《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》アヴァリス~強者がした~
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 【強】 【強者の矜持】 自分のの支配権を取られない。大切な者を守るとき、全能力上昇。殺した者から得る経験値が二倍。
【強の腕】 敵対者を逃がさない。逃げようとした者は無數の腕によって引き摺りだされる。腕の強さは使用者の強さと同じ。
【愚かなる強】 一週間先までのエネルギーを持ってくることができる。使用後は使った分だけ寢込んでしまう。
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【強の腕】が何気に兇悪だったりする。クレアシオンと敵対した時點で逃走経路をいくら念りに準備しようとも、後詰めを控えさせていようとも、逃げる、という手段は封じられてしまうからだ。彼と敵対するということは、殺すか死ぬかする以外に彼から逃れる事は出來ない。
しかも、逃げようとした時點で無數の手に捕まり、抵抗すら出來なくなるが……。
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【強の腕】だけが唯一、【強】らしい能力だった。
「……【強の腕】強すぎませんか?」
ソフィアがそう思ったのは當然のことだろう。と言うか、【強の腕】は恐すぎる。無數の腕が何処に逃げようとも追ってくるのだ。一度、邪神が違う世界に逃げ込もうと、転移を使って逃げたことがあった。クレアシオンも違う世界に逃げられたら探すのが難しいので諦めかけたのだが、【強の腕】が発した。
【強の腕】が何かを探るような作をした後、暗い淀んだ渦のようなものが現れ、そこから邪神を引き摺り出してきた。邪神の顔は恐怖に飲まれていたのだからどれ程の恐怖か……。クレアシオン自も若干引いていたが……。実質クレアシオンと敵対したら、どう足掻こうが、何処に逃げようが、神ですら逃げられないのだ。これが【魔王より魔王らしい墮天使】と言われる原因だった。
なお、普段は主に食材採取に使われていた。巨大な魔を【強奪の腕】が摑み、それを【暴食のアギト】で喰らう。その様子は、巨大な口しかない龍のような化けが無數の手を使って獲を食べているみたいに見えて見るものを恐怖させた。
「……否定は出來ないが、敵を逃がして無関係の人が殺されたり、自分の大事な人が殺されるよりましだ」
彼も墮天する前は逃げる者は追ってまでは殺さなかった。あの出來事が起こるまでは――
「ご主人様、【強】のスキルも、普通とは違うのですね。【強】は他者のスキルやステータスを奪い取ったり、他人の者を強奪したりするものじゃないんですか?何ガッツリ守りを固めてるのですか?」
――あれ?さっきから何かトゲあるよね?
と、思ってもクレアシオンは口に出したりしない。実際にその通りだからだ。強は他者の者を奪うスキルだ。だが、クレアシオンの強奪はっこが違う。気が狂うまでの力への渇。守りたかったものを守れなかったことへの絶。彼がんでいたものは、ただ、大切な人達との時間だけ……。守るには奪う以上に力が必要だった。この【強】の能力はクレアシオンの格を濃く寫し出していると言える。
「師匠たちが言ってたんだ。自分で手にいれたスキルじゃないと、に付かないって」
彼の師匠のルイスたちが言っていた。與えられた【力】より、自分で摑みとった【力】の方がいい、と。自分での滲むような修行をして手にいれた方が、咄嗟の判斷ができ、に狀況に適応できる、ほんのしの差が積み重なると大きな差になっていく、戦闘中は特にその差が大きくなる、と。――――流し過ぎてアリアに看病されているクレアシオンのベットの橫で暑く語っていた。……けして言い訳ではない、と力説していたので加減を間違えた訳じゃない、とクレアシオンは考えることにしている。
「それに、こう言われたんだ。スキルは酒みたいななんだよ。自分でへど吐くまでがんばって、スキルを取得して、経験の中でさせる。それが自分という酒になる。他人から奪ったり、與えられた安酒を混ぜるな、せっかくの酒が不味くなる。そんなちゃんぽん飲むくらいなら、俺はアルコールランプを飲む、て――」
そう思い出すように夜空を眺めながら言うクレアシオンの言葉にソフィアは銘をけた。深い、と一見のんべいの言葉の様だが、事の本質を摑んでいる言葉だ、と。酒に例えているのは、誰でも理解出來るように噛み砕いて教えながらも、深みを失っていない。どんな人がその事を言ったのか知りたい。彼はそうおもった。そう、この言葉が出るまでは――
「――呑み屋のおっちゃんが言ってたんだ。アルコールランプ飲みながら……」
ああ、あとこれもいってたな、ユニークスキル見たいな高級酒は適量混ぜろ、旨いカクテルができるって、というクレアシオンの言葉はソフィアには屆かない。彼の中で作り上げられていた仙人のようなイメージが無慘にも音をたてて崩れ去っていた。
ソフィアがプルプルと震えている様子をクレアシオンが不思議そうに見ていると、クワッと彼がクレアシオンの肩をつかんだ。そして――
「ただの酔っぱらいじゃないですか!?」
そう突っ込んだ。先程までの冷靜な様子がない。だが、クレアシオンも黙っていない。大事な飲みともがただの酔っぱらい扱いだ。彼だって怒るときは怒る。
「ただの酔っぱらいじゃねぇよ!!できる酔っぱらいだ!!」
結局酔っぱらいには変わりなかった。だが、
「あいつは、神界で一二を爭う酒造家だ!!」
そう、クレアシオンと出會うまで、昔の失敗を引っ張り続けていたただの酔っぱらいだった。だが、それからは長年飲み続けていた経験と生粋の酒への熱を生かし、今では神界で一二を爭う酒の神になっていた。
長年支えてくれていた奧さん孝行して、夫婦仲良く酒を造っている。世の中、どんな経験も生かすも殺すも自分次第だと、呑んだくれた経験すら生かした『のんべいドリーム』の現者として、のんべいの間で褒め稱えられているすごい人だ。
呑み屋の酔っぱらいに尊敬している人は?と聞くと口を揃えて「バッカス」と言い、聞いてもないのに「俺はただ飲んでんじゃねぇ!!いつか第二のバッカスになるため、酒を研究してんだ!!」と言うぐらい、すごい人だ。
……まぁ、バッカスもただ飲んでいた訳じゃない。本當は酒を造りたかったが、トラウマのせいで造れず、それを誤魔化すために飲んでいただけだ。元々、一生懸命酒造り続けていたせいか、ただ飲んいるだけでも無意識に酒の材料やのさせかた、樽の木種類を考えていたぐらいだ。それぐらい、酒を造るのが好きだったし、それ故にトラウマも大きかった。
クレアシオンに背中を押されてからは、寢る間も惜しんで酒の材料を研究し、水にまでこだわり酒ごとに変え、ぶっ倒れ、起きてまた酒を造り、鬼狐の飲み會でみんなでやいやいと話し合いながら、本當にの滲むような思いで酒を造り上げた酒で神界一二を爭う酒造家になった。つまり、ただの酔っぱらいではいつまでたっても無理だ。
バッカスの酒の八割は、彼のと涙で出來ている、とたとえられるぐらい。時に涙を流し、豆が潰れるほど酒を造り続けた。彼の努力の結晶とも言える酒は鬼狐の魔たちもクレアシオンも好きだが、バッカスとその奧さんが一番の好家だった。
ソフィアはクレアシオンの気迫に押され、結局ただの酔っぱらいだろ!とは言えなかった。
「次行くか」
そう言われ、納得できないものをじながら、ソフィアは鑑定を続けた。
ありがとうございました。
良ければ、バッカスが呑む~化けどもの宴~も読んでみてください。短編です。
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