學園長は拘束されたオーリィに対し手を差し出す。異質な魔力がそこから溢れだし――両者の姿は、學園長室から消えた。

晝食を終え、俺らがミーシャをえて廊下を歩いていた時。

ふいにミーシャは足を止めた。

「ん? ミーシャ?」

「ミーちゃんどうしたの?」

ミーシャは黙ったまま上を見ていた。その表はやっぱり無表で何も読み取れない。

「いえ、なんでもありません。行きましょう」

「あ、ああ」

すぐにまたスタスタと歩き出すミーシャ。クールすぎる彼はある意味究極のマイペースでついていけない時もある。

「レイ。食堂は毎日使えるのですか。休日はどうですか」

「ああ、休日は普段より時間は短いがOKだよ。ていうか大抵の生徒は毎日使ってるしな」

「わかりました。ありがとうございます。レイ、次の時間は生ですが、どこでやるのですか」

「今日は生教室。ヘルガフ先生の授業だ」

「わかりました。ありがとうございます」

歩きながらミーシャと話すが、彼は不思議と俺とばかり話していた。皆と等しく初対面のはずだが俺だけが不思議に懐かれてしまったらしく、セイナやリルたちもミーシャの教育係は俺ということにして見守っている。もっともミーシャの獨特なリズムに慣れると容姿もあって小のようなかわいらしさがあり、俺もなんら苦痛ではなかった。

「でもミーシャ、なんでお前そんなに無口なんだ? 友達のオーリィはかなり喋る方だったのに」

俺は思い切って聞いてみる。するとミーシャはしだけ顔をうつむきがちにした。

「……そう、育ったから、でしょうか。まだよくわからないのです、自分のことも、他人のことも……」

ミーシャは的には語らなかったが、何かワケありということはその雰囲気で俺らに伝わった。余計なことを聞いてしまった、と俺は思わず口を抑える。

だがすぐにミーシャはまた元の様子で言った。

「私は親から、學校とは勉強のみを教わる場ではないと聞きました。多くの人間と接し、そこから學ぶ場であるそうですね。これからの皆さんとの生活の中で、私も変わっていくと思います。どうか皆さん、よろしくお願いします」

ミーシャは改めてといった合に頭を下げた。本當にいい子だな、と俺らはミーシャの素直さに軽くしてしまう。

「ああ、俺らこそよろしく」

々教えてあげるねー!」

「勉強以外のことなら、なんとかなるかしら」

「ミーちゃんも私たちに教えてね」

「え? 私が、ですか?」

「うん」

セイナは一歩進み出て、ミーシャの手を取った。

「友達ってそういうものでしょ? どっちか片方だけの一方通行じゃなくて、お互いに教えたり助けたり。ねっ」

「友達……ですか」

「うん!」

ミーシャはしばらくセイナを見つめていた。表はほとんど変わらなかったが――困しつつも、嫌がっているじではなかった。

「とりあえず今日の歓迎會、楽しみにね! アクアマリン寮の皆が待ってるよ」

「歓迎會……初めてです。ありがとうございます」

どうやらミーシャ、かなり閉鎖的な環境で育ってきたようだ。案外どこかの箱りお嬢様だったりするのかもしれない――その時はそう思い、ただ普通に友人としてれていた。

俺が彼についての真実を知ったのは、もうし後のことだった。

一方その頃のオニキス寮――封印の巨石。

鎖が何重にも巻かれたその石にれ、何かを確かめるように観察していたのは、なんとオーリィだった。

「どうかニャ? すっごいでしょ、これ」

そのオーリィを後ろから見守るのはミア・グリズリーと數のオニキス寮生徒。

隠し扉からのみ行ける學園の地下にあるオニキス寮。オーリィは実はミアに案してもらうことでここまで辿り著いたのだった。ミアを、効果的に騙すことによって。

「でも驚いたニャ、まさか『先生』の正を編生が知ってるなんて……先生も人が悪いニャー、最初からオニキス寮にる予定なら前から言ってくれればいいのに」

「サプラァーイズだよ! そっちの方がいいもんね……」

オニキス寮の『先生』が學園長であるというをオーリィは知っていた。オーリィはそれをミアに明かすことで、味方だと信じ込ませてしまったのだ。

オーリィは封印の石をよく観察する。オニキス寮生からすれば、初めて見る封印に驚いているように見えただろう。

「うん……うん。よし、そろそろいいかな」

その封印をしっかりと記録し分析したオーリィは、笑った。

それと同刻。

學園を囲う森を注意深く観察した者ならば、異様な景を目にしたことだろう。

森の中、かに蠢く同じ顔を無數の人間――その日に編したはずのオーリィ・ガルゾニスが何人もいる景を。

そしてさらに學園の屋上にも1人、オーリィが立っていた。彼は天を仰ぐ。その日、學園上空には暗雲が広がっていた

「さあて、ちと天気はよろしくないが、ひとつ始めようか! 実験! そして遊戯を!」

オーリィは笑う。その瞳の奧に宿すを持って――魔兵No.2は、笑っていた。

俺らが廊下を歩いていると、ミーシャはまた足を止めた。

「……始めるのですね」

ミーシャは何かを呟いたが、俺らにはよく聞こえなかった。何を言ったのか、彼に聞こうとした時。

學園は、襲撃をけた。

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