《職業魔王にジョブチェンジ~それでも俺は天使です~》キャンディ・ポリス裏話〜クレアシオン逮捕??~
ここからはジンの知らない話です。ジンの回想で始まったのにすみません……。
※謝罪とお知らせ。當初の予定より、キャンディ・ポリスが長くなってしまいましたので、本編の続きをキャンディ・ポリスの前に割り込み投稿をしています。一章はこのまま、割り込み投稿を続け、キャンディ・ポリスは一章と二章の幕間としたいと思います。紛らわしくなってしまい本當に申し訳ありません。
割り込み投稿した話は『お伽噺』『おとぎ話と謀論』『偽りの仮面と紅眼の魔王』です。
これからも、『職業魔王にジョブチェンジ』をよろしくお願いします。
クレアシオンは白い空間を歩いていた。世界と世界の間、否、無數にある世界を包容する巨大な空間であり、果てしなくどこまでも、どこまでも白い空間。
宇宙とはし違い、無數の宇宙にある生命が存在する星のみが集められた様な空間だ。生命ある星は宇宙にあり、この白い空間にも同一のものが存在する。
世界と世界の覚は広大で、世界の近くの空間から他の世界を見ようとしても、小さな點にも見えない。この空間で迷うと、一生、どこの世界にもたどり著けない、と言われるほどであり、神でさえも、世界を行き來する場合は特殊な魔法や道を使い、世界の位置を知ったり、転移したりする。
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そこをクレアシオンは早歩きで歩いていた。急いでいるから、と言う理由ではない。ただ、ただ単純にこの空間が怖いのだ。どこまでも続くこの白い空間が、堪らなく、怖いのだ。
彼がアリアの天使をはじめる前、アリアに拾い上げられる前、彼は魂の狀態でここにいた。自分が何者か、どこにいて、何をしていたのか、なぜ、この空間にいるのか、いつから居るのか、すべてが真っ新になるほど途方も無い時間、この空間を漂っていた。
今でも、4000年経った今でも、その恐怖を忘れない。忘れられない。記憶を失う恐怖を、自分が自分じゃなくなる恐怖を。
全て、失ったにも拘らず、その恐怖だけがいつまでも殘っている。
だから、彼はこの白い空間が苦手だった。ここに長く居ると、このどこまでも白く、広い空間に溶けて消えてしまいそうだから――――。
だから、彼は必死に腳をかした。早く、早くこの空間から去るために、
「クレア!!待ちなさい!!」
一刻も早く、この空間からされ、と心が、魂がぶ。
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「待ちなさい、て言ってるでしょ!!」
これ以上、ここに居ると大変なことになる。そんな予が長年、魔族や邪神との最前線で戦い、生き延びてきた直が告げている。
「聞こえてるんでしょ!?」
クレアシオンは走り出した。全力で、【九尾化】まで行使して、全力で走った。
「ちょ、ちょっと!?――――」
聲の主が慌てる聲が遠く後ろに聞こえ、彼は確信した。これで大丈夫だと。
しかし、
「アリアとイザベラに報告しようかな?」
とぼそりと小さく呟かれた。ピコピコと【九尾化】で強化された彼の聴覚がその小さな音を拾う。クレアシオンは空間を蹴り破り、聲の主の後ろに転移した。
「何でしょうか?太神シエル様」
「ひゃう!?」
突然、遙か前方を走っていた人が後ろから話しかけてきたことで、驚き、変な聲を出してしっまていた。ビクッとして、
「……なんで、あの二人の名前で反応するのよ……」
音にならない聲で、口だけをかした。シエルの後ろにいたクレアシオンには口のきは気づかなかった。長距離の小さな呟きを聞き逃さなかったクレアシオンの【九尾化】し、強化された聴覚ですら、音になってない聲は聞き取りようがなっかったようだ。
クレアシオンが演技がかった一禮をしていると、赤と金を梳かした様な長い髪をかきあげ、すっと大きな紅い瞳が細めて、下げられたクレアシオンの頭を見下ろした。
「何してるの?気持ち悪いわよ」
その言葉に、クレアシオンはこめかみをピクピクとさせながら、顔を上げた。
「で、急いでるんだけど、何かようか?」
告げ口を告げられそうになったときとは、大違いだ。手のひら返すように目の前の神に対して、尊大に振舞った。
「はぁ、何か用じゃないわよ」
シエルが飽きられたように言った瞬間、クレアシオンを囲むように天使たちが多數転移してきた。その全てが武裝し、クレアシオンに向け敵意をむき出しにしている。
「……これは、どういうことだ?」
敵意を向けて來る天使たちに向け、クレアシオンが軽く殺気を飛ばすと、それだけで大半の天使は戦意を失い、數人は気を失ってしまった。
「ふん」
仮にも同じ天使がこの程度で、戦意を失うことに対しての失と、呆れから興味なさげに鼻を鳴らすと、
「――貴様!!我々を愚弄するか!?半端の分際で!!」
三対六枚の純白の翼を持つ天使――最上級天使――の一人がが怒鳴り散らした。その言葉に勢いを得たのか、戦意を失わなかった天使たちは、クレアシオンに向け、罵倒を繰り広げた。その様子に、シエルは頭が痛い、とでも言うようにこめかみをグリグリとこすっている。
「で、もう終わりか?お前たちの飼い主の程度が知れるな」
思いつく限りの罵倒を言い終えた天使たちに向け、クレアシオンは更に弾を投下した。罵倒に反応しないクレアシオンに苛立ちを覚えていた天使たちはこの言葉に発した。
「貴様!!」
最初にクレアシオンを半端と蔑んだ天使が片手剣を引き抜き、クレアシオンに飛びかかろうとするが、
「やめなさい、ラジュ!!」
シエルが相を変えて、止めた。
「しかし!!」
呼び止められたラジュは不満をいい、ラジュに続こうとしていた天使たちもなぜ止める、と文句を言っている。【鬼狐】がいない今こそ、悪しき魔王を倒す好機だと。
だが、
「しかしじゃない!!これ以上、私に恥をかかすつもり!?よく見なさい!!」
不満を零す部下を押さえつけるようにシエルはんだ。その言葉に従い、クレアシオンを見て言葉を失った。
「――惜しいな、後一歩踏み込んでいたら殺してた」
鬼の形相とはこのことだろう。見たこともないような形相で、こちらを睨んでいるクレアシオンがそこにいた。先程の殺気が小鳥の囀りに思える程の殺気。気を失っていた者も魂を直接摑まれたような恐怖に飛び起き、直している。
「自分のことは気にしないし、ほとんどホントのことだから否定しないけど、俺だって、怒ることはあるよ、特に――アリアとイザベラのこととか……さ」
「ひっ」
クレアシオンが一歩近づくと、天使たちは一歩下がった。言ってしまったのだ。いくら罵倒をしても反応しないクレアシオンに、二人の謂れもない悪口を――――
天使たちが下がると同時に、辺りに金屬音が連続して響いた。
「こ、これは――ッ!?」
天使たちの聲にもならない驚愕のび。彼らの武や盾が鮮やかな切り口と共にバラバラに切り裂かれていたのだ。クレアシオンが武を手に取るような作も、く様子も、攻撃の終わりすら見えなかった。
何より、手に持っていた武がバラバラに切り裂かれたというのに、手に一切の衝撃がなかったのだ。それにあることに気がつき、顔が白を通り越し、土になっていく。
クレアシオンに飛びかかった天使以外の武も切られていたのだ。惜しいとは、クレアシオンの間合いにもうしでる、と言う意味ではなく、あと一歩でも踏み込んでいたら、ここにいる者全て、敵対行為と見なす、という意味だったのだ。
「はぁ、だから、來る前に言ったでしょ?相手にならないって言ったでしょ。それに、――神に対して何を言ってるのかしら?しかも、私の妹分に」
低い聲でシエルがラジュ達を睨むと、ラジュたちはバツの悪そうに顔を背けた。神に仕える天使が神のことを悪く言うということは殺される覚悟がある、と捉えられてもおかしくない。それも、自分の使える神以外のことを悪く言うということは、主の恥でもある。
「ごめんなさいね、クレア。後で言い聞かせておくから」
シエルはクレアシオンの前に歩み出て、謝罪を申し出た。これには天使たちは揺した。自分たちの主が一介の天使に謝罪したのだ。――――自分たちが犯罪者と決めつけ、殺そうとした天使に向けて、だ。
「な、何をしてるのですか!?なぜ、そんな奴に謝るのですか!?」
「おやめください!!」
「危険です!!離れてください!!」
當然、天使たちは騒ぎ出した。謝る必要はないと、危険だから離れるようにと、だが、シエルは
「何って、あなたたち事を謝っているのよ。早く、クレアに謝りなさい。――命令よ」
クレアシオンに謝るように命令をした。この言葉に天使たちは驚愕した。確かに非は自分たちにある。だが、納得できなっかた。
「こいつは罪人ですよ!?」
「それとアリアを侮辱したことは関係ないわ」
罪人、と言う言葉にクレアシオンは首を傾げるが、どうせ言いがかりだろうと高を括り、ラジュたちが何か言うといつでも殺せるように構えている。
ラジュやクレアシオンを殺そうとした天使たちはシエルの言葉に顔が屈辱に染まる。早く謝りなさい、と言う自分たちの神と睨みを効かせる憎き敵。ラジュたちは歯を食いしばり、握り締めた手から、鮮が滴る。
「も、申し訳、な、なかった」
「済まなかった」
『申し訳ない』
口だけで、本當に謝る気がないのは誰が見ても丸分かりだ。
「ふん」
頭をさげ、屈辱に震える天使たちをクレアシオンはつまらなそうに鼻で笑い飛ばした。天使たちに無くした彼はシエルに向き直った。
「この野郎!!」
「やめろラジュ!!」
「あれだけ舐められて、黙ってられるか!?」
「落ち著け!!後でいくらでも機會はある!!」
その天使の言葉にラジュの顔は醜悪に歪む。そうだ、あいつの言う通りだ、とほとんどの天使が同意し、盛り上がっていた。実力があり、修羅場を経験してきた天使たちは何も言わず、自分を抱きしめるように小さくなり震えていることに気づかずに――――
「ごめんね、クレア」
「いや、気にしていない。……次はないがな」
クレアシオンの言葉に、できれば勘弁してしいんだけどね、と言いながら、クレアシオンに近づいてくる。
「で、何もないなら、行っていいか?急いでいるんだが」
「いいわけないでしょ」
頑なに先を急ごうとするクレアシオンに笑顔で否定し、ガシャンっとシエルはクレアシオンの腕に枷をつけた。
「――どういうつもりだ?」
クレアシオンがシエルに聞くと、
「一緒に來てもらわよ。それ制約の枷は形だけでもいいからつけておいて、みんな安心するから」
と、笑顔でいい、歩き出した。制約の枷――――最上級の神だった悪神に付けるような枷を付けられたクレアシオンを引っ張って、鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌に――――
ありがとうございました。
一章があともうしで終わるはずなのに、中々筆が進まない……。代わりに、閑話が多くなってしまいました……。すみません。
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